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「患者のための薬局ビジョン」に基づく薬局改革

2017年5月2日 社会政策コンサルティング部 西尾 文孝

我々の身近にある薬局では国による改革が進んでいる

薬局(*1)は2015年度末時点で全国に約5万8千件あり(*2)、その数はコンビニエンスストアの店舗数より多く(*3)、地域により店舗数は異なるものの国民にとって身近にある存在と言える。現在、この薬局について、国は改革を進めている。

現在の薬局の改革について述べる前に、厚生労働省が数十年かけて進めてきた「医薬分業」という政策について述べる。医薬分業は、医師と薬剤師がそれぞれの機能を発揮して患者の安全性を確保することや、「薬漬け医療」「薬の過剰投与の防止」などを目的として始められ、医薬分業の進捗度合を示す指標である医薬分業率は年々増加し2015年には70%に達した。

順調に進んできた医薬分業であるが、近年、「門前薬局の乱立」や、病院や診療所で薬をもらう場合と比べ、薬局では高い自己負担額を支払わねばならないことによる「患者負担の増大、負担の増加に見合うサービス向上や分業効果が実感できていない」などといった医薬分業の問題点が指摘されるようになった。

このような指摘を踏まえ、医薬分業が本来目指す、患者・住民が医薬品、薬物療法等に関して安心して相談でき、患者ごとに最適な薬物療法を受けられる、患者本位の「かかりつけ薬剤師・薬局」にシフトさせることを目的として、厚生労働省は2015年10月に「患者のための薬局ビジョン」(以下、「薬局ビジョン」)を策定した。

「薬局ビジョン」とは何か

「薬局ビジョン」は、「かかりつけ薬剤師・薬局機能」と、そこに上乗せされる「健康サポート機能」「高度薬学管理機能」から構成される。本稿では、このうち全ての薬局が2025年までに持つべき機能とされる「かかりつけ薬剤師・薬局機能」について紹介する。

「かかりつけ薬剤師・薬局機能」は、「服薬情報の一元的・継続的把握とそれに基づく薬学的管理・指導」「24時間・在宅対応」「医療機関等との連携」という3つの柱から成る。

まず、「服薬情報の一元的継続的把握とそれに基づく薬学的管理・指導」とは、主治医と連携し、患者へのインタビューやお薬手帳の内容の把握等を通じて、患者がかかっている全ての医療機関や服用薬を一元的・継続的に把握し、薬学的管理・指導を実施することなどである。例えば、患者に複数のお薬手帳が発行されている場合には、お薬手帳の一冊化・集約化を実施することがある。

次に、「24時間・在宅対応」とは、開局時間以外であっても薬の副作用や飲み間違い、服用のタイミング等に関し随時電話相談を実施することや、夜間・休日も在宅患者の症状悪化時などの緊急の場合には調剤を実施すること、地域包括ケアの一環として、残薬管理等のため在宅対応にも積極的に関与することなどである。

最後に、「医療機関等との連携」とは、医師の処方内容をチェックし、必要に応じ処方医に対して疑義照会や処方提案を実施することや、調剤後も患者の状態を把握し、処方医へのフィードバックや残薬管理・服薬指導を行うことであり、また、医薬品等の相談や健康相談に対応し、医療機関に受診勧奨する他、地域の関係機関と連携することなどである。

また、これら「かかりつけ薬剤師・薬局機能」等に関する薬局の取組状況をPDCAサイクルで評価し、その評価結果を診療報酬改定や制度の見直し等の際に活用することとされ、その評価指標としてKPI(Key Performance Indicator)を設定することとされた。

この「薬局ビジョン」の実現のために、2016年度に厚生労働省委託事業(当社受託)として日本薬剤師会等の団体、有識者により構成された「患者のための薬局ビジョン実現のためのアクションプラン検討委員会」が設置され、薬剤師・薬局に関する調査、検討事業を行い、2017年3月に報告書(*4)がとりまとめられた。

また、今後、厚生労働省は、薬局機能情報提供制度の項目の拡充や、薬剤師・薬局の実態に係る調査の実施、KPIの設定・把握等を通じ、かかりつけ薬剤師・薬局の取組を評価することとしている。

まとめ

「薬局ビジョン」そのものには薬局への強制力はなく、国全体で理想的な薬局像を共有するために定めたものと言える。しかしながら2016年診療報酬改定では、この「薬局ビジョン」の主旨に沿い、患者が選択した「かかりつけ薬剤師」が服薬指導等の業務を行った場合に得られる報酬である「かかりつけ薬剤師指導料」の新設や、薬局の運営体制や処方箋の受付状況などに応じて加算される報酬である「基準調剤加算」の施設基準の厳格化など、かかりつけ薬剤師・薬局を推進する方向での改定がなされ、国による改革推進の強い意思が示された。

今後も「薬局ビジョン」の主旨に沿う形で改革が進むものと考えられる。薬局や薬局関係団体は「薬局ビジョン」が示された今、他機関とも連携しつつ自発的に改革し、その職能を最大限発揮することが求められており、そのためには、住民や医療機関に「薬のプロフェッショナルである薬剤師の仕事」について理解を深めてもらうことが必要となる。また、自治体は「薬局ビジョン」を認識し、また地域包括ケアシステムを構築する中で薬剤師・薬局を最大限活用するための位置付けを検討することが求められる。

結果として、患者のメリットが最大化されることが「薬局ビジョン」の最終目標であり、関係主体による様々な取り組みを通じてこの目標が達成されることを期待したい。

  1. *1本稿では、医療機関が発行する処方箋に基づき薬を調剤する機能を持った薬局を指す。
  2. *22015年度衛生行政報告例(厚生労働省)
  3. *32015年度「JFAフランチャイズチェーン統計調査」報告(一般社団法人日本フランチャイズチェーン協会)
  4. *4「患者のための薬局ビジョン」実現のためのアクションプラン検討委員会報告書(みずほ情報総研)
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