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アジアにおけるLNG需給動向

  • *本稿は、『港湾』 2011年2月号 (発行:社団法人日本港湾協会)に掲載されたものを、同編集部の承諾のもと掲載しております。

みずほ情報総研 環境・資源エネルギー部 次長 冨田 哲也

拡大が続くアジアのLNG需要

優れた環境特性と経済性を背景に、アジアの天然ガス消費量が増加している。リーマンショック後の2009年は、世界全体の消費量は減少に転じたものの、中国での需要が大きく伸びていることから、アジア地域全体で見た消費量は、右肩上がりで推移している。

天然ガスを輸送するには、ガスのままパイプラインで輸送するか、産ガス国で液化し、LNG(液化天然ガス)としてタンカーで輸送する方法がある。世界全体でみると前者による貿易量のほうが多いが、日本は輸入の全てをLNGに依存しており、韓国、台湾も同様である。

2009年の全世界のLNG貿易量は、1.82億トンで、天然ガス消費量の8.1%を供給している。アジアでは、日本、韓国、インド、台湾、中国の五カ国が輸入しているが、その量は合計1.14億トンであり、世界全体の63%をこの地域が占めている。

世界的に見ると、南米や中東など、これまでLNGを輸入していなかった地域にも貿易が拡大しているが、一方で数年前まではLNG需要が急増すると見られていた北米では、シェールガスと呼ばれる新たなガスの開発が活況を呈しており、LNGの輸入が増加する可能性は当面無くなったといえよう。

アジアでは、消費量の落ちていた日本、韓国、台湾でも増加傾向にあり、急増している中国と合わせて、LNGの需要拡大が続くものと見られ、消費地としてアジアの存在感は益々拡大していくものと予想される。

ここでは、アジアにおけるLNG消費国と、アジアへの輸出国の動向について概観する。

主なアジアの消費国の動向

(1)日本

日本は、現在も世界最大のLNG輸入国であるが、世界シェアは低下傾向が続いており、2009年は36%となった。2010年は、景気回復や猛暑等の影響から、LNG輸入量は増加傾向にあった。中長期的には、人口減少の影響からエネルギー全体の消費量も減少していくことから、日本の天然ガス輸入量が中国や東南アジアのように増加するとは見られていないが、国内には新たに受入基地の建設を計画する動きが続いており、北海道から沖縄まで多数の計画が進められている。

(2)韓国・台湾

日本に続いてLNG輸入量の多い韓国でも、サムチョク(三陟)で新たなLNG受入基地の建設が進められている。台湾では新たなLNG受入基地の建設計画はないが、2010年は景気回復に伴い、輸入量が大幅に増加した。

(3)中国

アジアで最もLNG需要が拡大しているのが中国で、2010年は11月までの実績で前年比66%増を記録している。現在も沿岸部の各地で建設計画が進められており、LNG消費量は、当面大幅な増加が続くものと見られている。中国は、これらの新たなLNGを確保するため、オーストラリア、パプアニューギニア、カタールの新たなプロジェクトからも輸入する方針だ。

中国の天然ガス消費量は、2009年には日本と並び、既に超えているものと推測できる。これまでそのほとんどを国産に頼ってきたが、LNGに加えて、パイプラインでの輸入促進も図っており、中央アジアからの天然ガス輸入が急増している。

(4)東南アジア・南アジア

天然ガス資源の少ない国に新たな輸入計画が出現しているが、既存のLNG輸出国にも地域的にガス不足が見込まれる国が出てきており、LNGを輸入しようとする動きが相次いでいる。

タイとシンガポールでは既に受入基地の建設が行われているほか、フィリピン、ベトナム、パキスタン、バングラデシュ、スリランカでも新たにLNGの輸入が検討されている。

さらに、これまでLNGを輸出してきたインドネシア、マレーシアでも地域的に天然ガスが不足すると見られている地域があり、複数のLNG受入基地建設計画が急ピッチで進められている。インドネシアでは、スラウェシ島の陸上や洋上の浮体式LNG液化設備の建設計画も進められているが、ジャワ島やスマトラ島では、受入基地の建設計画が進められている。

その他、中東でもクウェートとドバイでLNGの輸入が開始された。中東には豊富な天然ガスの埋蔵量を抱える国が多いが、急激な経済成長と人口増加を背景に天然ガス需要が急増しており、夏場の電力や海水淡水化需要向けに、LNG輸入が必要となっている。

表1 世界のLNG貿易一覧(2009年、百万トン)

表1 世界のLNG貿易一覧(2009年、百万トン)

拡大図

(注)GIIGNLでは、上記データをLNGの液体の体積(立方メートル)の単位で発表しているが、上記は輸出各国のLNGの平均密度を使用してトン換算した。
出典:GIIGNL(国際LNG輸入者連盟)

主なアジア向け輸出国の動向

(1)ロシア

2009年には、サハリンでLNGプロジェクトが立ち上がり、ロシアもLNG輸出国の仲間入りを果たした。また、ウラジオストックにも新たな液化基地の建設計画が進められており、実現すれば東アジアの輸入国にとっては、最も近い輸出基地が誕生することになる。

(2)オーストラリア

オーストラリアは、世界で最も多くの輸出プロジェクトが検討されている国であり、その計画は西豪州北部とクイーンズランド州に集中している。

西豪州では、相次いで沖合に大規模ガス田が発見されており、これらを利用する計画が増えている。現在プラント建設中のプロジェクトとしては、Gorgon LNG、Pluto LNGがあり、これ以外にも多くの計画が進められている。これらの中には、日本の電力・ガス会社自らがガス田開発に参加しているプロジェクトが増えてきた。

一方、クイーンズランド州では、石炭層のガス開発が進められており、多くの輸出計画がある。既存の天然ガスに比較すると発熱量が低いことから、一部には購入に慎重な声も出ているが、BG GroupやSantosらの二つの計画が投資決定を済ませており、建設段階に入った。

(3)その他

東南アジアでは、パプアニューギニアに液化基地が建設されており、アジア各国への輸出が予定されている。また、中東では、カタールで相次いで大型のLNG液化基地が完成している。これらは北米にも輸出が見込まれているが、前述のように北米の需要が減少していることから、アジア向けに販売拡大が模索されている。

一方、天然ガス供給に余剰感の出てきた北米では、LNGを輸出する計画が相次いでいる。カナダの西海岸にもアジア市場を目指した計画が進められており、実現すれば、新たな貿易ルートが誕生することになる。

このようにアジアでは、今後もLNG需要は拡大することが見込まれ、受入基地の建設など、関連の投資が続くものと見られる。

図1 アジア中東地域のLNG基地建設計画一覧

図1 アジア中東地域のLNG基地建設計画一覧

拡大図

(注)日本の基地は省略している。
出典:みずほ情報総研

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