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企業の気候変動戦略の今

「パリ協定」と「SBT」

2016年11月15日 環境エネルギー第2部 氣仙 佳奈

今、世界の気候変動対策は、歴史的な転換点を迎えている。2020年以降の気候変動対策の新たな枠組みである「パリ協定」は、今年11月4日に発効し、更に実効性が強まった。「パリ協定」では「2℃目標(*1)」の達成が国際的な目標として位置づけられており、その達成に向け、各国がそれぞれの温室効果ガス排出削減目標を掲げる構図となっている。

最近、国だけでなく、企業にも「2℃目標」達成に向けた取り組みを促そうとする国際的な動きが登場している。それが「SBT(Science Based Targets、科学的根拠に基づいた排出削減目標(*2))」だ。本コラムでは、注目を集めているこのSBTについて解説したい。

SBTは、「2℃目標」に整合して設定された企業の温室効果ガス排出削減目標のことである。長期的な「2℃目標」達成を可能とする水準での中期目標 (5年~15年先の目標)の設定が基準となっており、SBTイニシアチブ(*3)の審査を経て認定される仕組みだ。

例えば、Coca-Cola Enterprises社は、2020年までに主要事業の温室効果ガス排出量(総量)を50%削減し、飲料に関するバリューチェーンの温室効果ガス排出量を33%削減(ともに2007年基準)することを目標としており、その目標がSBTとして認定されている。

SBTが広く知られるようになった理由の一つに、世界的な企業の環境情報開示プログラムである「CDP」に、SBTに関する設問が追加されたことがある。CDPで高い評価を得る上での条件の一つとなったことで、SBTに関心を持つ企業が一気に増加した。実際にSBT設定をコミットしている企業数は2016年11月7日時点で193社あり、そのうち17社が日本企業となっている。またCDPの2016年質問書への回答では、実に100社以上の日本企業がSBT設定意欲を示している(*4)。

こうした傾向には、多くの企業がSBT設定に意義を見出していることが表れている。自社削減目標が、「2℃目標」に整合したものとお墨付きを得ることで、対外的なアピール効果や、社内説明がしやすくなるといった効果が期待されているようだ。

もちろん、「2℃目標」に整合した目標は削減幅が大きく、達成は容易ではない。SBT自体もまだ発展段階であり、設定マニュアルが完成していないといった状況もある。

しかしながら、「2℃目標」達成に向けた企業の取り組みは、その企業の持続可能性、そして地球全体の持続可能性につながる。各国企業には、将来を見据えた目標設定と、意欲的な取り組みを期待したい。


  1. *1世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保つという目標。
  2. *2気候科学に基づいて設定された「2℃目標」に整合した排出削減目標。
  3. *3国際的なNPO、シンクタンク、環境保全団体などが共同で運営している団体。
  4. *4「CDP 気候変動レポート 2016:日本版」の「Appendix 1:CDP2016気候変動質問書 日本企業一覧」において、「Yes:SBTを設定していると回答」及び「2years:現在設定していないが、2年以内に設定予定と回答」が選択されている企業を集計。
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