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経営管理の鍵を握る原価情報とその活用

2011年9月13日 法人ソリューション第3部 渡邉 賢二

環境変化が想像以上の速さで進む中、東日本大震災や予想もしていなかった長引く円高により、製造業は従来から検討してきた事業継続計画やサプライチェーンの見直しといった課題の優先度が高くなり、その対応が急務となっている。また、サプライチェーンの見直しにより、部品・材料などの調達先変更や、それに伴う調達・物流コストの試算、製造リードタイム(特に調達リードタイム)への影響と品質面の担保などに配慮する必要がある。

収益の維持・向上のために、製造業に求められることは、適正な意思決定と計画に基づいた業務遂行および改善活動である。ここで重要なことは、精度の高い予測と日々の業務のモニタリング、およびリスク管理である。これらを実現するための成功の鍵として原価情報の把握とその活用をとりあげる。

適切な原価情報が正しい意思決定につながる

原価情報は、現在から将来の予定まで、企業価値を生む活動にひもづく評価指標であり、様々な状況における意思決定の重要な判断材料として、経理・財務部門だけではなく経営から現場までそれぞれの視点で活用されている。

原価情報は、実態に近い原価であるほど情報の精度が高く、真実に近いと言えるが、原価を積み上げる過程の情報収集に手間がかかり現場負担が増えることから、かならずしも最適な手法とは限らない。たとえばボトルネック工程の設備や人に着目しその改善が工場全体のスループットの向上に期待できる場合、その工程の原価情報を正確にトレースし、その改善により利益の向上を図るといった原価計算方法が効果を上げるケースがある。

また新規の受注品や新製品の企画、工場移転や改善効果予測といった将来予測について、実態を想定したシミュレーションにより原価情報を得ることで、利益計算やリスク回避を想定した実効性の高い判断材料とすることが可能となる。

正しい意思決定を行うためには、実態に合った正しい原価情報を把握する必要がある。そのために、現状抱える課題や今後の方針を踏まえ、原価情報を何に活用するのかを明確にしたうえであるべき原価情報を選定し、またそれは事業計画の変更や環境変化にあわせ適宜見直す必要があるだろう。

製造現場と経営をつなぐ原価情報

経営管理情報として保管される原価情報と製造現場で管理する生産・原価情 報が乖離しているケースはないだろうか。たとえば経理担当が原価情報から 詳細情報を確認したい場合に、製造現場に電話で状況を確認するケースなどである。

原価を構成する情報は、生産情報を元にその活用目的に応じ積み上げて計算するものであるが、現状は情報元である製造現場の生産・原価情報と経営で保管する原価情報が別管理となっており、一元管理されていないケースがほとんどである。

あるべき原価情報の体系は、原価計算の情報元であるデータと計算結果が継ぎ目のないように情報連携し、1つの情報体系の下に一元管理された構成となるべきである。この体系が確立できれば、原価情報は製造現場と経営をつなぐ共通の会話の材料となるだろう。

原価情報の価値を引き出す原価管理

情報は、把握するだけではなく活用してこそ価値が創出されるものであるから、原価情報を把握しただけでは意味がなく、うまく活用できてこそ価値ある情報となり正しい意思決定につながるのである。このための仕組みが原価管理であろう。

さて、そもそも管理とは規定からはずれないように計画を達成することであることから、原価管理とは計画された目標原価を達成するための日々の原価低減のための業務改善活動がその本質である。原価管理が保持する機能は、様々な原価計算をはじめ、原価差異分析や原価シミュレーションが、原価低減のためのPDCAの業務改善活動の場で、標準・実績・実際原価計算や予実の把握、効果予測などに活用されている。なお改善活動は、原価という絶対的な基準を用いて、部分最適化ではなく全体最適化の視点で行うことが重要である。たとえば、ボトルネック工程の製造サイクルタイム短縮化のための施策と、歩留まりを1%改善する場合の施策の効果を定量的に比較する場合、全体最適の視点でそれぞれがどの程度の原価低減に寄与するかを試算し、施策適用の判断材料とすることができる。

また、原価情報は、原価低減だけではなく製品別・顧客別などの戦略的な採算管理、直間比率を分析したコストの構造改革、事業継続のための生産移管に伴う生産拠点戦略などの場面で活用される。そのため、原価管理には様々な用途を想定し効果的に利用できる仕組みが必要となる。

価値を生む原価管理システムの導入に向けて

原価管理を実現するためのシステムが原価管理システムである。様々な要求がある原価管理システムは、原価情報の把握とその活用形態が複雑化していることから、要件がまとまらなかったり、導入範囲が不明確であったりする。また、お客さまからは、既存システムの原価計算が聖域化し手がつけられないといったことや、導入のためのプロジェクトチームを組成したが進め方がわからないといった悩みはよく聞く話である。

これらが曖昧なままシステム導入を進めると、導入予算が超過するばかりか目指す内容と構築したシステムにズレが生じ、システム導入後に期待した効果が得られないといった問題が発生するだろう。このような問題を回避しシステム導入効果をきちんと刈り取るために、システム導入前の検討が大変重要な作業となる。

下記に原価管理システム導入までのステップ案をとりあげた。

  1. 検討プロジェクトの発足と適切な体制の整備
  2. 生産・原価管理の現状把握と課題抽出
  3. あるべき原価計算・原価管理方針とルールの策定
  4. 原価情報の活用とその効果の明確化
  5. システム化の実現性の検証
  6. システム化構想の立案
  7. システム化計画策定と最適なシステムの選定

環境変化に応じた原価管理の仕組みの見直し

先日訪問したお客さまから「どの製品が儲かっていて、どの製品が儲かっていないかをすぐにでも精査したい」といった声を聞いた。また最近の新聞記事によれば、多品種少量生産の組立加工製造メーカが、近年の収益状況の悪化を受け、生産中のすべての製品を見直し、儲かっている製品に絞り込んだ生産へシフトするといった記事を目にした。

何が儲かっていて、何が儲かっていないのか、直接コストと間接コストの比率は適切か、設備の購入は妥当であるかなど、日々の業務遂行に加え、事業継続計画策定やサプライチェーンの見直しなど、常に正しい意思決定を行うことは簡単なことではないが、避けては通れないのが実状である。収益を維持・向上していくためには、正しい原価情報を把握し効果的に活用することが必要不可欠である。環境変化が激しい今こそ、現状の原価管理の仕組みを見直してみてはどうだろうか。

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