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―若者の20年後、50代男性の4人に1人は一人暮らし―(1/2)

単身急増社会と若者

  • *本稿は、『現代の理論』 vol.26 2011年新春号(明石書店、2011年1月14日発行)に掲載されたものを、同編集部の承諾のもと掲載しております。

みずほ情報総研 主席研究員 藤森 克彦

はじめに

今から20年後の2030年。30代の若者が50代となった時、50代男性の4人に1人弱が一人暮らしとなる――。これは、現在の結婚・世帯形成行動が続いた場合に予想される「2030年の日本の姿」である。

これまで高齢者の一人暮らしの増加が注目されてきたが、中高年男性でも単身世帯が大きく増えており、今後もその傾向が続くとみられている。そして中高年男性における単身世帯の増加の背景には、未婚化の進展がある。現在進行している若者の未婚化が、将来の中高年層の単身世帯の増加につながっていく。

言うまでもないが、結婚するか、1人で暮らすかは、基本的には個人の選択の問題である。それぞれの人が、自らの価値観に従ってライフスタイルを選択することに良いも悪いもない。しかし一方で、単身世帯の増加は、社会に大きな影響を与えていくと考えられる。例えば、現行の社会保障制度は同居家族の助け合いを前提に設計されている面があるため、単身世帯の抱えるリスクに十分な対応ができないことなどが考えられる。

そこで本稿では、30代の若者が50代となる2030年の状況を展望しながら、中高年を中心とした単身世帯の増加状況とその要因を概観する。その上で、現在の中高年の単身世帯が抱えるリスクを考察して、それに対する対策を考えていこう。

1.単身世帯の増加状況とその要因

まず、単身世帯の増加状況をみていこう。年齢階層別人口に占める単身世帯――個人からみれば単身者――の割合をみると、2005年現在、50代男性に占める一人暮らしの割合は13%となっている(図表1)。85年の同割合はわずか5%だったので、この20年間で大きく上昇した。そして2030年になると、50代男性――つまり、現在の30代男性――の23%が一人暮らしになると予想されている

一方、単身女性の同割合は、男性ほど急激には上昇しない。50代女性に占める単身世帯の割合の推移をみると、85年 7%、05年 8%であり、30年には15%になると予想されている。確かに、50代女性においても単身世帯化は進んでいくが、50代男性ほど急激ではない。

では、なぜ単身世帯は増加していくのか。50代とそれより若い年齢階層で単身世帯が増加していく最大の要因は、未婚化の進展である。未婚者は配偶者がいないという点において、単身世帯になりやすい。

では、未婚率はどの程度上昇しているのであろうか。年齢階層別に未婚率の推移をみると、どの年齢階層も未婚率は大きく上昇している(図表2)。特に50歳で一度も結婚をしたことのない人の割合を「生涯未婚率」と呼ぶが、男性の生涯未婚率は85年まで1~3%台で推移した後、90年に5.6%となり、05年には16.0%となった。今後生涯未婚率はさらに高まっていき、2030年には、男性の生涯未婚率は29.5%、女性は22.5%になると予想されている。90年代以降、私たちの想像以上に結婚や世帯形成の面で大きな変化が進んでおり、その傾向は今後も続くとみられている。

図表1 年齢階層別人口に占める単身世帯の割合の推移

(資料)1985年と2005年は総務省『国勢調査』(実績値)、2030年は国立社会保障・人口問題研究所編『日本の世帯数の将来推計(全国推計)―2008年3月推計』による将来推計に基づき、みずほ情報総研作成。


図表2 男女別・年齢階層別の未婚率の推移

(資料)05年までの実績値は、国立社会保障・人口問題研究所編『人口統計資料集2010』。将来推計については、同『日本の世帯数の将来推計(全国推計)2008年3月推計』に基づき、みずほ情報総研作成。

