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IoT時代の企業の提供価値

どのような価値を提供していきますか?

2016年4月26日 経営・ITコンサルティング部 築島 豊長

「消費者に対し、便利を提供していく」。タイトルに示す質問に対し、そう答えたのは、ダイムラー社のVice PresidentであるWilko Andreas Stark氏。同氏は、ダイムラー社の戦略、メルセデス・ベンツの商品戦略や計画立案を担当しており、2月末に開催されたMobile World Congress 2016において、自動車の将来を見据え、今後の同社の展開について、そうコメントした。

また同氏は、自動車の将来に影響を与えるものとして、「自動運転技術」などのほかに、「デジタルエコシステム」を挙げている。あまり馴染みのない言葉であるが、「デジタルエコシステム」とは、デジタル技術が関わる分野において、複数の企業が協業や分業を行い、相互作用しながら共存共栄していくビジネス構造を指す。

すでに身近なデジタルエコシステム

アップル社のiPhoneであれば、ディスプレイ、カメラモジュール、チップセットなどの製造、組み立て、販売など、アップル社を中心に多くの企業が協業や分業を行い、製品の製造という一つのエコシステムを構築している。そして、iTunesでは、アップル社以外の企業が提供する楽曲、映画やアプリケーションなども組み合わせて、コンテンツ配信というデジタルエコシステムを構築している。どちらの例も、アップル社がビジネスのハブとなり、消費者とのインタフェースを押さえ、サービス展開していく構造となっている。また、Uber(*1)のようにタクシーを保有せずとも、乗客とドライバーがつながる「場」を提供し、インタフェースを押さえたサービスを展開している例もある。Uberの例は、スマートフォンがセンサーの役割を果たすIoT時代だからこそ実現したビジネスである。

前述のダイムラー社では、Mercedes-Benz Bankなどファイナンスサービスも展開している。今後、自動車販売を含む移動関連サービス以外にも、多角的にサービスを展開し、便利という価値を提供するハブになり、冒頭の「消費者に対し、便利を提供していく」動きを具体化している。こうした動きは、単に、ダイムラー社のサービスを多角化するだけでなく、万や億の単位で個人や企業、そしてモノがつながるIoT時代において、ダイムラー社が自動車というモノを軸に様々な企業がユーザにつながるための場(IoTプラットフォーム)を創出し、自らが自動車を中心としたデジタルエコシステムのハブになろうとする同社の動きと捉えることができる。

日本国内における動き

国内でも「デジタルエコシステム」を意識した展開がすでに出てきている。この4月より、電気の小売業への参入が全面自由化されることになった。これを受け、東京電力は小売り競争に勝ち抜く販売戦略を明らかにすると同時に、「みらい型インフラ企業」への企業ビジョンを発表している。

今後提供する商品・サービスは、これまでの電気に加え、ガス、そしてスマートメーターを活用した様々なお役立ちサービスの3つである(*2)。東京電力は、ガスの供給量ですでにシェア4位に入る規模を誇っており、また、ソフトバンク、TOKAI、CCC、リクルート、USEN、ビックカメラなど様々な分野・業種との連携により、消費者の暮らしを豊かにするプラットフォームを提供していくとしている。このように企業同士が提携することで、例えば、電力と携帯電話のセット割引やポイントプログラムの強化など、競争力の高いサービスを消費者に提供することができる。また今後は、スマートメーターの活用が深化し、顧客管理の高度化も期待される。

今後の展開

今後、IoTの浸透が進むほど、企業のサービス展開にとってデジタルエコシステムは無視できなくなってくる。そうなると、業界の垣根を超えた企業同士の連携が進むだろう。こうした状況の中で、プラットフォームを提供し、つながる「場」を創る側になるのか、それとも「場」の上で連携する側になるのかは大きな違いがある。

タイトルに示す質問に戻るが、今後進むであろうIoT時代に向けて、企業は価値を提供していくために、誰と組むのか、つながる「場」での位置取りを含め、このいずれかを選択する時期に来ているのかもしれない。


  1. *1スマートフォンなどにより取得できる位置情報を活用した配車サービス
  2. *2東京電力エナジーパートナー Webサイト

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