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2011年土壌環境事業の行方

  • *本稿は、2011年1月19日付の環境新聞に掲載されたものを、同編集部の承諾のもと掲載しております。

みずほ情報総研 環境・資源エネルギー部 チーフコンサルタント 光成 美樹

昨年の土壌環境事業は、より複雑になった改正土壌汚染対策法(以下、改正法)による影響を受、健康被害防止を目的とする環境行政での土壌汚染問題の解決の難しさを浮き彫りにする状況となった。

停滞する土壌環境事業

これまで国内の土壌環境事業は、主に不動産売買をビジネス契機とし、時間と分かりやすさ、守秘性を重視したニーズに応えるモデルが中心であった。しかし、改正法の下で掘削除去の抑制が明記され、形質変更時の届け出義務が課されたことにより、これまでのように短期かつ非公表に対策を実施することが難しく、かつ手続きに伴う費用負担も増えることとなった。さらに、不動産市場の低迷と企業の新規製造拠点が海外へシフトする中、工場用地・跡地の売却も難しい状態となっている。

このため、売却や再開発等が決定している土地の土壌汚染対策を除いて、企業内の土壌汚染対策は、文書等での調査にとどまっており、施設の統廃合に伴い未使用となった建物等の取り壊しも進んでいない状況が生じている。改正法が一部でブラウンフィールド(増幅)法であると表現される背景はここにある。

企業が選択する土壌汚染リスク管理

改正法によって3千平方メートル以上の土地形質変更時(地歴考慮の上)に土壌汚染調査が義務付けられることになり、土対法は、特定の事業廃止時の法令ではなく、土地形質変更という建設工事に伴う法令という性質が強くなった。実際に、形質変更時の土壌汚染調査により、施設のライフサイクルコスト(解体までの費用)に土壌汚染対策費が加わると、設備投資の費用回収計画にも影響する。

さらに、今後の会計基準の変更に向けた環境債務(環境修復引当金)、減損会計と戻し入れ、時価表記等の拡充など企業会計だけでも検討しなければならない要素が多くなっている。

このため、敷地内の設備投資や施設の改築工事において、調査の実施により基準を超える汚染が見つかった場合の浄化対策の検討、費用の捻出に加え(1)地歴調査方法の明確化や過去の土地利用に伴う調査対象物質の網羅性が拡充されたことにより汚染発覚のリスク(2)都道府県において土壌汚染情報の収集の努力義務規定が明記されたことによる、自主調査時の届け出の推奨(3)汚染を管理する形質変更時要届出区域でのリスクコミュニケーション(4)自社原因でない可能性が高い汚染が発見された場合の従前の所有者等との対応協議など道筋の見えにくいリスクが待ち受けている。

これらのリスクに対するシナリオは複雑で描きにくく、特に、法改正の実務的な流れが不透明であった昨年は、多くの企業でできるだけ調査を回避できるような選択肢、すなわち設備の解体や撤去を回避する措置を一時的にとっている状態となっていると考えられる。

会計基準の変更と先進企業の取り組み

しかしながら、今後の国際会計基準を踏まえて、グローバル企業を中心に、自社グループ資産全体における土壌汚染リスクの定量化に向けた動きも始められている。

資産の市場価値や将来キャッシュフローから当面の不動産戦略を決定するため、土壌汚染による減価や将来の除去費用を概算することが求められるようになるからである。

10年4月から適用された資産除去債務においては、土壌汚染リスクの直接的な影響は少なく、法令対象となる所有地の把握、借地契約におけるリスク管理などを検討するにとどまっているが、資産負債が重視される国際会計基準への準備としても、大手企業を中心に不動産や固定資産の整理、見直しが進んでいる。11年6月頃の年次報告における資産除去債務全体の開示内容も、段階的に環境債務の把握や開示が進む契機となると考えられる。

土壌環境事業の方向性

こうしたグローバル企業の動きとともに、成長政策として検討されている都市開発や独立行政法人等の遊休資産の活用促進における定期借地によって、土地形質変更時の土壌汚染対策が徐々に増加する可能性もあるだろう。

さらに沿岸埋立地を賃貸している自治体では、借地返却時の土壌汚染リスク対策の検討も進められる可能性がある。いずれも所有土地や賃貸借している土地の土壌汚染リスクをどのように対処するかが課題であり、汚染対策コストを最小にしながら、土地や施設を自社のライフサイクルに併せて最適化していくソリューションが求められる方向となるだろう。

従って、市場性のある土地とそれ以外の土地、グローバル企業の取り組みと国内重視の企業とでは相違があり、今年はそれぞれ前者の動きが少しずつ始まるなど限定的な取り組みにとどまる可能性が高いだろう。

法制度の影響による土壌汚染事業の停滞はしばらく続くと見込まれるが、政策支援への期待が難しいことから、より魅力的な技術とソリューションの組み合わせよる市場の活性化を期待したい。

【改正土壌汚染対策法の主な影響(例)と主な対応(例)】

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