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2007年から2008年へ、情報システムの注目点

2007年12月25日 コンサルティング部 吉川 日出行

ITを使ったコンプライアンス対応-ライフログの活用に注目

財団法人日本漢字能力検定協会が、2007年の漢字を「偽」に決めたそうだ。偽装・改竄などのニュースが多数出て、世の中を騒がせたことによるものらしい。こうした影響なのか、確かに昨年から今年にかけて多くの企業が、コンプライアンス意識を高め、コンプライアンス対応のための仕組みの導入に取り組んでいる。

しかし、対象となる業務プロセスには、まだ紙と人手に依存した部分も多数存在している。すでに一部では、過剰なまでのコンプライアンス意識の高まりとその対応作業の増大に音を上げて、現場での余計なコストの増加と不必要な萎縮の発生がささやかれ始めている。株式会社フィナンシャル代表の木村剛氏は、この状況を「コンプライアンス不況」と名付けている。

2008年は、コンプライアンスに上手に対応した企業とコンプライアンスに翻弄される企業で業績などに顕著に差がつき始める年になるのではないか、と筆者は予想する。現場の負担感を抑えながらコンプライアンスを徹底するためには、人手に頼らず機械的に記録や手続きが行える仕組みや、そもそも法に反する事は全くできないシステムにしてしまうなど、ITの有効活用が不可欠である。2008年は2007年に続き、こうした業務プロセスの見直しやその結果によるシステム、パッケージソフトの導入が進むだろう。

さて、筆者がコンプライアンスの分野でもうひとつ注目しているのは、コンプライアンス対策として取得・収集・蓄積された大量の証跡ログデータである。現在は、まだログを取得するだけで手一杯という企業が大半であるが、2008年以降には、このデータを上手く活用する事例が出てきてもおかしくないと思っている。

もともとシステムの分野では「ライフログ」という概念があり、人間の行い(life)をデジタルデータとして記録(log)に残し、それを後から追跡することで、さまざまな分析を行うことが可能である。こうしたノウハウを証跡ログデータの分析に活用すれば、組織内の無駄な作業の洗い出しや暗黙の行動に埋め込まれているノウハウを見える化する事ができるのではないか。

急拡大するSaaSの活用-コンサルタントのアドバイスも有益

もうひとつ、2007年のIT業界で注目すべき動きにはシステムのサービス化の流れがあった。以前はASPと呼ばれていた、システムを自前で保有せずに外部のそれをネットワーク越しに活用する仕組みが、SaaSと名を変えて2007年には急速に普及し始めた。情報化の進展によって企業システムが巨大になりすぎたために、従来型のサービスでは組織の合併や改編といった経営改革のスピードに対応できなくなった事などが背景にある。

SaaSではアプリケーションをサービスとして捉えるので、必要なときに必要なだけ外部から調達するという、まさに電気や水道といったサービスと同じような感覚でアプリケーションを使うことができる。急な対応が必要でスピードが求められる場合や、本格対応までのつなぎの役割として、SaaSの活用余地は大きい。

ただし、SaaSのようなシステムを外部で運用する形態は、突発かつ予測できない災害やトラブル時のコントロール権が自社の管轄外となることを肝に銘じておくべきだ。万が一サービスが止まってしまうと、自社の都合でないとしても、自社の顧客に「契約先の事故ですから」という言い訳はできないのだから、念には念を入れた対応が必要であろう。

特に、顧客への影響が直接的で、顧客満足度の低下に直結するようなプロセスでSaaSを利用する場合は、サービス自体の可用性・堅牢性や継続性の評価に加え、事業者のセキュリティ対策などにも目を配ることが必要だ。例えば、SaaS事業者の中にはSAS70*監査を受けるなど自社のセキュリティ対策に積極的に取り組み、情報を公開している事業者もある。また、外部コンサルタント等、信頼のおける第三者によるアドバイスを受けることも有益だろう。

話題豊富な仮想世界-エンタープライズ分野への拡大にも注目

技術面では、コンシューマの分野でセカンドライフをはじめとした仮想世界が注目を集め、ゲーム機でも「リモコンを振る」「ボードに乗る」といったインタフェースが現れてヒットしている。技術開発や新しいアイデアの登場により、仮想世界はますますその幅を広げ、身近になっていくことだろう。

コンシューマ分野での話題が先行している仮想世界だが、エンタープライズ分野に広がる可能性も大いに秘めている。既に、パイロットの飛行訓練におけるシミュレータは有名だが、それ以外にも、仮想世界でよりリアルな会社経営シミュレーションを経験させることでビジネススキルを育むとか、ものづくりの際の試行錯誤の過程を仮想世界で自由に体験させるなどといったeラーニング分野での活用は広がる余地が大きそうだ。2008年は、これらの動きにも注目してみたい。

  • *SAS70
    アウトソーシングサービスなどの受託業務にかかわる内部統制について評価する監査人の業務に関する基準として、米国公認会計士協会(AICPA)が定めた監査基準書。SAS70 監査を適用すれば、アウトソーシングサービス事業者のITや情報処理における内部統制システムの有効性、とりわけ情報セキュリティ確保の体制が万全であるかどうかを分析し、評価することができる。(総務省資料より)

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