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過去の気象災害から学ぶこと

2012年1月16日 環境・資源エネルギー部 吉川 実

はじめに

2011年も数多くの自然災害が日本を襲った。なかでも3月11日に発生した東日本大震災は2万人近くの死者・行方不明者を出し、地震・津波による災害がひとたび発生すると甚大な被害をもたらすことをまざまざと見せつけられた。

また、昨年は、地震・津波以外による自然災害も大きな被害をもたらした。日本はアジアモンスーン地帯に位置しており、水の恵みを享受している一方で、台風や梅雨などによる大雨や冬季の豪雪による災害リスクを常に抱えている。本コラムでは昨年発生した気象災害について注目し、被害低減の方策について検討したい。

2011年の気象災害

気象庁によると、災害をもたらした気象事例(*1)として、昨年は「平成23年7月新潟・福島豪雨」「台風12号による大雨」「台風15号による暴風・大雨」が挙げられている。

「7月の新潟・福島豪雨」は、2011年7月27日~30日にかけて新潟・福島地方を中心に記録的な大雨をもたらした。福島県南会津郡では、平年の7月の降水量の2倍以上の雨がわずか数日に降るなどすさまじい豪雨となった。この豪雨による被害は3.11の地震被害とも重なり、マスコミ等で大きく取り上げられた。

また、「台風15号」は、9月15日~22日に西日本から北日本にかけて広い範囲で暴風や記録的な大雨をもたらした。首都圏では多くの公共交通機関が21日の夕方前から夜にかけてストップし、帰宅まで相当な時間を強いられた人も多かった。

昨年、気象に直接関連して発生した最大の被害は、8月30日~9月6日にかけて紀伊半島に記録的な大雨をもたらした「台風12号」である。台風が大型で、さらに動きが非常に遅かったため、長時間にわたって大量の湿った空気が日本列島に流れ込み、西日本から北日本にかけて山沿いを中心に広い範囲で記録的な大雨となった。特に、紀伊半島を中心とした広い範囲で総降水量が1,000ミリを超え、一部の地域ではわずか数日の間に2,000ミリを超える降水量を記録し、統計開始(1976年)以来の観測記録を塗り替えた地域も相次いだ。この大雨による土砂崩れや河川の氾濫などで、100名を超える死者・行方不明者が出た。また、土砂崩れにより道路が寸断され孤立した集落や、氾濫した河川による濁流で町ごと飲み込まれた地域も見られた。

今回の台風では、表層の土砂だけでなく、その下の岩盤も崩壊する深層崩壊と呼ばれる現象を引き起こしている。これだけの死者・被害が発生した台風は近年ではあまり見られない。日本では過去に伊勢湾台風(1959年)やキティ台風(1949年)、カスリーン台風(1947年)などによって甚大な犠牲者を出したが、被害軽減のためのインフラ等の整備や観測・情報網の発達により、気象災害による犠牲者は長期的な傾向として少なくなってきている。しかしながら観測史上最大レベルの大雨に対しては、防御することが簡単ではないことを浮き彫りにした。

過去から学ぶ

行政はハザードマップ(*2)の整備、河川の監視強化などさらなる対策の必要性を認識して動き出している。しかしながら、行政がすべての事象に完璧に対応すること、備えることは不可能である。現実的には効果や地域の特徴などから優先順位をつけて対策を行うこととなる。その際に、河川や海岸などハードウェアの整備を優先しがちであるが、ソフト支援として、いかに早く豪雨およびそれに伴う災害から避難するかという教育も必要になってくる。その際に重要なことは、地域の災害に関する情報を収集、整備して過去から学ぶとともに、対峙した被害についても将来に伝えていくことである。世代間で受け継がれた情報や知識は、地域に適した有効な防災対策の1つとなるのではないだろうか。

昨年の台風12号では紀伊半島を中心に大きな被害を出したが、遡れば1889年に紀伊半島にある奈良県十津川地域において、「十津川大洪水」と呼ばれる災害が発生している。数百人の死者、数百の家屋の流出という壊滅的な被害により、住民の一部が移住せざるをえない大災害として記録されている。数日間大雨が続いたこと、深層崩壊や土砂ダムの形成など、今回の台風12号による被害との共通点も多い。

このように繰り返し襲ってくる可能性のある気象災害に対して、情報を共有する・受け継ぐといったことが、それ以降の災害に対する被害軽減の有効な対策の1つとなりうる。経験を知識に、そしてその知識を共有し、次の世代に伝えていくプロセスが重要である。たとえば「山が崩れる数時間前から何かきしむ音が聞こえた」「川の流れの音が変わって30分で土石流が襲ってきた」「どこの道を使って逃げることができた」「あの高台は冠水しなかった」という証言情報も含め、さまざまなレベルの情報を収集・整理して受け継ぎ、活用することで、今後の災害の被害低減につなげることができるだろう。

我々にとって、2011年ほど過去や先人から学ぶ重要性を痛感した年はないのではないか。

  1. *1災害をもたらした気象事例(気象庁)
  2. *2自然災害による被害を予測し、危険箇所や被害範囲を地図上に示したもの

広報室
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