ページの先頭です

3次元データ利活用の現状と今後の展望

2015年10月27日 情報通信研究部 松崎 和敏

近年、Google Earthなどのアプリケーションにより、3次元データの利活用が身近なものとなってきた。また、放射状に距離を計測できる3D-LIDARセンサやカラー画像と奥行き画像が取得できるRGB-Dカメラなどの入力デバイスの登場、立体形状を製作する3Dプリンタの低価格化、3次元データ処理ライブラリの登場など、3次元データを利活用するための環境も充実してきている。

本コラムでは3次元データの利活用について、大規模と小規模という2つの側面での現状と今後の展望について述べたい。

大規模な3次元データの利活用の現状

従来は、町並みや地形、巨大建造物といった大規模な環境の3次元データを生成する場合、航空機等から撮影した複数の写真をもとにステレオグラムを用いて3次元データを生成する方法が主流であった。この手法により生成される3次元データの精度は、撮影した写真の解像度と被写体のサイズ、カメラの画角などに依存するため、航空機などで遠距離から広範囲を撮影した場合、被写体までの距離に応じて精度が低下するという課題があった。また、この手法を用いるためには、複数の写真内で同一の地点を探し出すという難易度の高い処理が必要となる。同一地点の探索に画像処理を用いると、被写体による探索精度のばらつきがあり3次元データの精度が安定しないため、この処理を人が代替するケースも少なくなかった。

近年、レーザー光を用いた距離計測デバイスであるLIDAR(Laser Imaging Detection and Ranging)センサを直交する2方向に回転させることで放射状に距離を計測する3D- LIDARセンサが実用化され、大規模環境の3次元データ生成に利用されるようになってきた。このセンサは高精度化・小型化・省電力化・低価格化が進んでおり、車両に搭載しての3次元計測が可能となった。これにより、町並みや地形、巨大建造物のより詳細な3次元データの取得が従来に比べ容易になり、データ生成にかかるコストも低下している。

詳細な3次元データは、Google Earthに代表される3次元データ利用アプリケーションや、カーナビゲーションシステムの地図、歴史的町並みや巨大建造物のアーカイブ化などに利用されるようになってきており、身近な存在になりつつある。

小規模な3次元データの利活用の現状

室内などの比較的狭い空間での3次元データの利活用においては、ロボットの自己位置推定や工場での部品認識などの研究開発が行われてきた。研究段階では3次元データの取得方法として主にステレオグラムが用いられてきたが、この手法は前述の課題に加え、画像処理および3次元位置の推定処理に時間がかかるため、リアルタイム性が高い用途への適用が難しく、大学発ベンチャーや大手メーカーなどから、製品化されたものもあったが、多くは研究段階にとどまっており、実用化された例は少なかった。

2010年にMicrosoft社から発表されたKinectを皮切りに、カラー画像と奥行き画像を同時に取得することができるRGB-Dカメラが登場してきた。このRGB-Dカメラは1秒間に15~30回の距離計測が可能な製品が多く、価格も数万円台のものが主流で比較的安価なため、従来よりも手軽に3次元データを取得できるようになってきた。また、出力デバイスである3Dプリンタについても、数十万円程度の比較的安価な製品が登場しており、入出力のためのハードウェアが充実してきた。一方ソフトウェア面では、マルチプラットフォームのゲームエンジンであるUnityや3次元点群処理のオープンソースライブラリであるPoint Cloud Libraryが公開され、3次元データの処理や可視化が従来よりも手軽に行えるようになってきた。このように、ハード・ソフト両面の環境は充実してきたが、現状の3次元データの利用用途は、RGB-Dカメラを用いたジェスチャーでのTVゲームやPCの制御、3Dプリンタを用いた部品のプロトタイプ作成などの用途が主流であり、まだまだ限定的なものとなっている。

おわりに

3次元データを取り巻く環境はこの10年で大きく様変わりした。ハードウェア・ソフトウェアが充実してきており、3次元データの計測・利用が徐々に身近なものとなってきた。筆者は今後もこの流れは続くのではないかと考えている。それに伴い、新たな3次元データの利活用方法も考案されるだろう。

例えば、TVゲーム・映画などのエンターテインメント作品や歴史的建造物・美術品などのアーカイブデータが、これまでの3D対応の映像コンテンツのような左右の視差のある2つの映像ではなく高精度な3次元データとして提供され、鑑賞者がHMD(Head Mounted Display)のような装置を使うことで、コンテンツが仮想的に再現された空間の中を、見たい位置および方向から鑑賞できるサービスが身近になる日も遠くないのではないかと、筆者は期待している。

ページの先頭へ