企業におけるインターネット技術活用の進化
2010年2月9日 ビジネスコンサルティング部 吉川 日出行
トレンド1:ICTにおける産消逆転現象
インターネットの普及により、ICTにおける産消逆転現象が起こっている。旧来、ICT系の技術は、まず大企業が膨大な投資を行い開発して産業向けに活用法を模索し、定着させ、その後一般消費者向けに廉価版として提供されていく流れが常であった。ところが、インターネットがより多くの一般消費者に支持されるに従い、膨大なユーザを対象とした魅力的な市場をめがけて多くの新規企業が参入し、激しい競争と高速な技術進化が起きることにより、一般消費者のほうが産業界よりも進んだICT技術を活用するシーンが増えてきている。結果として、時代は企業が一般消費者向けの最新のICTから学ぶ状況に変わりつつある。
トレンド2:企業におけるインターネット技術の活用
こうした産消逆転現象に着目して、従来とは逆に、一般消費者に鍛えられたインターネット技術を企業内に取り込むことで業務の効率化を図ろうという動きが出てきた。インターネットの世界から一足後れて情報爆発が起こった企業の情報整理や情報流通の改革に、インターネット技術を活かせないかと言うことだ。
企業内に様々なシステムが乱立し、そこで取り扱われる情報量も膨大となった。とりわけ、企業内のコミュニケーションツールの主流が電話からメールへと変わったことにより、非常に多くの情報が電子データとして日々取り交わされるようになった。皮肉なことに、情報化が進み過ぎた結果、社員は欲しい情報や必要な情報を昔ほど上手に入手できなくなってきている。そこで、Yahoo!をはじめとした各種ポータルサイトやGoogleをはじめとした検索エンジンの技術を企業内に取り入れようという試みがなされている。
損害保険ジャパンやみずほコーポレート銀行をはじめとした大企業では、企業内の各種情報の入り口となる企業ポータルをイントラネット上に設け、利用者が必要な情報をすぐに見つけられるようにしている。社内の各種情報をカテゴライズして、社員の情報活用スタイルに合わせたレイアウトや重要情報を目立つように工夫したページを作成し、パソコンを立ち上げた際には、まずこのページを表示するようにした。その結果、利用者の情報アクセスが大幅に改善され、連絡漏れや社内ヘルプデスクへの問い合わせが大幅に減ったそうだ。社内のどこにどんな情報があるかが判らないという悩みを抱える企業は、是非企業ポータルの構築を検討するべきだ。
トレンド3:エンタープライズサーチの有効性
もうひとつ、企業内の膨大な文書アーカイブから目的の文書をすぐに手に入れられるようにエンタープライズサーチ(企業内検索エンジン)の導入も盛んだ。インターネットでGoogleなどを使い慣れた人にとっては、同じような仕組みを使って社内で欲しい情報を探す作業は自然で直感的であるため、導入後に満足度調査を行うと8割以上の利用者が「良かった」「便利になった」という満足を示す。これは、従来の情報系のツールに比べても格段に高い数字だ。
ただし、エンタープライズサーチを導入する場合には、いくつか留意するポイントがある。ひとつは、インターネットと異なり、企業内の情報には役職などによりアクセス権が設定されているということだ。エンタープライズサーチでは、利用者をきちんと判定して権限の無いものを検索結果に表示しないようにする必要がある。
また、Googleのようにキーワードを入れると検索範囲全体から検索して結果をひとまとめに表示するやり方は、エンタープライズサーチではかえって使い勝手が悪い。企業内の場合、探している情報がだいたいどのあたりにあるかを利用者側で判っているケースのほうが多く、検索時に検索範囲を簡単に指定できるようにあらかじめ情報の保管場所をカテゴライズしておくことも重要である。
トレンド4:リコメンド ―インターネット技術活用の更なる進化―
ほかにも、インターネット技術を活用しようという試みは増えている。例えば、リコメンド機能の活用だ。アマゾンドットコムに代表されるようなECサイトでは、利用者の行動を記録し、これを協調フィルタリングという技術を使って分析している。そして、この結果を使って、他の利用者に「この商品を買っている人は他にこういう商品を買っていますよ」という推薦をシステムが提示する。
このリコメンドの仕組みを、社内システムでも活用しようというのだ。例えば、研究所で過去の研究論文を読んでいる研究員に対して、「その論文を読んだ人はこの論文も読んでいます」といった形式でシステムが推薦する仕組みの導入が進みはじめている。
同様に、インターネットで培われた情報整理手法であるフォークソノミーを使って、企業内の情報整理を行った例がある。これは、具体的にはタグ付けという手法を用いる。利用者各自が、気づいた時々に情報に対して自分の好きな分類をタグという形式でメモ書きし、それを収集・蓄積していくことで、フラットな分類を実現するのだ。情報に付与されたタグは、他の利用者も自由に使えるので、誰かがタグを付与すれば、それは全員で活用できる。タグ付けは暇なときに行えるので、専用の要員を用意し、集中して情報整理を行う従来のタクソノミー的な情報整理よりも低コストで柔軟な情報整理が行える。
トレンド5:スピードと柔軟性が求められるグループウェア
これまで、企業内での情報共有システムと言えばグループウェアが有名であった。ロータスノーツを代表とした、文書管理システムやディスカッション支援ツールから電子メールやスケジューラまでを備えた統合製品を使って、企業内の情報共有を行うケースが多かった。
しかしながら、既にこのグループウェアでは、メール洪水などの昨今の情報爆発への対応は限界に達しつつある。パッケージ製品であるグループウェアは、開発元のベンダーが各社の独自アーキテクチャで作成しているため、社内の他システムとのデータの授受など、連携や画面の統一などに難がある。これに対して、インターネット発祥の技術は、元来変化のスピードが速い環境を前提としているので、システム間連携方式は標準化されているし、デザインもHTMLとCSSといった共通言語で自由に変えられる。
最後に
ビジネススピードが加速し、変化が速く大きくなる時代の社内情報共有基盤は、インターネット技術を使ったものに再構成をして、より変化に対応しやすくすることが重要である。情報共有基盤には、ただひとつの決まった正解というものはない。組織の風土やそこに所属する構成員の性格、過去の取り組み状況などによって、最適な答えは異なる。先進事例を参考にして自分たちの組織に合いそうなものを随時取り入れるとともに、試行錯誤や改良を日時重ね、時には自分たちのワークスタイルの見直しなども行って、時々にベターな仕組みを見つけていってほしい。
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