ページの先頭です

-加速するコンテンツ二次利用による創作活動

日本が先進国

  • *本稿は『ORIGINAL CONFIDENCE』 2008年4月14日号 (発行:オリコン・エンタテインメント)に掲載されたものを、同編集部の了承を受けて掲載しております。

みずほ情報総研 コンサルティング部 シニアマネジャー 吉川 日出行

『ニコニコ動画』で一大ブームを巻き起こした楽曲「男女」

昨年あたりからインターネットでは動画共有サービスがブームになっている。利用ユーザーがそれぞれ動画をアップロードして皆で視聴するというこれらのサービスでは、時にはテレビ放送や楽曲が丸ごと違法にアップロードされるなど、知的所有権の面で法律的に非常にたくさんの問題を抱えているが、今一番ホットなサービスである事は確かだ。

そんな動画共有サービスの一つである『ニコニコ動画』で、今年に入ってちょっと面白い動きがでてきている。『ニコニコ動画』上で「男女」という楽曲がブームになっているのだ。「男女」というのは、新人アーティストである「太郎」がレコード各社のオーディションなどで披露して注目を集めたのをきっかけに06年12月13日に東芝EMI (現EMIミュージック・ジャパン)から発売された曲である。

もともとネットの一部で注目を集めた曲であったことより、CD化された後も携帯電話の着信音などが配信されるなど一部では存在が知られた曲であるが、この「男女」が最近『ニコニコ動画』で再度ネタとして注目を浴びている。

きっかけは、今年の1月9日に、この「男女」という曲を使った手書きアニメ風のPV作品が『ニコニコ動画』にアップされたことにある。このPVに登場するキャラクターが昨今注目を浴びている自動歌声合成ソフトである“VOCALOID2シリーズ”のキャラクターであったことから一躍注目を浴び、『ニコニコ動画』に集う職人と観衆の間に一大ブームを巻き起こした。

マッシュアップで成長・進化を遂げるネタ

最近の『ニコニコ動画』の楽しみ方のひとつに、ネタをシャブリ尽くすというのがある。面白いネタを見つけると、職人と観衆でよってたかってそれをアレンジし、他のネタと組み合わせてどんどんと面白い作品へ仕上げていく。『ニコニコ動画』では、職人の分業というかコラボレーションが自然に出来る風土が既に確立されていて、自然に相互作用複合型創作(マッシュアップ)が行われる。誰かが作った曲に絵の上手い人がCDのパッケージイラスト的な絵を書き、また違う誰かがそれをアニメーションにするという連鎖が至極当然に発生していく。しかもこれは2日や3日といったとても短い期間で高速に行われる。

参加者の中には肉体表現で参加するものもあり、彼らは「歌ってみた」「踊ってみた」「演奏してみた」という形での参加を行う。こうしてネタはどんどんと成長・進化(増大)するとともに、進化の過程でつまらないものは蹴落とされていき、自然にレベルの高いものだけにブラッシュアップされていく。

すでに『ニコニコ動画』には、1000あまりの「男女」リミックス&リスペクト作品が登録されていて、いろいろなアレンジや替え歌バージョンが職人の手から発表されるとともに、振り付けが考案され全国の有志が「踊ってみた」動画をアップしている。これまでに少なくとも30人以上が踊ってみており、とある公園では男女ダンスオフも開催されたようだ。

昨今の社会で起きている新しい動き「プロサンプション」

未来学者のトフラーは著書『富の未来』の中で、昨今の社会で起きている新しい動きとして「プロサンプション」(生産消費活動)の復活とそれを行う「プロシューマ」の増加を取り上げている。彼の定義によるとプロサンプションとは、販売や交換のためではなく、自分で使うためか満足を得るために財やサービスを作り出す行為を指す。そして、その活動を行うプロシューマの典型的な行動パターンをドン・タプスコットは『ウィキノミクス』の中でこう例示している。

「プロシューマ達は自発的参加によって自分自身の製品を創り出すことができるのだ。先頭を走るユーザーは、製品が自分の革新プラットフォームになるのを待つこともしない。自分たちでオンラインのプロシューマー・コミュニティを作り、そこで製品に関する情報を共有し、コラボレーションによってカスタマイズし、取引を行い、ノウハウやツール、製品のハッキング手法を交換する」

まさしく『ニコニコ動画』における彼らの行動はこれに当てはまる。

このプロサンプションのような“無償で行う行為=非金銭的経済”は経済学的に意味がなく、従来の金銭的経済とは関係ない、あるいは金銭的経済を脅かす悪しきものだと勘違いしている人も多いが、それは誤りである。トフラーも、「経済学ではこれまで資本財の購入を単なる消費活動だと見なしてきたが、生産消費活動の視点で見ると、資本財の購入は生産設備への投資であり、生産消費で算出される価値が増大していることを示す」としており、生産消費活動が活発になると従来の生産活動の一部がセルフサービス化されるが、それでも自らの生産能力を高めるための投資や生産のための素材の購入は残ると言っている。

コンテンツクリエイターに求められる自身のスタンス

さて『ニコニコ動画』でのこうした作品の勝手なリミックスや再利用については、冒頭に書いたように様々な知的所有権の問題がある。このような二次利用に今後どうつきあうかについては、クリエイター側もそれぞれがよく考えておく必要があるだろう。二次利用によって元の作品の周知が進み、自分の思ってもみなかった発展が起こることを良しとするのか、それとも自分の作品が他者の手によって穢されることは絶対にノーなのか。従来のように答えは皆同じではなくなったのだ。コンテンツクリエイター側も、各自が自分のスタンスを明確にしておくべきだろう。

実を言うと、こんなに急速にプロサンプションの流れが進み、コンテンツの二次利用による創作活動を活発化させた日本は、世界的に見て最も先進国である。プロサンプション環境下での経済活動のあり方や権利関係の考え方については、今後、日本発のものが世界に広がる第2の漫画/アニメ的なムーブメントになる可能性も高い。

今後プロサンプションが盛んに行われる新しいコミュニティが勢力を増していけば、今は消費者側にいる人がクリエイター側になったり、あるいは逆にクリエイター側にいる人もある時は消費者側との一個人としての立場になったり、というようなことが増えてくるはずである。『ウィキノミクス』のプロシューマの章の最後はこう締めくくられている。「プロサンプションは、ぐるっと回って自分のところに戻ってくるものだ」と。

お問い合わせ

担当:広報室
電話:03-5281-7548

広報室
03-5281-7548

メールマガジンお申し込み

みずほ情報総研メールマガジン、「ケミマガ」化学物質管理関連サイト新着情報メールマガジンを無料配信

RSS配信コンテンツ

ニュースリリース、ソリューション、コラムなどの最新情報をRSSで配信

みずほフィナンシャルグループ

  • みずほフィナンシャルグループ
  • みずほ銀行
  • みずほコーポレート銀行
  • みずほ信託銀行
  • みずほ証券
  • みずほインベスターズ証券
  • みずほインベスターズ証券

グループ会社

ブランドコンセプト

ページの先頭へ
ページの先頭へ