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気候資金目標、緑の気候基金(GCF)、トランプ政権

パリ協定を動かすお金の話

2017年1月17日 環境エネルギー第2部 永井 祐介

昨年11月のパリ協定発効により、気候変動対策の国際枠組や国別削減目標が決定した。次は対策の実践や目標引き上げ、そしてそのための途上国への資金動員が重要課題である。一方、今週発足するトランプ政権は「国連の気候変動プログラムへの数十億円の資金拠出の取り消し」を掲げ、ようやく動き出した資金動員のための基金に背を向けている。途上国向け資金動員は今後どうなるのだろうか。本稿では、パリ協定を前に進めるために重要なこの資金動員を巡る動向を紹介したい。

途上国への資金動員については、「2020年までに、先進国全体で『官民合わせて年間1,000億ドル』を途上国の気候変動対策に動員する」という目標が2010年に合意されている。しかし、公的資金の大幅な増額は困難であり、目標達成には公的資金をテコにした民間投資の動員が重要になっている(OECDの最新値によると、2014年時点の公的支援と民間投資の総額は約600億ドルであり、目標達成にはあと6年間でこれを約1.6倍にする必要がある。)。

この資金動員のための核となる機関が2011年に設立された「緑の気候基金(GCF)」である。同基金は、気候変動対策を支援する史上最大規模の国際基金であり、途上国の気候変動政策の策定や事業等を資金面で支援する。同基金は設立から日も浅く課題も多いが、将来大きな役割を担う可能性がある。既に先進国を中心に43カ国から計約100億ドルの資金拠出が約束されており、トランプ政権が方針通りに30億ドルの拠出を取り消した場合でも、残りの資金を元に基金の運営は続けられると想定される(因みに日本の資金拠出額は15億ドルであり、米国が抜けた場合には最大の拠出国となる)。

緑の気候基金は、民間企業にとっても無関係ではない。同基金は、これまで35件の事業へ計約15億ドルの資金支援を決定したが、この中には民間の太陽光発電事業への融資や、再エネファンドへの出資、グリーンボンド(*)への保証、地熱発電への補助金等、ビジネス支援の側面がある事業も含まれている。残念ながら日本企業による事業はまだないが、途上国の市場開拓に向けて同基金を最大限活用することが望まれる。

なお、先述した「2020年までに年間1,000億ドルを動員」という資金目標は、2020年以降も継続され、2025年以降は目標値が引き上げられることが決定している。従って、目標達成に向けた民間資金動員の取り組みは、今後も長期にわたり実施・拡大されることが見込まれる。

今回のトランプ政権誕生のように、各国の気候変動政策は今後も選挙等によって左右され続けるだろう。しかしパリ協定が掲げる、「21世紀後半までに温室効果ガス排出実質ゼロ」に向けた脱炭素、脱化石燃料の大きな流れは変わらず、またそのための民間資金動員の重要性も変わらないのではないだろうか。日本企業もこの機運を捉え、ビジネスに活用していくことが重要ではないか。


  • *グリーンプロジェクトに要する資金を調達するために発行される債券

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