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データと人工知能が「健康経営」の未来を拓く

2017年4月11日 エンタープライズ第3部 石川 貴隆

医療・健康分野で広がるデータ活用

スーパーマーケットやコンビニエンスストアの経営者がPOSシステムのデータを分析して、商品の販売実績を把握し、商品の仕入れや陳列方法、在庫管理などに反映させているのは、世間一般にもよく知られている。これと同じようなことが、医療や健康に関する分野でも広く行われはじめている。私達が医療機関を受診した時の医療費や疾病のデータ(医療データ)、健康診断を受診した時の検査項目別検査値のデータ(健診データ)が、健康保険組合などに大量に蓄積されており、それを分析・活用しようという取り組みである。

効果的な保健事業を目指すデータヘルス計画

医療や健康に関する分野のデータ分析は、国を挙げて行われている。それがデータヘルス計画だ。2013年に閣議決定された日本再興戦略の中に、2014年度にすべての健康保険組合が、医療・健診データの分析結果を踏まえて加入者の健康保持、増進のための計画を作成し、2015年度からそれに基づいて保健事業を実施することが盛り込まれた。これまで、健康保険組合の多くは保健事業を、しっかりとした裏付けがなく事業対象があいまいな状態で行ってきた。しかし、データ分析による分析結果の裏付けがあれば、加入者の健康状態や健康課題を把握し、それに応じた保健事業を行うことができる。

データ分析に基づいた保健事業の一例として、高血圧や糖尿病などの生活習慣病対策がある。健康保険組合などがデータを分析しない場合、健康に関するリスクの保有状況やリスク保有者を把握できないまま事業を行うことになり、保健事業の効果に疑問符がつくことになるが、医療データや健診データを分析することで、リスク保有者の人数や具体的な個人を把握し、対象範囲を明確にして効果的に保健事業を行うことができるのである。

データヘルスと健康経営

保健事業をより効果的なものにするには、関係者との連携が重要となる。健康保険組合でいえば、事業主との連携が重要であろう。健康保険組合はデータを分析して把握した加入者の健康状態や健康課題を事業主と共有し、健康保険組合と事業主が連携して対策を講じていく。事業主が医療機関の受診や保健指導の利用を保健事業対象者により強く勧めるというのも対策のひとつである。

その他、事業主から、健康保険組合が保有していないデータ、例えば、残業時間や休暇取得状況といった就業情報のデータの提供を受け、医療データや健診データと関連付けたデータ分析を行うことで、健康課題をより明確にすることができる。

企業全体で従業員の健康管理を行い、従業員が健康であれば、業務の生産性の向上など、企業の経営に良い影響を与えることから、従業員の健康管理を戦略的に行う健康経営という取り組みが企業に広まっている。企業にとっては、経営的な効果だけでなく、イメージアップも期待しているようである。

国も健康経営の取り組みを後押ししている。健康経営に積極的に取り組んでいる企業を選定し、選定された企業が社会的に評価される環境を整備した。2015年より、経済産業省と東京証券取引所が共同で、健康経営銘柄として業種ごとに1社ずつ選定しており、2017年2月には、経済産業省が、健康経営優良法人として235社を選定している。当社を含むみずほフィナンシャルグループも、この健康経営優良法人に選定された。

人工知能の利用で、データヘルスは本格化へ

当社では、2014年度の第1期データヘルス計画の計画策定から保健事業の効果測定まで、データ分析を中心に健康保険組合などへの支援業務を行ってきた。2017年度は、第2期データヘルス計画の作成の年に当たるが、引き続き支援業務を行い、データヘルスや健康経営の発展に寄与していきたいと考えている。

データヘルス計画も第2期に入り、健康保険組合などにおいては第1期の計画策定時よりもデータ分析、活用のノウハウ蓄積が進んできた。また、ビッグデータとかかわりの深い人工知能の開発とその利用も進みつつある。医療、健康分野では昨年から人工知能の利用が活発になってきていて、東京大学医科学研究所に導入されているIBMのワトソンが、昨年の夏に、専門医でも難しい白血病のタイプを10分で見抜き、患者の命を救ったというニュースが大きな話題となった。厚生労働省でも今年からビッグデータや人工知能の利用についての検討会を立ち上げている。

まさに「データヘルス」が本格的に行われようとしているのであり、ビッグデータや人工知能が、私達にとって、先進的な医療技術の享受と適切な健康管理に役立つ時代がすぐ近くに来ているのである。

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