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「多様な人材」の活用・処遇の実態と課題

「多様な人材が活躍できる働き方改革に関する研究会」の報告書を発表

2018年10月11日
みずほ情報総研株式会社

みずほ情報総研株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:西澤 順一)は、2017年10月から「多様な人材が活躍できる働き方改革に関する研究会―『同一労働同一賃金』の実現に向けて―」を発足し、2017年12月に「多様な人材の活用戦略に関するアンケート調査」を実施するとともに、その結果に基づく考察を行ってまいりました。このたび本調査に関する報告書をまとめましたのでご案内いたします。

労働力人口の減少という社会構造が変化するなかで企業が持続的に成長・発展していくためには、必要な量・質の人材を確保し、確保した人材のモチベーションの維持・向上を通じて定着を促進させなければなりません。「公正・公平な処遇制度」はその基盤となるものといえます。

本アンケートは、各企業における多様な人材の活用実態や処遇を明らかにし、働く者すべてに対する公正・公平な処遇の実現に向けた示唆を得るために実施したものです。アンケートでは、以下にみる5つの社員タイプを設定し、各社員タイプごとに「主に担当している仕事内容のレベル」「仕事内容レベル別基本給水準」等について分析しました。

図1


本アンケートにおける調査結果の概要は以下のとおりです。

【在籍者がいる社員タイプの組合せパターン】

  • 在籍者がいる社員タイプの組合せパターンは、「無限定正社員-フルタイム非正社員-パートタイム非正社員-嘱託社員」が最も多く39%、次いで「無限定正社員-限定正社員-フルタイム非正社員-パートタイム非正社員-嘱託社員」が19%であった。

【各社員タイプに担当させている仕事内容レベル】

  • 課長相当レベルを担当させている企業の比率は、「限定正社員」では17%、「嘱託社員」では25%である一方、「フルタイム非正社員」「パートタイム非正社員」ではともに5%を下回る。
  • 「限定正社員・嘱託社員」「フルタイム非正社員」「パートタイム非正社員」に担当させている仕事内容の平均レベルはほとんど重ならず、レベルが高い順に「限定正社員・嘱託社員」→「フルタイム非正社員」→「パートタイム非正社員」となる。

【社員タイプ別・仕事内容レベル別基本給水準(給与カーブ)】

  • 基本給水準について、係長相当以下の仕事内容レベルでは、「無限定正社員」と「限定正社員」「フルタイム非正社員」「嘱託社員」の間で、特に大きな差は生じていない。一方、課長相当以上では「無限定正社員」は他の社員タイプと比較して基本給水準が高い。
  • 「パートタイム非正社員」の基本給水準は、全ての仕事内容レベルで「無限定正社員」を下回る。
  • 「嘱託社員」の課長相当以上の基本給水準は仕事内容レベルに関わらず、ほぼ一定である。

【調査概要】

調査手法 紙媒体調査(郵送配布・郵送回収方式)
調査期間 2017年12月11日~12月28日
対象 「製造業」「小売業」「金融・保険業」「サービス業」各2,500社、計10,000社
有効回答数 581社

本調査では、5つの社員タイプを設定したうえで、仕事内容レベル、基本給水準、賞与支給状況等(*)に着目して分析を行い、主に「無限定正社員」とその他の社員タイプ間でこれらに差が生じているかどうかを確認した。

  • *調査の詳細をまとめた報告書では、基本給水準に賞与支給状況を加味した年収ベースでの分析も別途行っている。

【主な調査結果】

1. 在籍者がいる社員タイプの組合せパターン

  • 「無限定正社員-フルタイム非正社員-パートタイム非正社員-嘱託社員」が最も多く、次いで「無限定正社員-限定正社員-フルタイム非正社員-パートタイム非正社員-嘱託社員」であった。

図2

2. 各社員タイプに担当させている仕事内容レベル

  • 課長相当レベルを担当させている企業の比率は、「限定正社員」では17%、「嘱託社員」では25%である一方、「フルタイム非正社員」「パートタイム非正社員」ではともに5%を下回る。

