社会動向レポート
―「節電に関する行動・意識調査」の結果から―
生活者はどのくらい節電に取り組んだのか(1/2)
環境・資源エネルギー部 コンサルタント 藤原 和也
当社が実施したアンケートによると、節電行動は震災後、急速に普及したが、2012年夏は実施率が後退する可能性がある。また、節電の負担感は行動を妨げ、節電の有効感は行動を促す要因になっていることが示唆された。
1.はじめに
東日本大震災の影響を受けて、2011年夏には、東京電力・東北電力管内で深刻な電力不足が予想された。このため政府は、「前年比マイナス15%」という節電目標を設定し、各主体に大規模な節電行動を呼びかけた。家庭においても積極的な取り組みが行われた結果、東京電力管内での家庭における電力需要の削減量は、ピーク時で11%減、8月の販売電力量で17%減となり、大幅な節電に成功した(1)。
では、生活者はどのような対策に、どの程度取り組んだのだろうか。当社では2011年6月および9月に、家庭での節電に関するアンケート調査を実施し、節電への取り組み状況や、節電に対する生活者の考え方について実態把握を試みた。本稿では、この調査結果を元に、2011年夏の生活者の取り組みの実態、および2012年夏に向けた取り組みの意向について見ていきたい。
2.調査の概要
アンケート調査は、民間の調査会社に依頼しWebアンケート方式で実施した。第一回調査は2011年6月に実施し、東京電力管内に1年以上居住する成年男女を対象とした(有効回答は897)。第二回調査は2011年9月に、第一回調査の回答者を対象(第一回調査の後、東京電力管内から転居した回答者は除く)に調査を実施した(有効回答は725)。
調査では図表1に掲げる14の行動(2)について、その取り組み状況を尋ねた。第一回調査では、エアコン以外については「震災以前から取り組んでいる」、「震災を機に取り組むようになった」、「取り組んでいない」の3段階で、エアコンについては前年(2010年)の取り組みについて「取り組んだ」、「取り組まなかった」の2段階で尋ねた(3)。第二回調査では、それぞれの行動の7~8月における取り組みを、「実施した」、「実施しなかった」の2段階で尋ねた。また、生活者の行動に影響を与えている因子を調べるため、節電行動全般に対する考え方についても尋ねた。具体的には、節電の負担感や電力不足解消に対する有効感について、「非常にそう思う」、「どちらかと言えばそう思う」、「どちらかと言えばそう思わない」、「まったくそう思わない」の4段階で尋ねた。
3.調査結果
3-1.節電への取り組み状況化
東日本大震災を機に節電行動は急速に広まった
震災前後における各節電行動の実施率の推移を図表2に示す。
まず注目すべき点は実施率の変化である。冷蔵庫と炊飯器に関する取り組みを除くと、震災後の6月の実施率は震災前を1~3割ほど上回っており、その後の夏の間(7~8月)も、実施率はあまり低下せず、6月時点と同程度の水準であった。特にエアコンと照明では、震災後の実施率は非常に高くなっていた(エアコンでは80%~85%、照明では79%~96%)。これらの結果は、震災をきっかけとして、エアコンや照明を中心に節電の取り組みが急速に拡大し、かつ夏の間も取り組みが継続されていたことを示している。複数のメディアを通じて節電の必要性が伝えられたことで、生活者の心理に大きな変化が生じたものと考えられる。
一方で、冷蔵庫と炊飯器に関する節電では、2011年6月時点の実施率は震災前を上回ったものの、2011年7~8月の実施率は震災前の水準に戻っていた。7~8月に冷蔵庫の節電に取り組まなかった理由を見ると(4)、「冷蔵庫の温度調節は食べ物に影響すると思う」という意見が挙げられていた。このことは、節電の取り組みが暮らしの質(ここでは安全に食材を保存すること)に影響を及ぼす場合には、取り組みにブレーキがかかる可能性があることを示している。節電の普及や定着を図る際には、節電が暮らしに与える影響を軽減したり、解消したりする方法について生活者に伝えておくことが重要だと考えられる。
図表1 アンケートで対象とした節電行動種類
図表2 震災前、震災後(2011年6月、2011年7~8月)の節電行動の実施率
来夏は実施率が低下する可能性も
2011年7~8月には多くの生活者が節電に取り組んでいたが、この取り組みは今後も継続すると考えて良いのだろうか。第二回調査(2011年9月に実施)では、2012年夏の節電への取り組み意向を尋ねた。取り組み意向は、「電力が不足するかどうかに関係なく取り組むと思う」、「電力不足になるなら取り組むと思う」、「取り組まないと思う」の3段階で尋ねた。2012年夏の取り組み意向と、2011年夏の実施状況とを、図表3に示す。
エアコンと照明を除けば、2012年夏に電力不足に関係なく取り組むとした人の割合は、2011年夏の実施率と同水準であった。一方、エアコンと照明では、2012年夏に電力不足に関係なく取り組むとした人の割合は、2011年夏の実施率を大きく下回っていた(エアコンで14~15ポイント減、照明で5~9ポイント減)。このことから、エアコンと照明については、2012年夏に電力需給が緩和された(と生活者が感じるようになった)場合には、2011年夏ほど高い実施率を期待できない可能性が高いと言える。これは、2011年夏時点で、取り組みの重要度が高いとされたエアコンの節電や、比較的容易に取り組める照明に関する節電について、ある程度無理をして取り組んだ生活者がいた可能性を示すものとも考えられる。
図表3 2012年夏における節電への取り組み意向
エアコンの節電について詳しく見る
夏季ピーク時における家庭での電力需要のトップはエアコンであり(53%)(5)、エアコンでの節電が電力需要削減に果たす役割は大きい。また、前項で見たように、エアコンの節電実施率は、今後は後退する可能性も示唆されている。このため以下では、エアコンの節電について、より詳しく見ていくことにする。
まず、第一回調査(2011年6月に実施)の結果を用いて、エアコンに関する節電行動(6)について、震災前の取り組み状況と、2011年夏に向けた取り組み意向から、生活者を3グループに分類した(図表4)。次に、第二回調査(2011年9月に実施)の結果から、各層の2011年夏の取り組み状況と、2012年夏に向けた取り組み意向をみた。その結果を図表5に示す。
いずれの行動でも、もっとも数が多いのはベテラン層であり、そのうち9割の人が意向どおり節電に取り組んでいた。2012年夏についても、およそ8割の人が電力不足に関係なく取り組むと回答した。これらのことから、エアコンの節電は、ベテラン層にとってはごく自然に取り組める行動として定着しているものと考えられる。
次に数が多いのはチャレンジ層であり、およそ8割の人が意向どおり節電に取り組んでいた。前の年に取り組まなかった人も、その多くが諦めずに節電に取り組むことができたものと考えられる。これは、節電の必要性が伝えられたことに加えて、エアコンに頼らない涼み方や関連商品に関する情報が、さまざまなメディアを通じて数多く届けられたことも、効果的だったと考えられる。
非協力層でも半数近くの人が(夏前の意向に反して)節電に取り組んでいた。2012年夏についても、およそ3割の人が無条件で取り組む意向を示した。もともと節電への取り組み意向を示していなかった非協力層が、実際には取り組むようになった動機については、今回のアンケートからは有益な情報が得られなかった。こうした情報を明らかにできれば、節電の一層の普及に向けたヒントを探ることができると考えられる。
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