ページの先頭です

サービスデザイン ―お客さま視点でのサービス開発とは―

2017年3月21日 技術企画部 木村 淳

デザイン思考、UXデザイン、デザインアプローチなど、みなさんは最近、ビジネスの現場にも「デザイン」という言葉が溢れていると感じたことはないだろうか?なぜこうまで「デザイン」と皆が声高に言うのか。ここでひとつ思い浮かべてほしい。デザインを必要とするのはどんなものだろう?建築物、洋服、インテリアなどが浮かんできたのであれば筆者の想定通りである。デザインは、形のあるものに施す行為である、というのがおそらく最も一般的な理解なのだと思う。

一方、デザイン(Design)という言葉は、英字辞書を引くと「設計」と訳される。「見栄えを良くする」などが、訳例として並んでいそうである。しかし、設計なのである。何が言いたいかと言うと、その対象が限定されていないということである。つまり、デザインを施す対象は、建築物などの有形物に限らないし、見栄えを重視したいものにも限らない。

最近言われ始めているのは、見栄えをそこまで重視しているのではない製品や、そもそも形のないサービスに対するデザインの重要性だ。例えば、企業向けの業務システムのデザインであったり、ビジネスや人間の行為といった、目に見えない、形のないものを創り上げるときのデザインだ。

なぜ製品やサービスにデザインが必要なのか

自信を持って提供した製品やサービスにも関わらず、顧客の反応が想定と違っていたことはないだろうか。また、企画を練りに練ってついにサービスを開始したのに思ったように売り上げが伸びなかったことはないだろうか。実はこの現象は、昨今どの業種においても見られることで、ヒットが生まれにくい、と表現されることもある。

原因としては、顧客ニーズが多様化・高度化してきたことである、と一般的に言われており、安易に顧客ニーズを平均化・類型化してサービスを創り上げても、顧客には刺さらなくなっている。顧客に刺さるサービスを創り上げるには、従来の表面的なマーケティングや経験、勘だけでなく、新たな工夫、つまりサービスをしっかりとデザインすることが必要な時代となっているのである。

いままでのやり方と何が違うのか

顧客ニーズの多様化・高度化に対応するため、昨今重要視されているのは、「共感」である。顧客を年齢や性別、職業などの表面的な属性のみで捉えていては、良い製品・サービスは決して創り出せない。

顧客の立場になって「自分のことのように感じる」こと、つまり極限まで深く顧客と一体化し、顧客自身も気づいていないインサイト(洞察)を顕在化させることによって、本当の顧客ニーズを見出すことが重要なのだ。

そして、冒頭に触れたデザイン思考、UXデザインといったものこそが、この共感を実現するための手法やツールであり、これらを使用した行為をまとめてサービスデザインという言葉で呼ぶこともある。

サービスデザインの重要性の認知は広がっている

金融業界でもサービスデザインによるアプローチの重要性について説かれている。2016年に日本銀行主催の「ITを活用した金融の高度化の推進に向けたワークショップ」が開かれ、各行が参加したが、その中で重視すべき視点として「顧客ニーズに沿ったサービスの創造」が挙げられている。これまでの収益モデルからの脱却、つまり金融サービスの高度化が叫ばれている中、顧客を中心としたアプローチの重要性が言われている。

また、電子行政の取り組みにおいても、同じ流れになってきている(*)。2017年2月に、「新たな電子行政の方針」を考える、高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部の新戦略推進専門調査会において、今までのコスト第一主義から国民や企業、行政職員といった利用者にとっての価値を最大化する行政サービスへの転換が議論されている。

なお、ここで定義されているサービス利用者は、サービスを受ける国民や事業者のみならず、サービスを提供する国や自治体の行政職員まで及ぶ。利用者にとっての行政サービスの価値を再定義し、サービス全体を再設計することで、新しい行政サービスに生まれ変わるかもしれない。顧客ファーストで再設計した結果、誰しも思ったことがある「印鑑不要の手続き」も実現するかもしれない。

コツは繰り返すこと

デザイン思考やUXデザインといった手法・ツールを活用すれば、比較的簡単に顧客との共感をベースとしたサービスを創り上げることができるのだが、大きな落とし穴があることをここで伝えておきたい。

それは、現在主流となっている手法のほとんどが、仮説を前提としたアプローチであることだ。人の心はそう簡単につまびらかにできるものではない。真のニーズだと思ったものの奥に、さらなる真のニーズが隠れていることもある。つまり、手法を駆使しそこで得た「解」はあくまで仮説であり、検証を行い、再度仮説を立て検証するという、繰り返しの姿勢が重要なのである。

また、外部環境の変化スピードはますます速くなっているため、一旦創り上げたサービスはすぐに劣化し、顧客が抱く期待とのズレが再び発生してしまう可能性がある。つまり、サービスリリース後も継続的に仮説立案、検証・改善を繰り返し、その時々において最適な機能やコンテンツを用意する必要があると筆者は思うのだ。

ページの先頭へ