各社員タイプに担当させている仕事内容レベル
図3

  • *「(無限定正社員を除く)各社員タイプが主に担当している仕事内容のレベルは、無限定正社員のどのレベル(等級)の仕事内容に対応しているか」を、該当する社員タイプが在籍している企業に回答していただいた。

  • 「限定正社員・嘱託社員」「フルタイム非正社員」「パートタイム非正社員」に担当させている仕事内容の平均レベルはほとんど重ならず、レベルが高い順に「限定正社員・嘱託社員」→「フルタイム非正社員」→「パートタイム非正社員」となる

各社員タイプに担当させている仕事内容レベルの平均
図4

3. 社員タイプ別・仕事内容レベル別基本給水準(給与カーブ)

  • 基本給水準について、係長相当以下の仕事内容レベルでは、同じレベルの仕事内容を担当する場合、「無限定正社員」と「限定正社員」「フルタイム非正社員」「嘱託社員」の間で、特に大きな差は生じていない。課長相当以上では、「無限定正社員」は他の社員タイプと比較して基本給水準が高い。
  • 「パートタイム非正社員」の基本給水準は、すべての仕事内容レベルで「無限定正社員」を下回る。
  • 「嘱託社員」の課長相当以上の基本給水準は、仕事内容レベルに関わらず、ほぼ一定である。

図5

  • *アンケートでは「無限定正社員の大卒初任の基本給水準を100%とした場合の、社員タイプ別・仕事内容レベル別の基本給水準」を回答していただいた。分析方法の詳細は調査レポートに掲載。

【考察】

多様な人材の活用に向け、企業は新しい社員タイプの枠組みを整理

  • 在籍者がいる社員タイプの組合せパターンとして最も多いのは、従来の“典型的”なパターンである「無限定正社員-フルタイム非正社員-パートタイム非正社員-嘱託社員」で約4割を占める。ここに「限定正社員」を加えたパターンが2番目に多く約2割である。
  • 企業は多様な人材を活用するにあたり、働き方の違い(労働時間、勤務地、仕事内容)に応じた社員タイプの枠組みを整理しつつあると推察される。

担当させる仕事内容レベルに“分業関係”の考え方を採用

  • 「限定正社員」と「嘱託社員」に担当させている仕事内容の平均レベルはほぼ同等であるが、これらと「フルタイム非正社員」、「パートタイム非正社員」のそれぞれに担当させている仕事内容の平均レベルはほとんど重ならない。レベルが高い順に「限定正社員・嘱託社員」→「フルタイム非正社員」→「パートタイム非正社員」となる。
  • 例えば、課長相当レベルを担当させている企業の比率は、「限定正社員」では17%、「嘱託社員」では25%であるのに対し、「フルタイム非正社員」「パートタイム非正社員」ではともに5%を下回る。
  • 企業は担当させる仕事内容レベルについて、社員タイプ間、具体的には「限定正社員・嘱託社員」「フルタイム非正社員」「パートタイム非正社員」の間で、一定程度の“分業関係”の考え方を採り入れているものと考えられる。

