世界を席巻した太陽電池 化石依存から脱却できるか
[連載]世界新エネルギー地図 第15回:中国(2)
- *本稿は、『日経エコロジー』 2012年1月号 (発行:日経BP社)に掲載されたものを、同編集部の承諾のもと掲載しております。
みずほ情報総研 環境・資源エネルギー部 次長 冨田 哲也
正式名称:中華人民共和国
首都:北京 名目GDP:約4兆9,000億ドル
人口:約13億人 面積:約960万平方キロメートル
今や世界の工場となった中国は、太陽電池生産でも世界1位に躍り出た。過去5年で生産能力を飛躍的に伸ばしている。
2010年の生産量が100万kW(=1,000MW)を超えた太陽電池メーカーは世界に5社。このうちの4社はサンテックパワー、JAソーラー、インリーグリーンエナジー、トリナ・ソーラーで、中国企業が市場を席巻している。
生産した太陽電池の9割以上を、再生可能エネルギー電力の固定価格買い取り制度(フィードインタリフ=FIT)で市場が拡大しているドイツなど海外に出荷。今は日本に打って出ようと、企業買収や支社設立で進出を図る。
国内では都市から離れた無電化村落の電源に太陽光発電を使う例が多いが、政府は大規模な発電設備や建物への導入に力を入れ始めた。2009年には国家エネルギー局を中心に甘粛省敦煌で1万kWの発電事業を開始。その後も各地で大型発電所の建設が続く。
江蘇省には2万kW級の大型発電所が3カ所完成。寧夏回族自治区、青海省などにも1万kW以上の発電所が完成した。
大型発電設備の建設事業の受注は入札で決まり、落札企業は固定価格で電力を販売できる。2009年からは建物への50kW以上の太陽光発電の導入に、補助金を使えるようになった。
ただし、全国規模でのFITの導入については具体的に検討されたものの、実現に至っていない。1年間の生産量が100万kWを超える企業が4社も存在しながら、2010年末の全国規模の累積導入量は80万kW程度にとどまるとみられる。今後、内需拡大にどのような政策を導入していくか、注目が集まる。
中国の太陽光発電システム累積導入量

出所:IEA PVPS(国際エネルギー機関太陽光発電システム研究開発プログラム)の資料
一方、バイオマス(生物資源)燃料の供給量は、太陽電池生産量のようには増えていない。
1990年代後半、トウモロコシの生産地域で過剰在庫が発生したことから、バイオエタノール生産が本格化。2000年以降、黒竜江省などで工場の建設が相次ぎ、自動車向け燃料として使うための規定を策定した。補助金などの優遇策も導入し、流通地域の拡大とともに生産量が増加。供給量が100万トンを超えた。
ところが、原料になるトウモロコシの食料や飼料向け需要が拡大。価格も高騰したことから、政府は2006年にトウモロコシの利用を制限した。
一方、中国の新車販売台数は、2009年に米国を抜いて世界第1位になり、保有台数でも2011年8月には1億台を突破。日本の保有台数を大きく上回る規模で、米国に次ぐ保有国だ。急激な自動車の普及は、石油消費量の大幅な増加につながっているが、先進国に比べると保有比率はまだ低く、今後も増え続けるだろう。バイオ燃料への期待が高まる。
政府はトウモロコシに代わって、スイートソルガムやキャッサバを原料に、エタノール生産を推奨したが、生産量は思うようには増えていない。2020年に1,000万トンを生産する目標だが、食料と競合しないセルロース系原料などによる、新たな生産方法の確立が必要だ。
中国のバイオエタノール生産量の推移

出所:USDA(米国農務省)の資料
2010年10月、中国政府は第12次5カ年計画(2011~2015年)の骨子を発表。戦略的新興産業の推進を掲げ、7つの対象分野を重点的に発展させる方針を示した。
エネルギーに関連する分野としては省エネ・環境産業、原子力発電や再生可能エネルギー、電気自動車などの次世代自動車の3分野を挙げ、成長に注力することでGDP(国内総生産)をさらに成長させる。1次エネルギーに占める非化石燃料の比率を2010年の8.3%から、2020年までに15%程度への引き上げも目指すが、世界1位のエネルギー消費国にとって、この比率の引き上げはそう簡単ではない。既に風力発電では世界最大の導入規模だが、引き続き風力発電の導入を進めるとともに、ほかの分野でも思い切った普及策が求められる。
中国による再生可能エネルギー設備の大量生産はコストの下落につながり、海外での再生可能エネルギーの普及にも貢献している。一方で、日本をはじめとする先進国のメーカーは価格競争に苦戦。米国では政府が支援した太陽電池メーカーのソリンドラ社の破産が注目を浴びることになった。再生可能エネルギーを自国の成長産業ととらえる国では、中国製品の流入に悩まされながら、エネルギー政策と産業政策の狭間で揺れる状況が続きそうだ。
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