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資産除去債務 賃貸借や借地利用の企業にも影響

  • *本稿は、『週刊エコノミスト』 2009年11月3日号(発行:毎日新聞社)に掲載されたものを、同編集部の承諾のもと掲載しております。

みずほ情報総研 環境・資源エネルギー部 チーフコンサルタント 光成 美樹

固定資産関連で、比較的実務負担の大きいIFRSへのコンバージェンス(収斂)項目の1つが、日本で2010年4月から適用が義務付けられる「資産除去債務」である。

資産除去債務とは、有形固定資産の解体や売却、廃棄などにおいて法令や契約で求められる費用をあらかじめ債務として認識するもの。貸借対照表の資産・負債に両建て処理し、損益計算書に資産の耐用年数に応じて減価償却費として費用化することを求める会計処理である。 建物や施設を除去する際に求められる法令としては、環境関連の法令が多いことから、環境債務に関する会計処理であるという認識もある。 国内では、アスベスト除去費用、PCB(ポリ塩化ビフェニル)含有機器の廃棄費用、土壌調査費用などが該当するが、資産の所在する現地法令に準拠するため、海外を含めて一定の調査が必要になる。契約上の義務には、原状回復義務のある定期借地に建てた建物の撤去費用や賃貸借契約での造作撤去などが該当する。

シェブロンは93.9億ドル計上

米国では、同様の会計基準が02年から適用されている。開示事例をみると、米大手石油会社のシェブロンが93.9億ドル(約9,000億円)、BPが84.2億ドル(約8,400億円、英企業だが、ニューヨーク市場にも上場しているため開示義務あり)などエネルギー関連企業では総資産の5%前後の資産除去債務を計上。また、アスベストなど環境債務に該当する資産除去債務だけを計上している企業でも、フォードが3.6億ドル(約360億円)など100億円以上計上するケースもある。

影響を受けるのは、多数の固定資産を保有する重厚・インフラ業界だけでなく、賃貸借や借地等を多用している小売業や新興企業に及ぶ可能性もある。日本国内で09年度に早期適用した日鉄鉱業や静岡鉄道は該当法令のほか、賃貸借契約終了時の原状回復費用などを計上している。

IFRSでは、こうした資産除去債務に関する会計処理は主に「固定資産に関する会計処理」(IAS16号)等として、ほぼ同様の会計処理が行われる。

相違点としては、IFRSでは毎年の見直しが求められるほか、割引率や利息調整費の科目が異なるうえ、将来費用の見積もりにおいても、原則として公正価値(期待値等)で求めることとしている。

また、作業ベースの相違では、対象となる固定資産の範囲や区分が広がる可能性がある。IFRSで固定資産の計上に適用されるコンポーネント・アプローチ(注)によって、設備の躯体と付属設備など、耐用年数が異なる重要な資産について個別に資産除去債務を計上する可能性もあるためである。

いずれにしてもコンバージェンスとしての資産除去債務の準備と体制整備がスタートラインとなる作業といえるだろう。


資産除去債務の日本基準とIFRSの主な違い

  日本基準 IFRS
資産除去債務の見直し 重要な見積もりの変更時 毎期、最善の見積もり
割引率 リスクフリーレート 貨幣の時間価値、負債特有のリスクを反映した割引率
割引率の見直し 将来キャッシュフローの見直しを行ったとき 毎期見直し
割引前将来キャッシュフローの見積もり 最頻値または期待値 原則として公正価値(期待値等)
時の経過による調整費のPL上の表示 減価償却費(営業費用) 財務費用(営業外費用)

(出所)各種資料よりみずほ情報総研作成


(注)資産のなかで躯体と付属設備など重要なものをその機能別に区分して、それぞれの経済耐用年数に応じて償却処理を求めるもの。これまで税法上の法定耐用年数を使用することが多かった国内企業では、経済耐用年数の設定など実務上の手続きが必要になる可能性が高い。


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