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半導体製造装置におけるVirtual Metrology(仮想計測)の技術動向

  • *本調査を実施するにあたり株式会社半導体先端テクノロジーズ様に技術的な協力を頂きました。

2011年10月20日
みずほ情報総研

1.はじめに

本書は半導体製造装置で用いられるVirtual Metrology技術の現状および現状の課題をまとめたものである。

2.Virtual Metrologyとは

製造工程におけるインライン計測は、製品の品質保証のために必要であるが、半導体製造工程において製品を全数計測することはコスト増加とサイクルタイムが長くなるという点において困難であり、サンプリングを行い製品の一部を計測している。Virtual Metrologyとは半導体製造装置/プロセスパラメータおよび製品に関するコンテキスト情報、それ以前の工程の情報などを活用して、実際に計測を行わずウエハの加工特性を予測するものであり、Virtual Metrologyにより計測コストを増加させることなく、仮想的に全数検査を実現することができる。

図1 Virtual Metrologyにおける工程の流れ

図1

3.Virtual Metrologyの導入メリット

Virtual Metrologyの導入は2つの側面がある。

  • 実測が困難なものを測る(今まで計れなかったものが測れるようになる)
  • 実測を置き換える

測定が困難な測定値(例えば、破壊検査である、測定手段が無いもしくはあっても非常に難しい、インライン計測ができないなど)の場合、測れない(または測ることが非常に困難な)値を新たに測れるようになり、新たな検査項目を追加できるというメリットもある。

また、実測をVirtual Metrologyに置き換えることには以下のメリットがある。

  • 低コスト化
    • 計測回数が減ることで計測コストを削減、計測装置の数が減ることで装置投資を削減。
  • サイクルタイム短縮
    • 全工程の30-40%といわれている計測時間の削減。
  • 品質向上
    • 従来のサンプリングによる計測では困難であった全wafer検査を行えるようになることで、wafer-to-wafer制御が可能となり加工特性ばらつきを低減。

品質向上のメリットとしてあげたwafere-to-wafer制御では、waferごとに予測された値を用いて規格値管理が行なえるようになり、従来のlotごとの規格管理に比べより細かな精度で規格値管理が可能となり、管理精度の向上を図ることが可能である。

現在の製造装置は非常に複雑で、装置の健全性の監視、出来上がる加工品質の管理内容が非常に高度化している。そのため、装置における品質保証を行なうためには装置データを用いて、装置機能の健全性にはじまり装置内部状態の物理的にきちんとした把握を階層的に積み上げ、最終的に加工品質を保証するモデルが必要とされている。

装置データを用いた階層的な装置管理では、はじめに装置機能が正常に機能しているかどうかの装置機能の健全性の管理が必要となる。これに基づき装置制御の健全性の管理が行なわれる。その上で、加工品質の健全性の管理を行なう。Virtual Metrologyは装置データを利用した加工品質の管理を行なう1つの機能に位置づけられる。

図2 階層的な装置品質管理におけるVirtual Metrologyの位置づけ

図2

4.Virtual Metrology技術の俯瞰

Virtual Metrologyが解決すべき現状の半導体製造に関する課題、必要とされる機能、活用先をVirtual Metrology技術の俯瞰図として図3に示す。

Virtual Metrologyが登場した背景として、現状の半導体製造の「計測・検査」と「装置制御」に関する課題を解決することへの期待があげられる。

図3 Virtual Metrology技術の俯瞰図

図3

  • *Selete生産システム技術プログラム参加社(当時)のご了解を得て掲載

Virtual Metrologyに必要とされる機能は、予測モデルを作る「モデル構築」と実際に予測モデルを使用し予測を行う「モデル運用」に大きく分けられる。「データ収集」はVirtual Metrology実現に必要とされるインフラ的な機能である。Virtual Metrology実現のため多種のデータが一元管理されて、容易に利用できる環境が整備されている必要がある。

モデル構築

「データ前処理」

装置ログやセンサデータなど大量のデータ項目の中から、統計解析の寄与率などを元に予測したい計測値に影響が大きい特性のデータを絞り込む。

「予測モデル作成」

予測モデル作成では、説明変数と計測値との関係を求める予測モデルを統計的な手法、物理的な関係に基づく手法を用いて構築する。予測モデルは予測誤差の小さいモデルを構築することはもちろんであるが、故障、メンテナンス、製品の切り替え、レシピ変更などに対応した予測モデルが必要であり、そのためには装置データ以外にも広くデータを利用する必要がある。

「運用ルール作成」

作成した予測モデルやデータ前処理方法の運用ルールを決める。同一のモデルパラメータを用いてよい製品やレシピの範囲など、予測モデルの適用範囲を明確化する。また、装置状態は常に変化するため予測が適切な値かどうか実測値などを用いて監視を行い、必要に応じてパラメータ値などを更新する必要がある。モデルパラメータ更新タイミングの決定方法をルール化しておく。

モデル運用

「データ前処理」

モデル構築における「データ前処理」で検討したデータの前処理を実施するのが「データ前処理」である。装置データは、データに対するタイムスタンプ、装置イベントデータと連動して処理単位の切り出しを行うことが必要となる。この時データの異常値を削除する必要がある。

