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製品含有化学物質管理の体制構築に注力し、グループ展開を目指す、株式会社IHI

株式会社IHIロゴ

1853年の石川島造船所創設以来、多角的事業を展開する株式会社IHI。いまや、連結従業員数26,915名、連結売上高1兆2,218億円(2012年3月現在)と、名実ともに日本の産業界をリードする一大企業である。資源・エネルギー事業から、船舶・海洋事業、社会基盤事業、物流・産業機械事業、回転・量産機械事業、航空・宇宙事業、その他ディーゼルエンジンや農業機械の開発・製造等に関する事業まで、多岐に渡る事業を展開する同社は、日本だけにとどまらず、世界中にその活躍の舞台を広げている。

それだけに、対応しなければならない法規制も多い。とりわけ、近年では欧州を起点に世界中で製品環境規制が拡大していることから、同社も各環境規制への対応に傾注している。その同社が、2010年より万全の体制で環境規制に臨むために採用しているのが、みずほ情報総研が提供する「製品含有化学物質管理コンサルティング」サービスである。

事業に根ざしたCSR活動

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株式会社IHI
CSR推進部
環境グループ 部長
高橋 毅氏

IHIでは、2010年4月にコンプライアンス、環境管理の担当部門を統合し、CSR推進部を設置、IHIグループ全体としてのCSR活動の推進に取り組んでいる。同社 CSR推進部 環境グループ 部長の高橋 毅氏は、「IHIグループの『技術をもって社会の発展に貢献する』『人材こそが最大かつ唯一の財産である』という経営理念と、その経営理念をもとに策定されている基本行動指針に、当グループのCSRの概念が網羅されています」と話す。

「これまでの安全管理や環境管理のような守りのCSRだけではなく、お客さまに対して何が提供できるかを事業のなかで実現していくことこそが、我々のCSRではないかと考えています。身近な環境対策から取り組むことも重要視しており、生産拠点を基軸としたCSR活動も展開しています」(高橋氏)。同社では、2010年のCOP10(生物多様性条約第10回締約国会議)開催を契機に、愛知県知多市にある愛知事業所において、生物多様性保全活動の取り組みを開始。同事業所が保有する緑地にどのような動植物が生息しているかなどを確認する生態系の現地調査を、NPOや近隣企業とともに実施しているという。

同社では、グループ経営方針を踏まえて3カ年の環境活動の中期計画を策定し、23のテーマを掲げているという。今年度については、そのうち省エネ、温暖化対策推進、製品含有化学物質管理、製品の環境配慮の4つを重点課題として取り組んでおり、中でも、製品含有化学物質管理に関しては、IHIグループの事業活動で使用されるすべての化学物質情報を把握する仕組みを構築し、管理するという目標を掲げている。

製品含有化学物質管理への取り組み

重要課題として取り組みを開始した製品含有化学物質管理について、高橋氏は「RoHS指令やREACH(*)など、外部からの様々な規制が膨大に増えていることを実感しています。従来は、工場長の責任下で工場もしくは生産拠点単位で完結していたことが、役員の責任のもと、会社単位で報告書を提出しなければいけないという機会が増えてきました。また、お客さまからの個別の要求事項も増えており、設計から調達、営業開発など、組織として横断的に対応しなければ回答できないような時間のかかる調査も増えてきていると感じています」と話す。

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株式会社IHI
CSR推進部 環境グループ
松井 るり子氏

2008年のREACHの予備登録が、同社が製品含有化学物質管理に取り組むきっかけになったという。「予備登録が必要な製品を製造するのは、グループ内で1社のみでした。しかし、これをきっかけに製品に含まれている化学物質を把握し管理しなければならないという危機感を抱いたのが発端です」と、同環境グループの松井 るり子氏は当時の状況を振り返る。同社は翌2009年に、事業区分ごとに各社から選出された責任者13名による化学物質管理の準備会を設置した。「当初は、責任者が準備会で学習したことを各社に展開するという構想を立てていたのですが、実際に始めてみると、何をすればよいのかわからないという戸惑いの声が多く聞こえてきました。事業が多岐に渡るだけに、業種や取引先によって、化学物質管理への対応を迫られている部署とそうでない部署の差があったことが原因です。そのために、危機感の持ち方も各自異なっていたようです」(松井氏)。

そこで、まずは具体的な取り組みを進めることで、化学物質管理のイメージを膨らませてもらう必要があると考え、製品含有化学物質情報の伝達書式に関する実務者講座を開設することにしたという。「業務上、化学物質管理に携わったことのある社員もいましたが、ほとんどの人が伝達書式の作成経験がありませんでしたので、みずほ情報総研にお願いして、伝達書式を学ぶ講座を実施しました」(松井氏)。