2.なぜ未婚化が進展するのか

では、なぜ未婚化が進展しているのであろうか。

まず考えられるのは、若者の結婚に対する価値観の変化である。しかし、若者に対する意識調査からは、こうした点は窺えない。20代~40代の未婚者を対象に「結婚の意思」を尋ねると、「いずれ結婚するつもり」と回答した人が、20代と30代では8割以上となっている(国立社会保障・人口問題研究所『平成17年わが国独身層の結婚観と家族観―第13回出生動向基本調査―』厚生統計協会、2007年)。40代になると、同割合は低下するが、それでも5~6割の人が結婚の意思をもっている。

また、92年の人と比べると、男性の20代と30代で結婚の意思をもつ人の割合が若干低下しているが、それほど大きな変化ではない。むしろ注目すべきは、「いずれ結婚するつもり」と回答する人が30代と40代の未婚女性で上昇している点である。未婚者の多くは「結婚の意思」をもっており、92年と比べても、結婚の意思をもつ人の割合が大きく低下しているわけではなさそうだ。

では、「いずれ結婚するつもり」であるのにも関わらず、なぜ未婚者は独身のままなのだろうか。この点、結婚の意思をもつ未婚者に「独身でいる理由」を尋ねると、20代~40代のすべての年齢階層において最上位にくる理由は「適当な相手にまだめぐり会わない」というものである。「結婚する必要性をまだ感じていない」「独身の自由さや気楽さを失いたくない」といった他の理由を大きく上回っている。

こうした点から推察すると、未婚化の背景には、「適当な相手」にめぐり会うまで「待てる環境」ができたことが大きいと考えられる。具体的には、女性の経済力の向上によって結婚しなくても生活できる女性が増えてきたことがあげられる。また、「ある程度の年齢になったら結婚する」という社会的規範が弱くなったこともある。さらに、社会的なインフラが整備されたことによって、結婚せずに一人暮らしから生じる不便さも低下している。例えば料理が苦手でも、コンビニエンス・ストアに行けば弁当がある。こうした環境ができたことが、未婚化を進展させた一因と考えられる。

また、上記の点に加えて、非正規労働者の増加も未婚化を進展させた要因といえよう。非正規労働者は雇用が安定せず、また将来的な賃金の上昇を望むのが難しい。その結果、非正規労働者の男性を中心に、結婚したくても結婚を躊躇するか、そもそも結婚の機会に恵まれないことが考えられる。

では、非正規労働者はどの程度上昇してきたのだろうか。男女別・年齢階層別に、雇用者に占める非正規労働者の割合を求めると、90年から2010年にかけて全年齢階層でその割合は上昇している(図表3)。例えば、25~34歳の男性雇用者に占める非正規労働者の割合は、90年には3.2%であったが、2010年には13.2%と、この10年間で10%ポイントも上昇した。

そして、非正規労働者の男性は、正規労働者に比べて結婚しにくい状況が示されている。厚生労働省『第6回21世紀成年縦断調査』(2007年)によれば、2002年に20~34歳であった男性の独身者のうち、その後の5年間で結婚した人の割合は、正規労働者では24.0%、非正規労働者では12.1%であり、非正規労働者で結婚した人の割合は、正規労働者の半分程度になっている。

ちなみに女性では、男性のような大きな差はみられない。女性で結婚した人の割合は、正規労働者で27.7%、非正規労働者で24.5%であった。「男性が稼ぎ手社会」に対する意識が依然として根強いことが窺える。

図表3 男女別・年齢階層別にみた雇用者に占める非正規労働者の割合の推移

(単位:%)

  男性 女性
25~34歳 35~44歳 45~54歳 25~34歳 35~44歳 45~54歳
1990年 3.2 3.3 4.3 28.2 49.7 44.8
1995年 2.9 2.4 2.9 26.8 49.0 46.9
2000年 5.7 3.8 4.2 32.0 53.3 52.0
2005年 13.2 7.1 9.1 38.3 54.4 56.7
2010年 13.2 8.2 7.9 41.6 51.1 58.0
  1. (注1)役員除く雇用者に占める非正規労働者の割合。非正規労働者とは、パート・アルバイト、派遣社員、契約社員・嘱託などが含まれる。
  2. (注2)90年と95年は、2月調査。それ以降は、1~3月の平均値。
  3. (資料)総務省『労働力調査』により、みずほ情報総研作成。

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