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流動・固定負債項目に資産除去債務が追加

財務諸表規則の変更

2009年2月17日
みずほ情報総研株式会社 環境・資源エネルギー部 チーフコンサルタント 光成 美樹

2008年12月、上場企業が対象となる金融商品取引法(旧証券取引法)の「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則等の一部を改正する内閣府令」が改正され、国際会計基準とのコンバージェンス項目に向けた表示の変更が明示された。注目すべき変更のひとつとして、2008年3月末に公表された資産除去債務に関する会計基準の新規適用に伴い、貸借対照表の流動負債、固定負債の科目に「資産除去債務」が追加された点があげられる。資産除去債務に関して注記する内容が明示され(文末参照)、さらに、純資産及び負債合計額の1%を超える資産除去債務がある場合には、資産除去債務に関する附属明細表を作成することを規定している。

これにより資産除去債務が上場企業の財務諸表においてどのように記載されるのか、その位置づけが明確になった。2010年4月1日から始まる会計年度に適用されるが、それ以前の会計年度における早期適用も可能としている。

≪貸借対照表のイメージ≫

貸借対照表のイメージ

資産除去債務に関する会計基準は、見積もりができない場合の規定が示されていることや、2002年から資産除去債務に関する会計基準が適用されている米国企業での開示にばらつきがあることなどから、国内では債務の認識や計上に向けた取り組みがあまり進んでいなかった。実際に、2005年12月以降解釈指針FIN47によって条件付資産除去債務の解釈が明確化された米国でも、債務の計上や開示に費やす累積作業時間が、調査対象企業の間で数時間から数千時間まで開きがあることが報告され、同業・同規模の企業においても重要性のあるなしによって開示の範囲や規模に差異があるなど、比較評価等も難しいことが指摘されている。実際に、個別性の高い有形固定資産については資産除去債務の見積もりが難しい場合も多く、資産のスクリーニングや開示の範囲に判断も難しいといわれてきた。

しかしながら、今回の金融商品取引法規則の改正によって、日本国内の上場企業の財務諸表(有価証券報告書)のフォーマットが変更されることになったため、最終的なアウトプットのイメージを持ちながら作業の開始を進められることになるだろう。金融商品取引法は、いわゆるJ-SOX法として知られる国内での内部統制強化として財務諸表に関する適切なプロセスや文書管理を要求する法律であり、財務諸表に対する経営責任を強化したものである。今回の資産除去債務に関する計上のプロセスや根拠文書等も会計監査等の対象になるため、企業の財務報告の観点から統一性・網羅性をもった債務認識、見積もり、開示が必要になる。

一方、企業の内部監査においても、新たな会計基準にむけた方針が示されている。2008年9月に社団法人日本監査役協会から公表された「会計基準の国際化に伴う企業への影響と監査役の実務対応 その2」では、資産除去債務に関する経営上の影響に加え、内部監査役の視点として以下の4点をあげている。

≪資産除去債務に関する内部監査の着眼点≫

  1. 1.資産除去債務の対象となる、法令または法律上の義務と同等の不可避的な義務をすべて洗い出して適用対象を定め、適切に除去債務を計上しているか。また毎期適切に見直しているか(賃借建物の原状回復義務については対象企業が広範囲に及ぶことが予想されるため、特に留意すべきである。)
  2. 2.除去債務の見積もりは適当か。また合理的に見積もりができない場合は、合理的に見積もることができるようになった時点で計上することにとなっているが、その判断は妥当か。
  3. 3.法令等の改正の動向を把握し、将来発生するかも知れない資産除去債務に備えているか。
  4. 4.注記内容は適切か。

出所:社団法人日本監査役協会 会計委員会、「会計基準の国際化に伴う企業への影響と監査役の実務対応 その2」2008年9月29日

資産除去債務によって重要な財務影響がある場合には、4半期開示においても情報開示が求められる。このため、2010年4月から会計年度が始まる企業においては、2010年8月頃に実施される第一四半期の財務報告において情報開示をすることとなり、実質的な作業期間は1年半程度となっている。海外資産を含めた除去債務の計上には最低数ヶ月がかかることが予想される上、国内外の法改正等の影響も考慮する必要がある。たとえば、土壌汚染対策法は有形固定資産の債務性評価をするスクリーニングの範囲に影響するが、会計基準の適用時期にあたる2010年度は、同法の改正案の施行も予定されているため、注意が必要である。すでに作業を開始している企業もあるものの、大部分の上場企業においては、現在社内体制の整備に向けた準備段階にあることが予想される。4月から会計年度が始まる企業では、準備が急がれるだろう。

≪資産除去債務に関する注記≫

第八条の二十八 資産除去債務については、次の各号に掲げる資産除去債務の区分に応じ、当該各号に定める事項を注記しなければならない。ただし、重要性の乏しいものについては、注記を省略することができる。

  1. 資産除去債務のうち貸借対照表に計上しているもの 次のイからニまでに掲げる事項
    1. 当該資産除去債務の概要
    2. 当該資産除去債務の金額の算定方法
    3. 当該事業年度における当該資産除去債務の総額の増減
    4. 当該資産除去債務の金額の見積りを変更したときは、その旨、変更の内容及び影響額
  2. 前号に掲げる資産除去債務以外の資産除去債務 次のイからハまでに掲げる事項
    1. 当該資産除去債務の金額を貸借対照表に計上していない旨
    2. 当該資産除去債務の金額を貸借対照表に計上していない理由
    3. 当該資産除去債務の概要

≪参考≫

金融商品取引法(旧証券取引法)「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」(昭和三十八年十一月二十七日大蔵省令第五十九号)最終改正:平成二〇年一二月一二日内閣府令第八〇号

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