「予測」

モデル構築における「予測モデル作成」で構築した予測モデルを使って実際に予測を行うのが「予測」である。プロセス結果である膜厚やエッチ量等を予測する。この時、多品種生産を行なう場合には、品種ごとにモデルを切り替えるなど、多品種に対応できるよう注意を払う必要がある。

「モデル更新」

モデル構築における「運用ルール作成」で検討したルールに従い、モデルパラメータの更新や再学習やモデル自体の更新を行う。

上記機能を用いて求めた予測値は、実計測値と組み合わせて「APC(Advanced Process Control)」や「FDC(Fault Detection)」、「SPC(Statistical process control)」などに利用される。将来は製品の「最終特性の予測」や「遠隔診断」に利用することが期待されている。

Virtual Metrologyという言葉は2003年ごろから使われるようになった。まだ、登場してからの期間が短く現在の時点でVirtual Metrologyは完成された技術ではないが、現時点で予測されるVirtual Metrology技術の発展を図4にまとめた。

図4 Virtual Metrology技術の発展

図4

  • *Selete生産システム技術プログラム参加社(当時)のご了解を得て掲載

Virtual Metrologyの実現が進んでいる企業としてパナソニックが上げられる。Virtual Metrologyの結果を製造装置の制御変数(主にプロセス時間)にフィードバックするVM-APCをプラズマエッチング装置(予測値:パーティクル数、エッチング速度)、成膜装置(成膜速度)、CMP装置(研磨速度)、めっき装置(めっき液の劣化度)の単工程で実現したとしており、図4の3.の量産工場への展開(単工程)に相当する。

5.Virtual Metrologyの課題―物理的な理解に基づいた予測モデルの重要性

現在の予測モデルは統計的なモデルが中心であるが、統計的なモデルは精度が保証できる予測範囲がモデル構築に使用したデータの範囲であり、適用範囲が狭いという問題がある。学習の段階では相関係数が0.9以上といった精度の良い予測モデルを構築できるようになってきているが、実際の予測を行った場合、装置メンテナンスを行った場合や装置パラメータが大きく変動するような場合予測精度が落ちる。これは予測できる状態の範囲が狭いとも言える。量産ラインに適用し実用化するには、より広い範囲で汎用的に予測が可能な予測モデルが必要となる。

以上の課題を解決するためには、装置内の物理現象を解明し、装置内の物理的な理解に基づいた汎用的な予測モデルが必要になる。装置内物理に基づいたモデルを構築するためには物理法則に基づいた変数間に存在する関係や装置エンジニアの知見などを組み合わせ簡易な数式で表現(モデル化)し統計的モデルに組み込む必要がある。

図5 統計モデルから装置内物理に基づいたモデルへ

図5

装置内を詳細にモデリングしたものとして数値シミュレーションが上げられる。数値シミュレーションでは装置内の時間的・空間的な物理量の変化を数値モデルを用いて高精度に計算することができるが、計算時間が長く、装置内の現象の特定(一部)部分をモデル化していることが多いため、直接予測モデルとして用いることは難しい。そのためシミュレーションモデルを参考とし装置特性をより簡易な式で記述した予測モデルを構築することや、数値シミュレーション結果を予測モデルの構築/検証に利用することが期待される。

図6 シミュレーションによるエッチング形状予測(左:シミュレーション、右:実測)

図6

  • *本結果は文部科学省・ナノテクノロジー総合支援プロジェクト ナノプロセシング・パートナーシップ・プログラム(NPPP)のもと独立行政法人産業技術総合研究所(AIST)・ナノプロセシング施設(NPF)のご協力をいただき、実施しました。

6.まとめ

半導体製造装置におけるVirtual Metrologyの技術動向について調査を行った。Virtual Metrologyは実計測の代替としての利用と、実測が困難なものを測るという2つの側面がある。Virtual Metrologyを導入することで計測や装置制御に関するコストの削減、サイクルタイムの短縮、品質向上を図ることができる。

今後、Virtual Metrologyが量産ラインに適用され広く普及するには課題がある。その課題は、現在予測モデルの中心である統計的なモデルは精度が保証できる予測範囲がモデル構築に使用したデータの範囲であり、適用範囲が狭いという点にある。そのため、装置内部の物理現象を解明し、物理的な理解に基づいた汎用的に予測が可能な予測モデルが重要となる。

製造装置は非常に複雑となり、装置の健全性監視、出来上がる加工品質管理が非常に高度化している。そのため、装置品質管理を行なうためには、装置内部状態の物理現象の把握を階層的に積み上げ品質を管理するモデルを確立することが重要となる。「加工品質の健全性」の管理に対して、Virtual Metrologyを用いることで、品質管理のコストを大幅に削減し、管理精度を大きく向上できる可能性がある。みずほ情報総研ではVirtual Metrology実現の課題である、物理的な理解に基づいた汎用的な予測モデルの構築に対して、数値シミュレーション技術を役立てることで、複雑化する製造装置による半導体製造の品質向上に貢献していきたい。

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