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ウェアラブル端末に求められる「カタチ」

2015年8月18日 経営・ITコンサルティング部 武井 康浩

モノの情報を扱うIoT、人の身体・行動情報を扱うウェアラブル端末

近年、様々な産業においてIoT(Internet of Things)の活用に注目が集まっている。IoTは“モノのインターネット”とも呼ばれ、様々なモノをネットに接続し、モノの情報を集め可視化する仕組みである。そのIoTは、新たなサービスを創出するためのキーテクノロジーとして期待されている。

IoTへの期待が高まる中で、モノだけではなく、人の身体や行動に関わる情報を集め、可視化することができるテクノロジーにも熱い視線が注がれている。そのテクノロジーは「ウェアラブル・テクノロジー」と呼ばれている。

本稿では、Wearable Technologies Conference 2015 USA(2015年7月9日~10日に米国San Franciscoで開催、以後、WTCと記載)における有識者や事業家の議論を踏まえつつ、「ウェアラブル端末」の現状と今後について紹介する。

多様な「カタチ」が模索されているウェアラブル端末

ウェアラブル端末は世界的に注目されていることもあり、現在、毎月のように様々なメーカー等が多様な形態の端末を開発・発表している。一昨年、2013年頃の状況と比較すると、端末の種類・数は比べものにならないほど多様化している。

ほんの一例だが、今回のWTCでの議論の中で紹介されたものだけでも、耳に装着し食事中の咀嚼状況を把握できる「Bitbite」、睡眠や運動等をモニタリングする指輪「Oura ring」、頭に装着して脳の活動状況等を可視化する「Muse」など、その形態はイヤホン型、指輪型、ヘッドセッド型と様々である。さらに、人へのフィードバックという観点では、背中に貼付することで人の姿勢の矯正に役立つ「UpRight」、ストレスレベルを検知して適切なアドバイスを提供するリストバンド「Wellbe」、低周波を通電する電気療法技術を利用した慢性痛を和らげる絆創膏型端末「CUR」など、行動を把握するだけではなく、より適切な行動を促すための端末も見ることができた。

また、異なる観点のテクノロジーとして、行動情報や身体情報を集めるだけではなく、人の身体の熱や振動を電気に変換(エネルギーハーベスティング)するウェアラブル・テクノロジーにも注目が集まった。Stretch Sense社の取組、フィンランドVVT技術研究センターの研究などが紹介された。

WTCの会場では、このような新しいウェアラブル端末の特徴を活かしつつ、スポーツ・健康・医療分野、移動分野など多様な分野を想定した議論も行われた。現状は、今後の定番となるウェアラブル端末を生み出すべく、様々なメーカー等が模索している状況とも言えるだろう。

ウェアラブル端末に求められるデザイン性

筆者はウェアラブル端末に求められる重要な要素は、モノを対象としたIoTとの比較により整理できるのではないかと考えている。

あらためてIoTの特徴を整理すると、モノにセンサーと通信機能を搭載し、モノの状況を把握する仕組みと言える。一方、ウェアラブル端末は、IoTのひとつと考えられるが、センサーと通信機能を搭載した端末を人が装着し身体状況を把握するものであり、意志を持つ人が介在することが前提となっている。そのため、ウェアラブル端末では人が「身に付けたい」と思う、「身に付けていることが自然」と感じられるデザイン性が重要な要素となっている。今回のWTCでもデザイン性をメインテーマとしたセッションが実施されるなど、有識者や事業家等参加者間でその重要性や在り方が熱心に議論された。

ここでのデザインとは、端末自体の見栄え、付け心地のことだけではない。前述のWTCのセッションでは、端末を通じて取得するデータ、取得データをきっかけにユーザーにフィードバックされる情報、そして促すべきユーザーの行動等、「端末を活用する仕組み」のデザインが議論の対象となっている。この背景には、ウェアラブル端末は“人の活動をより良いものにする”ための道具であるべきという考えがある。

ウェアラブル端末に求められる将来の姿

現在、国内でも様々なメーカーが多様な端末を開発し、製品の販売を加速している。しかし、その中には、デザインの検討が不十分なまま、単純にセンサーと通信機能を搭載した製品も散見される。今後、このような端末が増えれば、多くのユーザーがウェアラブル端末を“使いにくいもの”や“役立たないもの”と受け取り、背を向けてしまいかねない。

WTCにおける有識者・事業家の議論にもあった通り、ウェアラブル端末自体は、それらのデザインされた仕組みの中のひとつの要素に過ぎない。ウェアラブル端末には、その仕組みの中で、身に付けていることを人が忘れてしまうくらい「自然なカタチ(デザイン)」となることが求められている。

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