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患者満足度調査より

アンケートの自由記述を分析する

2015年3月17日 社会政策コンサルティング部 田中 宗明

数は少なくとも重要な「自由記述」

多くの方は、アンケートで「意見や感想などを御自由にお書きください」という質問を見たことがあるだろう。アンケートの質問には、大きく分けて2種類の形式がある。複数の選択肢から当てはまるものを選ぶ「選択肢形式」と、思ったことを自由に記述する「自由記述形式」である。

選択肢形式に比べて、自由記述形式の質問に回答するのは面倒であり、何も書かずに提出する方も多い。しかし、たとえ数が少なくても自由記述は重要である。アンケート実施者が見落としていた視点について述べられていることや、選択肢より具体的な内容が記載されていることがあるからである。

一方で自由記述は、選択肢形式の回答と比較して定量的に分析することが難しい。選択肢形式であれば件数を数え上げ、全ての回答者数に占める割合を計算し、必要に応じて男女別や年齢別など属性によって比較することができる。しかし、自由記述は、アンケート実施者が回答を主観で分類したり、特徴的な回答を取り上げる程度であることが多い。

「類似性」で自由記述を分析

アンケートの自由記述のような文章データを分析するための手法のひとつに、テキストマイニングが挙げられる。テキストマイニングとは、文章データを単語や文節で区切り、単語の出現頻度や「どのような単語が近接して出現するか」などを解析して、有用な情報を取り出す分析方法である。

テキストマイニングツールを用いると、ある文章と別の文章が「どれだけ類似しているか」を計算し、文章の集まりの中から類似した文章を集めていくつかのグループ(クラスター)に分類することができる。この作業をクラスター分類(クラスタリング)という。ただし「どこまで類似している文章を同じグループとするか」「いくつのグループに分けるか」などは、分析者が試行錯誤しながら決定する必要がある。テキストマイニングツールは、あくまで分析者の支援をするツールである。

ここで、実際のアンケート調査をもとに「選択肢形式」「自由記述形式」の分析事例を紹介したい。

当社では、透析施設に通院している患者を対象とし、2004年から2005年(第I期)と、2012年から2014年(第II期)にかけて満足度調査を実施し、延べ21件の施設で延べ2,703名の回答を得た。この調査は書面による無記名式で行い、「選択肢形式」と「自由記述形式」を併用している。

まず、医師・看護師・臨床工学技士・その他のスタッフなど施設のソフト面、更衣室・ロッカーや透析室など施設のハード面について“問題を感じたかどうか”を4段階の選択肢形式でたずねた(図1)ところ、「4. 非常に多くの問題を感じた」または「3. 多くの問題を感じた」を選んだ回答者の割合(問題率)は、ソフト面よりハード面のほうが高かった。


図1「選択肢形式の設問」の例
図1

一方、透析施設に対する意見を自由に記述してもらい、その内容についてクラスター分類を行った結果、ハード面に関する記述を集めたクラスターよりソフト面に関する記述を集めたクラスターのほうが含まれる記述件数が多かった。具体的には、ソフト面に関する問題を記述した回答が全体の39%、ハード面に関する問題を記述した回答が全体の27%、医療機関に対する感謝の記述が14%、特になしという記述が3%、その他の記述が17%であり、ソフト面に対する問題意識の大きさがうかがえた。

すなわち、選択肢形式だけでは、回答者の問題意識を十分に把握できなかった可能性がある。

自由記述が教えてくれた「効果的な質問設定」

自由記述の分析結果から、ハード面に比べてソフト面については選択肢形式の質問によって問題意識を十分に掘り起こせていなかったとの仮説を立て、ソフト面、すなわち医師・看護師・臨床工学技士・その他スタッフに関する自由記述510件について、さらに細かいクラスターに分類した(図2)。すると、「人員不足」について述べた回答のクラスターが、「説明が不足」「態度が悪い」「対応・案内が不十分」「信頼感が持てない」のクラスターを上回っていることが判明した。


図2 ソフト面に関する自由回答のクラスター分類結果
図2

つまり、スタッフに“問題を感じたかどうか”という選択肢形式の質問では質の面しか掘り起こせなかったのに対し、実際の患者はスタッフの量の面に問題を感じていたのである。このように、自由記述から得られた情報は、調査の目的そのものに対する答えのほかに、調査設計を見直し、より効果的な質問を設定するための情報も与えてくれる。

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