天竜厚生会、社会福祉法人特有の複雑な会計処理を効率化し、複数の会計基準に対応
「現在は、社会福祉法人にも一般企業と同様の経営感覚が求められます。そのためには、誰にでもわかりやすい会計報告、複数の特殊な会計基準にも対応できる柔軟な会計システムが必要でした」
社会福祉法人 天竜厚生会
評議員・経営企画室長 池野谷 博信氏
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社会福祉法人 天竜厚生会は、静岡県浜松市を中心とし県内各地で各種施設を運営する公益組織である。
地域に密着した社会福祉法人として60年近い実績をもち、「わたしたちは熱い心・豊かな知識・すぐれた技術で、ひとりを、すべての人をアシストします」をスローガンに、身体障がい者施設、老人施設、診療所、保育所、給食センターなど136もの施設を運営している。
これまで天竜厚生会では自社開発の会計システムを利用してきたが、2000年の介護保険制度の大幅な変更により、社会福祉、公益、授産、病院、訪問看護、老人保健施設、収益事業という事業区分ごとに合計7つの会計単位に対応した帳票を作成し、連結会計処理を行うことが必要となった。また、法人運営の視点から損益計算が導入され、一般企業と同様に利益を上げていくために、経営状況を随時把握できる管理会計の仕組みも必要となった。そこで、複数勘定元帳機能を有し、グローバルスタンダードに準拠したオラクル社のERPパッケージ「JD Edwards EnterpriseOne」の導入を決定した。
導入にあたっては、経理・財務等の業務支援システムやERPによるトータルソリューションの提供に豊富な実績のあるみずほ情報総研が担当、2006年5月より導入を開始し、社会福祉法人会計基準へのデータ変換のソリューションを提供するなど、特殊な会計処理に対応した完成度の高いシステムを構築した。
2007年4月に本番稼動を迎えた新会計システムでは、会計の月次報告だけでなく、月次の固定資産処理や補助金の圧縮処理も自動化し、経理業務の効率化を実現。今後は、既存の人事システムや施設ごとの調達システムとの連携などさらなる自動化と効率化を図るため、購買管理システムをJD Edwards EnterpriseOneに移行する作業が進められている。
制度変更をきっかけに、
「施設管理」から「法人経営」への変革を実行
昨今、社会福祉法人の経営を取り巻く環境はきわめて厳しい。たとえば、高齢者介護事業では、2000年の介護保険制度の施行とその後の改定によって、在宅での自立を支援する訪問介護事業により多くの福祉予算が振り分けられ、グループホームなど施設介護事業の利益率は低下している。また、子育て支援事業では少子化の影響で需要の伸び悩みが懸念されている。
さらに、優秀な人材の確保が難しくなっているのも実状である。経営企画室長の池野谷博信氏は、「今日では法人としてのしっかりした理念がないと、働く人の満足度は上げられません。スタッフが働きがいをもてる職場環境を提供できるかどうかは重要な課題です」と言い、職務イメージやモラルの向上を通じて職員の定着に向けた努力を続けていると話す。

天竜厚生会
財務部 会計課 課長
朝比奈 淳 氏
一方で、財務部 会計課 課長の朝比奈淳氏は社会福祉法人の会計の特長を次のように語る。「社会福祉法人の業務は、行政サービスを補完する委託事業に近い性格をもっています。従来は、100の予算があれば100使い、どのように使ったかを行政に報告すればいいというものでした」
そのため、以前はキャッシュフロー・ベースでどのように予算を使ったかを把握できれば充分だったが、最近では制度変更の影響もあって会計のあり方自体を見直さざるをえなくなったという。
このように社会福祉法人の運営は、従来のような「予算ありきの施設(モノ)管理」から、「総合的に職員(ヒト)・施設(モノ)・資金(カネ)を有効活用する法人経営」へとそのモデル変更を迫られている。社会福祉法人にも一般の企業と同様に「経営感覚」が求められるようになっているのだ。会計制度はその筆頭で、非営利組織といえどもある程度利益を確保し、それを将来の事業に活かすという方向転換が図られている。そこでは行政への報告だけでなく、損益計算書をベースとした経営としてわかりやすい会計処理が必要とされているのだ。
パッケージ選定の決め手は、
複数の勘定元帳機能とグローバルスタンダード準拠
天竜厚生会では、1990年頃からオフコンベースの自社開発の会計システムを利用してきた。これは制度変更前の会計に最適化されており、それなりに使いやすいものだったという。ところが、2000年の制度変更により状況は一変する。社会福祉、公益、授産、病院、訪問看護、老人保健施設、収益事業という施設区分ごとに、合計7つの会計単位に対応し、それらをとりまとめて法人全体の会計も行わなければならなくなったのだ。
また、これまで年度末の一度の処理で決算数字を明らかにし、行政に報告を行えばよかったのだが、一般企業と同様に利益を上げていくには、月次単位で意思決定しなければならない。そのためには管理会計を実現し、現状の数字がどのような状況にあるかを随時把握できる仕組みも必要となった。
当初は既存の会計システムを利用し、対応しきれない部分は人海戦術で乗り切ってきた。しかし、手間がかかり非効率なことから、2003年頃から会計システムの刷新を計画する。
「自分たちに最適化された会計の仕組みがほしかったのですが、経営を考えるとなるべく独自のルールをなくし、 世間で標準的な仕組みを導入すべきだろうと考えるに至りました。そのため、会計のアプリケーションもグローバルスタンダードに対応したものが必要でした」(朝比奈氏)
天竜厚生会は、グローバルスタンダードに準拠したERPパッケージとしてオラクル社の 「JD Edwards EnterpriseOne」を選択。選定のポイントは、自組織の規模感に合致すること、多くの施設の会計処理を民間企業の連結決算と同じ要領で効率的に対処できることであった。施設ごとに異なる会計基準の下では、同じ支出でも会計基準ごとに仕訳が異なるもの も多いが、JD Edwards EnterpriseOneは複数勘定元帳機能により、効率的に管理することが可能であった。
【システム構成図】