係長相当以下の仕事内容レベルでは、「無限定正社員」と「限定正社員」「フルタイム非正社員」「嘱託社員」の基本給水準に特に大きな差はなし

  • 各社員タイプの基本給水準(給与カーブ)は、係長相当以下では、仕事内容レベルが同じであれば、「無限定正社員」と「限定正社員」「フルタイム非正社員」「嘱託社員」の間で特に大きな差は生じていない。課長相当以上では、「無限定正社員」は他の社員タイプと比較して基本給水準が高い。
  • 「パートタイム非正社員」の基本給水準は、すべての仕事内容レベルで「無限定正社員」を下回っている。本調査では「パートタイム非正社員」の基本給水準は「地域の賃金相場」を重視する傾向を持つ(*)ことも明らかになっており、「パートタイム非正社員」の基本給体系は、他の社員タイプとの関係を考慮していない可能性を指摘できる。加えて、労働時間に制約がある働き方であることから、基本給水準の引き下げを是としている可能性もある。
    • *各社員タイプの基本給決定に当たり重視する要素(3つまで)として「地域の賃金相場」を回答した企業は、「限定正社員」で2.7%、「フルタイム非正社員」で17.0%、「パートタイム非正社員」で24.6%、「嘱託社員」で5.2%
  • 課長相当以上では、「嘱託社員」の基本給水準はほぼ一定であり、「無限定正社員」との差が大きくなる。ここからは、各企業が“在職老齢年金等とのバランスを考慮しながら、嘱託社員の基本給水準の大幅な引き下げを是としている”可能性を指摘できる。定年後再雇用者の賃金については様々な判例も出ており、特に仕事内容レベルが高い嘱託社員の処遇について、再考に値すべき時期であると考えられる。
  • 「限定正社員」と「無限定正社員」の基本給水準の差は他の社員タイプと比較して大きくはない。ここからは「限定正社員」が「正社員」のなかから分離させた社員タイプ(「従来の正社員」を、「無限定正社員」と「限定正社員」に分割した)であることがうかがえる。

手当・福利厚生・教育訓練等の処遇についても公正・公平性を確保した“トータルの制度設計=トータルマネジメント”が求められる

  • 2016年12月に政府が発表した「同一労働同一賃金ガイドライン案」では、基本給・賞与に加えて手当・福利厚生・教育訓練等も、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差解消のターゲットとしている。そして、両者間の待遇に差がある場合、その性質・目的に応じた考慮要素(「(1)職務内容(業務内容、責任の程度)」「(2)職務の内容および配置の変更範囲」「(3)その他の事情」)に基づき合理的な説明を行うよう求めている。
  • 労働力不足の下での離職防止といった観点からも、今後、各企業では「多様な人材」を活用するに当たり、働き方の違い(労働時間、勤務地、仕事内容)に応じた社員タイプの枠組みを改めて整理・明確化し、その上で「多様な人材」間で基本給や賞与のみならず、手当・福利厚生・教育訓練等の処遇についても公正・公平性を確保した“トータルの制度設計=トータルマネジメント”に取り組む必要があるのではないか(*)
    • *今回調査では、「基本給水準」「基本給水準に賞与支給状況を加味した年収ベースの分析」のみに着目している。

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【研究会参加メンバー一覧】
座長 今野 浩一郎(学習院大学名誉教授)
委員 上野 隆幸(松本大学総合経営学部総合経営学科教授)
西岡 由美(立正大学経営学部准教授)
川口 広(株式会社大丸松坂屋百貨店本社業務本部業務推進部部長)
小西 敦美(日本クッカリー株式会社人事労政部部長)
橋本 大樹(株式会社日立製作所トータルリワード部企画員)
松本 憲太郎(株式会社クレディセゾン戦略人事部長)

みずほ情報総研の「働き方改革」に関する取り組み

少子高齢化が進む日本において、組織が持続的に成長していくためには「人材」が鍵を握ります。みずほ情報総研では、年齢や性別等に関わらず、また各人が持つ多様な事情を踏まえながら、誰しもが活躍し続けることができる職場づくりに向け、国や自治体の政策立案等に資する調査研究や、労働雇用政策実行支援・政策普及および実行に向けた実証事業等の展開、企業・機関等の働き方改革推進、人づくり推進に向けた調査研究・支援等を行っています。

お問い合わせ

報道関係者からのお問い合わせ

みずほ情報総研
広報室 井川 公規
電話:03-5281-7548
E-mail:info@mizuho-ir.co.jp

本研究会に関するお問い合わせ

みずほ情報総研
社会政策コンサルティング部
小曽根 由実
電話:03-5281-5276

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