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JR東日本、グループ環境経営の推進により各社の環境意識の底上げを実現

JR東日本

JR東日本グループは、日本最大の鉄道会社である東日本旅客鉄道株式会社(以下 JR東日本)が展開する運輸事業を主軸に、「エキナカ」と呼ばれる駅スペースの活用事業や、駅ビル開発などのショッピング・オフィス事業、鉄道事業との高い相乗効果を生み出すホテル事業など、多岐にわたる事業を展開。グループ企業72社が一丸となって、「地域に生きる。世界に伸びる。」をコンセプトに、地域と連携しながら、駅を中心とした魅力あるまちづくりを推進している。

1987年の国鉄改革以来、JR東日本が重要な経営課題として掲げているのが地球環境問題への対応である。1992年にはエコロジー推進活動の基本理念と基本方針を制定し、1996年からは行動指針を定めて具体的な環境活動に取り組んでいる。環境マネジメント体制としては、1992年に代表取締役社長を委員長とする「エコロジー推進委員会」を設置し、事業活動に伴う環境負荷の調査や環境保全活動などを実施してきた。2010年7月には、同委員会での決定事項をより具体的な行動に移すことを目的として「環境経営推進室」を発足させ、グループ各社が環境活動に積極的かつ長期的に取り組む体制を構築した。これにより、リサイクルを中心とした従来の取り組みだけでなく、エネルギー問題への対応や、こどもたちを対象とした環境教育の提供、生物多様性の観点からのふるさとの森づくりや鉄道林の整備など、地域に根付いた幅広い活動へと範囲を広げている。

環境への取り組み達成度を数値化により把握

環境経営推進室を設置した2010年、JR東日本は、グループ一体で環境経営を推進していくための方策として、みずほ情報総研が提供する「グループ環境マネジメント強化ツール」を導入した。なぜ、ツールの導入が必要だったのか、またツールの導入によってどのような効果が得られたのだろうか。

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東日本旅客鉄道株式会社
総合企画本部
経営企画部
環境経営推進室 課長
入江 洋 氏

同社 総合企画本部 経営企画部 環境経営推進室課長の入江 洋氏は、「従来の環境対応においては、業種や業態、会社の規模や体力など、グループ各社のばらつきがあるにも関わらず、エコロジー推進活動の基本理念や基本方針に則り、各社で戦略を立てるようにという、ともすれば曖昧な指示のもと取り組みを行っていました」と、当時を振り返る。本社から全体的な指針を示すことで方向感の統一・共有はできても、それを具体的にどのような行動に落とし込むか、それをどのような体制で推進していくかについては、各社の裁量に任せられていたのだという。

そこで、環境経営推進室が中心となって、グループ全体の環境マネジメントを強化し、各社の環境意識の底上げを図ろうと考えた。しかし、グループ企業といっても業種や業態が多岐に渡るため、当初はどこから手をつけてよいのかわからない状況だったという。「グループ各社の環境に対する意識を向上させるためには、定性的な取り組み事項を提示するだけではなく、その進捗状況を測る定量的な指標を置くことが必要ではないかと考え、みずほ情報総研が提供するグループ環境マネジメント強化ツールの導入に至りました」と、入江氏は導入当時を振り返る。

同ツールはチェックリスト形式になっており、JR東日本グループ向けのカスタマイズが行われている。各評価項目は、達成度合いの段階に応じて評価する。たとえば、法規制での要求を満たすレベルは1、ISO14001の要求事項レベルは3という具合だ。各社がチェックリストを用いて自己評価を行い、それに基づいて、みずほ情報総研が評価資料を作成し、フィードバックを行うという流れだ。各社は、チェックシートに答えていくだけで、現在自社がどの段階の達成度とステージにいるのか、また次にどのようなステップを踏めばよいかがわかるように構成されている。また、評価資料には、自社だけでなく、グループ企業全体、業種ごとの平均達成状況が一目でわかるレーダーチャートなども付いており、グループ内での状況比較が容易にできるようになっている。

「チェックリストには、業種・業態によっては該当しない項目も含まれていますが、内容を変えることはせず、必須項目/選択項目を設けることで、2010年以降、各社同じリストを使用しています。2012年度からは業種別のスコアリングに加えて、個社別の評価・コメントのフィードバックを実施しています。同業の中で自社がどの段階にいるかを数値で把握することができますし、経年比較も行えると考えたためです。実際、各社、次のステップに向けての力の入れどころが判ってきたようです」(入江氏)。グループ内や同業での比較により、他社の取り組みへの関心も高まり、情報交換に発展しているという。