複雑かつ特殊な会計処理を自動化することで、
経理業務の大幅な効率化を実現
2006年5月にJD Edwards EnterpriseOneの導入を開始し、2007年4月に新システムの本番稼動を迎えた。みずほ情報総研は、社会福祉法人会計基準へのデータ変換のソリューションを提供するなど、特殊な会計処理に対応した完成度の高いシステムを構築した。
新システムでは、会計の月次報告だけでなく、月次での固定資産処理や補助金の圧縮処理も自動化され、経理業務の効率化が実現した。また、入力インタフェース部分の工夫もあり、各施設での担当者による入力作業でも、新システムへの移行はスムーズに進んだという。

天竜厚生会
経営企画室 係長
井上祐一 氏
経営企画室係長の井上祐一氏は、「民間企業の一般会計と異なり、補助金をいったん収入に計上し特別積立金で、ある意味減価償却のように処理する必要があります」と説明する。新たな会計システムでは、こうした社会福祉法人特有の会計処理が以前より格段にわかりやすいものとなったと評価する。ただ、「この圧縮記帳の処理を実現するのは、少し苦労しました」とも話す。
たとえば、各施設の経費や収入は施設ごとに処理するが、本部経費については、ルールに基づいて各施設に割り振る必要があり、一定のルールに基づいて、各施設ごと約400もの按分パターンで配賦を行っている。 「20万円の固定資産となる備品を購入した場合、53の施設に資産を振り分けなければならないこともあります。以前のシステムでは経費システムと連携していなかったので、この仕訳も手作業で入力する必要がありました」(井上氏)

天竜厚生会
会計課
森 蓉子 氏
また、会計課で経理実務に携わる森容子氏は、「以前に比べ効率的に処理を進めることができるようになりました。特に決算においては処理量が軽減されたことを強く実感しました。しかし、会計環境が目まぐるしく変化している中、会計処理は日々複雑化していくため、今後も様々な問題に柔軟に対応できるシステムへ改善されていくことを期待しています」と、新システムのパフォーマンスに期待を寄せる。
既存システムとのよりスムーズな連携を進めることで
さらなる効率化を目指す
天竜厚生会では人事システムや施設ごとの調達システムなども稼動しており、さまざまな既存システムと新会計システムとの連携は、管理会計の考え方を法人全体に浸透させるためにも重要だ。現状では手作業でデータを受け渡しする部分もあり、それらを自動化しさらなる効率化を図ることが今後の課題でもある。そのための次のステップとして、購買関連のシステムをJD Edwards EnterpriseOneに移行する作業が進められている。

天竜厚生会
会計課
山崎秀敏 氏
会計課の山崎秀敏氏は、「社会福祉法人は、今後の制度改正にも迅速に対応していかなければなりません。その際に会計システムの変更で苦労しないよう、パッケージベンダー、SIerともに、この分野にも積極的に対応してほしいですね」と期待を語る。社会福祉法人にとって、行政や利害関係者にわかりやすい会計情報を迅速に提供することが、今後はさらに強く求められるであろう。
みずほ情報総研は、企業会計での豊富な経験と、公益法人における会計システム導入のノウハウなどを活かし、今後はJD Edwards EnterpriseOne「社会福祉法人向けテンプレート」を積極的に展開していく。
社会福祉法人 天竜厚生会
【設立】1950年5月1日
【売上高】83億6,814万円 (2008年3月期)
【従業員数】1,896名 (2008年9月現在)
【おもな事業内容】
身体障害者、知的障害者、老人介護、保育所、医療所などの施設やこれらに関連するサービスなどの事業を運営する社会福祉法人
【対象システム】会計システム
【導入効果】
- 複数勘定元帳機能により、施設区分ごとに異なる7つの会計単位に対応した会計システム構築に成功
- 複雑かつ特殊な会計処理を自動化することで経理業務の大幅な効率化を実現
- 厳しさを増す環境下での社会福祉法人経営を支援するシステムとしても機能
(本事例の内容は2008年10月のものです)
- *JD Edwards は米国 Oracle Corporation およびその子会社、関連会社の登録商標です。
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担当:広報室
電話:03-5281-7548


