ページの先頭です

マレーシア・イスカンダル開発地域の取り組み

低炭素都市の実現に向けて

2017年1月31日 環境エネルギー第1部 藤原 和也

マレーシア南部に「イスカンダル」という地域がある。マレーシア政府が、国の重点開発対象の一つとしてジョホール州に指定した地域で、2006年から2025年までの間に、人口300万人(2005年時点の倍以上)、累積投資10兆円を目指す一大開発地域である。イスカンダルにおける最重要課題はもちろん開発であるが、その際、持続可能で低炭素な都市を創出することが強く志向されている。同地域を所管するイスカンダル開発庁は、2014年、温室効果ガス削減目標とその実現に向けた対策を取りまとめた「低炭素社会ブループリント2025」を策定した。ブループリントに掲げられた対策群は、実際の制度として具体化されていく予定であるが、中でも急ピッチで検討が進められているのが、低炭素対策の進捗を計測・報告するための仕組みづくりである。

どのような活動であっても、その目標を効率的に達成するためには、PDCAサイクルを活用するのが望ましい。とりわけ、Check(進捗の把握・評価)とAct(進捗に応じた計画の見直し)を行うことが重要であり、ブループリントでもこうした活動の必要性が謳われている。実際、建築物の低炭素化の分野では、世界の大都市で計測・報告制度の導入が進んでいる。たとえば東京都では、大規模事業所に対して排出量取引制度が運用されおり、この中で温室効果ガスの削減目標の設定や算定、報告が求められている。また、中小規模事業所に対してもエネルギー消費量や省エネ実績の報告を求める制度がある。計測・報告制度は、対象とする建築物に低炭素対策を促すだけでなく、建築物のエネルギー消費実態や効果的な対策に関する情報を行政が蓄積できるという利点がある。蓄積された情報は、制度の実効性を高めたり、新たな制度検討を行ったりする際に活用できるのだ。

イスカンダル開発庁でも、こうした利点に着目して、建築物を対象とした制度の検討をスタートさせた。検討にあたって、同庁は東京都の協力を仰ぎ、都の制度の特徴や導入に至った経緯を入念に研究し、上記の利点を発揮できる制度を模索している。検討開始から2年弱ではあるが、制度の枠組みや実施スケジュールが具体化されており、現在はパイロットケースの立ち上げに向けた準備が進められている。つい先日(2017年1月19日)も、ジョホール州政府代表団が来日、制度の実施に向けた計画や導入後を見据えた意見交換が、環境省や東京都となされたところである。

低炭素対策の実施を促す制度が整えられれば、省エネ技術やシステムに対するニーズは拡大する。このことは先進的な省エネ技術・システムを有する日本にとってチャンスといえるだろう。パリ協定が発効したいま、世界の国・都市で低炭素社会に向けた検討が始まっている。今後は、イスカンダルに限らず、世界中でこうした動きが広がっていくことを期待したい。

ページの先頭へ