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対話型AIが握る顧客接点の未来予想図

2017年4月25日 経営・ITコンサルティング部 紀伊 智顕

ビジネスのデジタル化によるITプラットフォーマーとの競合激化

近年ビジネスの急速なデジタル化により、「あらゆる産業が情報産業とサービス産業に変わっていく。だから、Amazon、Googleもライバル」(*1)、「顧客接点を誰が握るかが勝負。ライバルはメーカーではなくUber、Google」(某日系メーカー)などのコメントを耳にする機会が増えた。これらは、あらゆる業種業態がGoogle、Apple、Facebook、Amazonに代表されるITプラットフォーマーと競合する時代が近づいていることの表れだろう。

対話型AI(チャットボット、音声アシスタント)の普及による顧客接点の変化

現在、スマートフォンで、FacebookやYahoo!、Google、LINEなどのアプリを立ち上げると、各アプリの主な役割(SNSや検索など)のほかに、天気や電車の遅延、渋滞状況、ニュースなど、ユーザの関心が高いカテゴリーの情報を統合して単一プラットフォームで提供する流れが強まりつつある。

さらに、今後は一方向の「お知らせ」でなく、AIとの対話(チャット)形式で検索、買い物、予約などを行えるチャットボットサービスの普及が見込まれている。この傾向が強まれば、用途に応じた専用のアプリを使う機会は減少し、最もよく使うSNSや検索サービスに顧客接点が統合されていく可能性がある。多様な用途に応じてくれる助手の役割は、AIに期待されるところだろう。

また、ビジネス用途とは異なるが、音声アシスタントも身近なものになっており、現在若者の間ではiPhone「Siri」に「ものまねして」と呼びかけて、人気芸人のマネをしてもらうのが流行っているという。筆者も最近Siriに「美味しいランチ」「近くのスタバ」を教えてもらうことが多い。

すでに米国では、話しかけることで買い物したり音楽をかけたり、天気やニュースなどの情報が得られる音声アシスタント「Alexa」をAmazonが提供し話題となっている。このAlexaを利用するデバイスEchoの2016年の販売台数は860万台、2020年には4130万台になると予測されている。Alexaを用いた2016年のベストサービスの中には、米銀キャピタルワンによる「クレジットカードの引き落とし日や金額、今月の利用額を確認できるサービス」が9位にランクインしており、ビジネスでの活用事例も出ている。今後は申込みや紛失時の手続きも音声でできるよう開発を進めているという。その他にも、簡単な質問に答えていくだけで顧客に最適な住宅ローンやクレジットカードを選んでくれるサービスも提供されている。

自動運転の実用化に伴い、車内の顧客接点は対話型AIが主流に

筆者は現在世界各国で急速に開発が進んでいる「自動運転の実用化」が、対話型AI普及の鍵を握ると見ている。自動運転は高級車を除けばロボットタクシーから普及が進むと想定されているが(*2)、車での移動の際は、道中に訪問先の情報収集を行ったり、動画や音楽を楽しむケースが多く、既存の機能だけでも活用シーンが浮かぶ。車内はプライベートな空間のため発話も気軽にできるはずだ。

例えば、旅行中に空港から観光地までロボットタクシーで移動する場合、ユーザの関心領域(名所史跡や食事など)だけではなく、天気や目的地の混雑状況などリアルタイムに収集したシチュエーション情報に合わせたプランをAIがレコメンドするようになるだろう。

対話型AIが握る顧客接点の未来予想図

対話型AIをめぐる企業の動きは活発だ。LINEが得意のアジア言語でのプラットフォーム開発を、GoogleはAmazonのライバルである小売業と組んだECサービスを、サムスンはテレビや冷蔵庫など家電と連携したサービスの提供を発表している。さらに、IBMやマイクロソフトなどBtoBサービスの巨人も対話型AIのエンジンをサービスプロバイダに提供していくと見られる。

現時点では誰が勝者になるかはわからないが、チャットボットや音声アシスタントなど対話型AIによって、先端的なユーザのみならず、スマートフォンを保有する多くのライトユーザまでを取り込んだ者が顧客接点を握ることになるだろう。

  1. *1「情報製造小売業」へ 柳井氏(日本経済新聞、2017年3月17日)
  2. *2日産ゴーン社長「2022~23年には無人運転タクシーが実現」…講演(総合自動車ニュース レスポンス、2017年3月30日)
  3. *32030年の自動車モビリティ調査、都市部では「ロボットタクシー」普及…英ADL(総合自動車ニュース レスポンス、2017年3月30日)
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