導入から3年が経過した「環境マネジメント推進チェックリスト」は、各社にどのように受け止められているのだろうか。「ツールの導入当初から、特に混乱はありませんでした。むしろ、導入したことで、環境活動への取り組み方法が明確になり、どう進めてよいかわからないといったような悩みも解消されたようです。現在もチェックリストの項目や書かれている内容、評価方法について理解しきれていない面もあり、問い合わせもありますが、年1回開催している研修で、改めてみずほ情報総研のコンサルタントの方から使い方を説明していただいたり、マニュアルを基にして指導したりすることで、ツールの理解を深めてもらっています。使い方や受け取り方も各社バラツキがあるという点は今後の課題であると認識しています」と入江氏は話す。一方で、みずほ情報総研が作成する個社ごとの評価資料で各社の評価や改善すべき事項等を提供するようになってからは、自社の強みや弱みがより明確に把握できたと言う声や、分析結果をひとつの基準として経営戦略の立案にも活用していくといったような、ポジティブな意見も多く出てくるようになったという。同チェックリストの活用は、すでに同グループの環境マネジメントを進めるうえで欠かせないツールとなっているようだ。

各社によるチェックシートのスコアが、毎年全体的に右肩上がりで推移している以外にも、効果が出てきている。たとえば、2010年当初は、グリーン購入実施率100%を3年で達成する目標を立てていたが、2年弱と前倒しで達成することができたという。「事務用品の購入のみに止まる会社もあれば、資材まで範囲を拡大している会社などレベルに差はありますが、ツールの活用により、環境への意識が向上したことは間違いありません。その成果が、前倒しの達成につながったと理解しています。チェックリストにも当然、グリーン購入実施率100%という評価項目がありますので、それがモチベーションとなったのかもしれません」と入江氏は話す。また、日本有数のビジネス誌が主催する環境ランキングで、同グループの順位が上昇していることも、少しずつ効果が現れている成果のひとつではないかと考えているという。

新たな気づきにつながる同業他社との意見交換

JR東日本グループでは、エコロジー推進活動の基本理念や基本方針の浸透策の一環として、各社の環境担当者が参加する「グループ環境経営推進会議」を毎年開催している。同会議で「環境マネジメント推進チェックリスト」の結果もフィードバックしており、毎回テーマを決めて研修も実施している。「ツールの導入がもたらした利点は、曖昧模糊としたものをスコアリングにより可視化できたということだけではありません。各社が、グループの中の同業他社に目を向けるようになったということも、大きな収穫であると感じています。各社から、「他社でどのような活動を展開しているか情報交換したい」という声もあがってきましたので、2012年からは、業種ごとに分かれて研修を行っています。たとえば今年のプログラムでは、みずほ情報総研の担当者による先進企業の取り組み事例等のレクチャーと、参加者によるディスカッションの2部構成に変更しました。毎年の研修が、よいアイデアを探し求めるアンテナのような場になってきていると感じています」(入江氏)。ツールの導入により、各社の環境意識が確実に高まり、情報交換も活発に行われていることがうかがえる。

グループ環境マネジメントを統括する環境経営推進室にとっても、ツールを導入したことによる利点があったという。同室では、ツールの活用により、組織運営のノウハウが身に付いてきたことを実感しているという。また、入江氏は、環境経営の推進において、コンサルティングサービスを活用するメリットは大きいと述べる。「グループの事業が多岐にわたり、各社の規模や地域性の違いもあるなかで、各社の環境意識を底上げしていくことは大変であると日々痛感しています。当室だけでは人員が限られているということもありますが、みずほ情報総研にコンサルタントという立場でサポートしていただくことで、幅広い情報が入手できますし、新たな知識を吸収できるという利点がありますね」(入江氏)。

環境マネジメント推進チェックリスト(イメージ)
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グループ環境経営を取り巻く今後の課題と展望

現在、チェックリストのスコアが満点に近い会社がすでに全体の1割を占めるというJR東日本グループ。今後はどのような展開を計画しているのだろうか。入江氏によると、満点に近い会社もあれば、今後も努力を要する会社もあるため、達成状況の違いやばらつきにどのように対応していくかが、今後の課題であるという。「現状、満点のついた会社には、評価コメント欄により戦略的に取り組むためのアドバイスを付加したり、代替案を記載したりという方法を取っています。また、高スコアを獲得している会社をロールモデルにしようと、研修の場で事例紹介を行う機会を設けています。これは、今後も継続していきたいですね」(入江氏)。

また、ツール自体の見直しや新たな目標設定も視野に入れているという。「2012年からは個社別評価フィードバックを導入するとともに、評価項目、言い換えれば取り組み項目の優先順位情報を提供することで取り組み促進の活性化をはかるなど、ツールの活用方法も進化させてきました。今後は、まだ先になると思いますが、スコアが満点の会社が増えれば、業種別にチェックシートを用意するなど、業種ごとの指標を盛り込んでいきたいですね」(入江氏)。

JR東日本では、今後もグループが一体となって、各社の環境意識の向上や環境活動への取り組みを着実に進めていくという。全社を満点に導くことではなく、各社が常にレベルの向上を目指して努力を継続するように導くことが、同社のグループ環境経営の取り組みの特徴といえるだろう。JR東日本グループが、日本の企業において、グループ環境マネジメントのロールモデルになる日も、そう遠くない時期にきているのではないだろうか。

  • *この記事は、2013年8月の取材をもとに作成したものです。

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