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施行から約1年を経て

女性活躍推進法の本質を考える

2017年2月21日 経営・ITコンサルティング部 上野 朋美

2016年4月1日に女性活躍推進法(正式名称「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」)が施行され、従業員301人以上の企業は、女性の活躍推進に向けた「行動計画」の策定と公表が義務付けられた(従業員300人以下の事業主については努力義務とされている)。厚生労働省によると、この「一般事業主行動計画届出」は、2016年12月31日現在、15,740社、99.8%とほぼ全ての企業がすでに対応している。そもそも同法は、2015年8月28日に、男女の働き方に差がない職場風土を形成することを目的として制定された。その背景には、我が国の急速な少子高齢化と人口減少による労働力不足、福祉関連費用の深刻化、経済の停滞がある。これらへの対応として女性の活躍が期待されている。

同法の施行により、企業に策定と公表が義務付けられた「行動計画」には、女性活躍に向け、「女性採用率を○%にする」などといった数値目標と、それを達成する計画期間、取り組み内容、実施時期等の記載をすることになっている。行動計画は、自社の女性の活躍に関する状況把握・課題分析を踏まえて策定するのだが、ある企業では、会議の中で女性社員から「数値目標だけでは上層部の考えがわからない」という意見が挙がった。また、男性社員からも、自分が座れると思っていた管理職の席が埋まってしまうことになるのではないかという懸念の声が出ていた。企業が行動計画を作成しても、それが社員に理解されていなくては、効果的に進まない。企業は丁寧に説明し、社員の理解と協力を得ながら計画に取り組んでいくことが重要である。

女性活躍推進法と聞くと、女性の採用率を上げることや、管理職への登用人数を増やすことのイメージが先行すると思われる。これは、政府が人財の活用を重視し、「指導的地位に占める女性の割合を2020年までに30%とする」目標を強調して掲げていることも理由の1つだろう。同法の本質は基本原則にあると考えるのだが、この基本原則はあまり強調されていないように見える。同法の基本原則とは以下の3つである。

  • 女性に対する採用、昇進等の機会の積極的な提供及びその活用と、性別による固定的役割分担等を反映した職場環境が及ぼす影響への配慮が行なわれること
  • 職業生活と家庭生活との両立を図るために必要な環境の整備により、職業生活と家庭生活との円滑かつ継続的な両立を可能にすること
  • 女性の職業生活と家庭生活との両立に関し、本人の意思が尊重されるべきこと

基本原則では、従来からの女性活躍推進の考え方に加え、「性別による固定的役割分担等を反映した職場環境が及ぼす影響への配慮」や「本人の意思が尊重されるべき」というあたりが強調されているようにみえる。これは、一見当たり前のことのように感じられるかもしれないが、未だに固定的役割分担が残っていることや本人の意思尊重の考えが浸透しづらいことが背景にある。各企業に数値目標の記載を求めているのは、この基本原則を達成するための過程の1つである。

筆者は、女性活躍推進のコンサルティングを通し、企業のさまざまな課題、取り組みを見てきた。多くの企業では、一見、すでに女性にも男性にも同等の職場環境が与えられているように見える。しかし、これまでの慣行や思い込みなどにより、正式なルールがないにも関わらず、仕事の内容や評価のされ方が性別で異なっている場合がある。たとえば、遠方への出張や夜勤などは男性社員が、宅配便の受け渡しや事務作業は女性が行なっていることが多いといった例が挙げられる。また、育児休暇や育児のための時短勤務は女性が取得していることが多い。これも、子育ては主に女性がするものという意識があるためではないだろうか。最近はイクメンという言葉もよく聞くようになってきたが、男性の育児休職取得率はまだまだ少ない。このように暗黙の了解で、または昔からの名残で固定的役割分担が存在していることが多く、その意味で、男女の働き方や職場環境は、本当に同等であるとは言えない。

これらの問題解決への手段として、社内全体で意識改革の必要性を認識することが重要である。たとえば、管理職を対象に、女性活躍を進める意義を伝え、女性社員にまつわる思い込みをなくすための研修を実施する。その結果、職場環境や雰囲気が変わるためのキーパーソンともいえる管理職の意識が変われば、女性の役割とされていた仕事も男女の区別なく行なうようになり、女性が休暇を取得してもその仕事をやる人がいないということにはならない。また、女性も仕事の内容に関する提案などが言いやすい環境になる。それにより、今まで無理だとの先入観や過去の配置の実績で、女性が配置されてこなかった部門に女性が入り、男性と同じ役割を担うようになれば、それは男女双方の意識を改革することにつながると思われる。さらに、実際に女性活躍が進んでいる同業他社の事例を紹介し、それが業績の向上につながっていると理解してもらうことも、意識改革の1つのきっかけになる場合もある。

女性が活躍できる社会を作っていくためには、行動計画で策定した数値目標の達成を目指すだけではなく、本質の基本原則にアプローチしていくことが求められる。仕事と生活の軸足の置き方は人によって異なるが、企業が同法の基本原則を達成することによって、女性にとっても男性にとっても、ライフイベントや自身の状況に応じた多様な働き方が可能になると考えられる。そのように多様な働き方が可能な企業は、若い世代から見ても、「自分らしく働ける企業」として魅力的に映るのではないだろうか。

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