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アフリカの気候変動適応ビジネス

2017年5月9日 環境エネルギー第1部 西郡 智子

気候変動は全ての人々に影響を与える地球規模の課題である。ただ、その影響の度合いは地域によって大きく異なっている。中でも、アフリカは最も影響を受ける地域と予測されている。ここでは、その原因と対策について触れてみたい。

アフリカが気候変動の影響を受ける分野として、まず農業がある。アフリカでは7割以上の人々が農業で収入を得ており、そのほとんどが灌漑を行わず降水に依存する天水農業である。そのため、気候変動による降水量の増減が作物収量に直接の影響を与え、その影響は生計、食料安全保障及び栄養状況にも及ぶ。また、気候変動は、アフリカではすでに厳しい状況にある飲料水や農業用水などの水資源の確保をより困難にするとともに、マラリアなど気候影響を受ける病気の地理的分布や発生率も変化させ、低水準の医療サービスと相まって公衆衛生を一段と悪化させる恐れがある。さらに、インフラの未整備がアフリカを気候変動に対しより一層脆弱にしている。例えば、サブサハラアフリカの電化率(IEA,2016年)は平均35%であり、6.3億人が電力へアクセスのない状況にある。このような電化率の低さは、干ばつ時における灌漑システムの活用、早期警報システムの利用や迅速な医療サービスの提供等を困難にしている。

このような気候変動の影響や国際的な流れを踏まえ、アフリカ諸国は、気候変動政策や約束草案(*1)を策定し、各種取り組みを進めている。これらの取り組みを支援するために、世界銀行グループは、2020年までに160億ドルの資金を確保する計画である。アフリカ開発銀行は2020年までに気候関連投資を新規投資総額の4割に引き上げるとしている。さらに、COP21で発足した「アフリカ再生可能エネルギーイニシアティブ」では、2020年までに1000万kW、2030年までに3億kWの再生可能エネルギー(再エネ)開発目標を立て、G7諸国は100億ドルの投資を約束した。気候変動対策に要する資金は莫大であり、これらの資金は十分ではないが、このようなパリ協定に合わせて発表された各種イニシアティブや基金を活用した様々な取り組みが進みつつある。

今後、気候変動対策ニーズがさらに拡大していくアフリカにおいて、日本企業による前述のような気候変動の影響を軽減する適応ビジネスの取り組みはまだ少ない。一方、欧米企業は、こうした国際的な動きや年々増大するアフリカ市場を視野に、緑の気候基金(*2)などの公的スキームも活用しつつ、再エネや農業等の気候変動適応に資するビジネスを展開している。また、日本政府は、2016年のアフリカ開発会議(TICAD VI)にて、人材育成や最新技術を使用したインフラ整備等によりアフリカの気候変動対策を支援するとした。日本企業も、このような国内外の動向も踏まえ、例えば再エネ発電事業など気候変動関連事業を実施する場合は緑の気候基金を、CO2削減にも資する技術の導入を促進する場合はJCM設備補助事業(*3)を利用するなど、公的スキームの活用や官民連携を通じたアフリカにおける適応ビジネスの検討を始めてみてもよいのではないだろうか。

  1. *1約束草案(INDC)
    国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)の下で、各国が自主的に策定した2020年以降の温暖化対策に係る目標のこと。リビアを除くアフリカ諸国はすでに策定しUNFCCCへ提出済み。それぞれの国でパリ協定を締結した後は「自国が決定する貢献(NDC)」となる。
  2. *2緑の気候基金(GCF)
    UNFCCCの下で開発途上国の気候変動の取り組みを支援するために設立された基金。その資金は適応と緩和で折半され、適応資金に関しては、その半分が島嶼国、後発開発途上国及びアフリカ諸国向けに供与されることになっている。
  3. *3JCM設備補助事業
    二国間クレジット(JCM)事業を支援する環境省のスキーム。アフリカの対象国はケニアとエチオピアになる。
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