また、講座の開設と合わせて、取引先から製品含有化学物質に関する問い合わせを受けたことがあるか、その際、適切な対応ができているかなどについて調査を実施したという。「調査の結果、残念ながらお客さまに十分な回答ができていないということがわかりました。そこで、特定の事業セクターをモデルケースとして製品含有化学物質管理の体制を整え、それを契機にグループ内の取り組みを推進していこうと計画しました」(松井氏)

IHIスターでのトライアル

IHIグループにおける製品含有化学物質管理体制構築のモデルケースとして選定されたのが、北海道を拠点とする株式会社IHIスターである。同社は、水田・畑作から酪農・畜産用の農業機械の製造会社で、製品は国内にとどまらず、海外にも輸出されている。

「IHIスターでは千歳工場において製品を一貫して製造しているため、比較的、製品含有化学物質の管理がしやすいという環境にありました」と松井氏は選定理由について述べる。「所管する事業本部のトップの意向もありました。お客さまの信頼に応えるためにも、早急にプロセスを策定する必要がありました」と高橋氏も当時を振り返る。

IHIスターにおける製品含有化学物質管理体制は、同社の担当者2名と高橋氏、松井氏が中心となり、みずほ情報総研のコンサルティングのもと、2011年の夏から約半年をかけて構築された。プロジェクトの推進に当たっては、営業から設計、材料調達、製造および品質保証といった社内関連部門の業務フローに関わる全ての部署が参加したという。コンサルティングの内容は、全10回のミーティングを通じて、各部署の担当者から個別にヒアリングを行い、詳細なフィードバックを実施することで、社内での情報管理および伝達の仕組みを見直し、管理体制の構築を支援するというものだ。松井氏によると、外部のコンサルタントが介入することで、ヒアリングやフィードバックがスムーズに行われ、各部の担当者が認識を新たにしていく様子が見て取れたという。

IHIスター内での化学物質管理に対する意識は、日を追うごとに高まり、プロジェクトの中盤では、社長や役員が取り組みを審査する工程を設けたり、構築後には自ら3カ年計画を立ち上げるなど、自発的な動きが出てきたという。結果、同社の製品含有化学物質の情報管理ならびに伝達の仕組みは、顧客からも評価を受けるほど適切なものに仕上がった。

「アーティクルマネジメント推進協議会(JAMP)において、製品含有化学物質管理の分野の最前線で活動しているみずほ情報総研の専門家からアドバイスを受けることで、取り組み方がわかったことが、功を奏したと思います。他業種の取り組みもご存知ですし、非常に参考になりました」と、高橋氏は今回の取り組みが成功裏に終わった理由を分析する。

化学物質管理への飽くなき探究心

1社目であるIHIスターでの体制構築は一旦完了したが、今後はグループ全体に対してどのように取り組みを進めていくのだろうか。「グループ内への展開については、事業ごとに生産体制などが異なるため、事業セクターごとに体制を構築するのが一番効率がよいと考えています。今後もIHIスターのように、個々で体制を確立するという形態で推進していきます」(高橋氏)。

IHIスターでの成功を受け、同様に農業機械を製造する株式会社IHIシバウラからも、製品含有化学物質管理体制を構築したいという声が上がっており、7月からプロジェクトを開始するという。また、自動車メーカーを顧客に持つ事業セクターからも、体制構築の支援について相談を受けているという。

「まだまだ、お客さまからの要望事項にようやく応えられている段階です。人に依存している部分が多いので、次のステップとして、組織として対応できる仕組みづくりをしていきたい。そして、いずれはシステムを導入して数値的・客観的な評価を組み込んでいきたいと考えています。当社は、航空機のエンジンや農業機械、自動車用過給機、産業機械設備など、グローバルに展開している事業も多いので、きちんとプロセスを確立させたいですね」と高橋氏は今後の意気込みを語った。

グループ各社における化学物質管理の体制構築にとどまらず、システム導入など次のステップも視野に入れているIHI。その姿勢からは、製品含有化学物質管理体制の構築に懸ける強い意志が感じられる。


  • *RoHS指令:リサイクルを容易にしたり、埋立てや焼却処分の際に人の健康と環境に影響を与えないようにするために、電気電子機器における特定有害物質の最大許容濃度を定めた欧州連合(EU)の指令。REACH:EUの総合的な化学物質管理制度。成形品(自動車、電子機器、家具、衣類など)に含有される物質も対象となる。EU域内の製造者や輸入者に対して、物質の登録が義務づけられ、成形品についても、欧州化学品庁への届出や供給先への情報提供、消費者からの要求に対応した情報提供が課せられる。
  • *この記事は、2012年6月の取材をもとに作成したものです。

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担当:広報室
電話:03-5281-7548

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