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企業、正社員希望者に必要なこと

正社員としての活躍の場を広げるために

2015年10月6日 社会政策コンサルティング部 飯村 春薫

現在の我が国において、パート・アルバイト、契約社員、派遣社員等の非正規雇用労働者の数は、雇用者(役員を除く)の約4割を占めている。そのうちの約2割である331万人は「正規の職員・従業員の仕事がない」ために非正規雇用労働者として働いている者であり、正社員希望者と捉えられるだろう (*1)。このような状況の中で、国は正社員としての就業を促進するために、取り組みを推進しているところである(*2)。しかしながら、前職が非正規雇用労働者のうち正社員として転職した割合は、男性で38.0%、女性で18.0%にとどまっており(*3)、非正規雇用労働者から正社員への転職は必ずしも円滑に行われているとはいえない。

他方、企業の正社員求人数は2009年以降増加の一途をたどっているものの、2014年度の正社員の充足率(*4)は約2割である(*5)。この数値は、企業も正社員活用の意向があるにもかかわらず、両者のマッチングが成立していないことを示唆している。このミスマッチを解消するためにはどのようなことが必要なのだろうか。

従来日本では、フルタイム勤務に対応できる人材が正社員として採用・活用されることが多かった。しかし、生産年齢人口が減少し、人手不足が想定される今後においては、フルタイム勤務に対応できない等の働き方に制約がある人材や、業種の経験がない人材も正社員として活用していくことが必要である。

したがって、企業には、勤務地限定正社員や時間限定正社員等の多様な正社員区分、短時間正社員区分を導入していく必要がある。これら雇用区分の導入が困難な場合でも、「時間外労働削減のための取り組みを行う」「保育園からの急な呼び出しにも対応できるよう、チーム内での体制を整える」等の取り組みも有効である。

さらに、社内の教育体制を整備し、同業種の経験がない人材も、採用後に自社で育成することで、未経験者でも十分に戦力化することができる。ある企業では、採用後3か月は「国家試験等の資格取得」を援助する期間とすることで、業務上必要なスキルを身につけることができているという(*6)。

このように、さまざまな人材を正社員採用のターゲットにしたうえで、企業は求める人材像を具体化する必要がある。実際に、ある企業では、正社員経験や同業種での経験は問わず、「細かい作業が苦手でないこと」「有機溶媒を使用するためアレルギーがないこと」と求人要件を明確化することで、自社に合った人材を確保することができたという(*6)。求める人材像を明確にすることで、その企業に適性のある人材が集まり、採用後も企業に定着する可能性が高くなるのではないだろうか。

一方で、正社員希望者も取り組むべき課題があると考える。それは、求職活動時に職種に対する固定的なイメージを持たないことである。具体的には、 「営業職は大変そうなので事務職しか希望しない」等、職種や業務内容を限定せずに自身の強みや適性を考慮し、より広い視野を持つことで、正社員として採用される可能性が広がる。また、たとえ正社員として活躍できるスキルや潜在能力を有していたとしても、それが企業に伝わらなければ意味がない。これまでにどのような業種、職種で働いてきたのか、という事実のみならず、これまでの就業経験で「何をなし得たのか」「どのような考えのもとに仕事をしてきたのか」「自分の強みは何か」等を振り返り、企業が求める人材像に照らし合わせてアピールすることが求められるのである。

前述のような取り組みを実施し、非正規雇用労働者を正社員として採用している企業を筆者は調査してきた。それらの企業では、就職活動に苦労し、正社員を希望しながらも非正規雇用労働者として勤務していた人材が、正社員としていきいきと仕事に取り組み、企業の戦力となっていた。

もちろん、本コラムで紹介した内容は万能薬ではない。だが、こうした取り組みがより活発になることで企業と正社員希望者とのミスマッチが解消され、今後、正社員希望者が正社員として活躍できる場が広がることを期待したい。


  1. *1総務省「労働力調査(詳細集計)」
  2. *2厚生労働省では2014年8月より「正社員実現加速プロジェクト」を推進し、ハローワークによる正社員就職の実現を図るためにフリーター女性を対象としたキャリア・コンサルティングを実施したり、正社員実現に取り組む事業主への支援として「キャリアアップ助成金」を拡充する等の対策を講じている。
  3. *3総務省「平成24年就業構造基本調査」
  4. *4求人数に対する充足された求人の割合をいい、全国計では「就職件数」を「新規求人数」で除して算出する。
  5. *5厚生労働省「職業安定業務統計」
  6. *6平成26年度 地域中小企業の非正規人材等確保・定着支援事業「中小企業のためのキラリ人材活用・事例集」
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