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企業経営の視点での「産業廃棄物処理業の振興方策に関する提言」の見方

2017年5月30日 環境エネルギー第1部 秋山 浩之

2017年5月19日に、環境省から「産業廃棄物処理業の振興方策に関する提言」(以下、「提言」)が検討会名で公表された(*1)。「提言」は、その名のとおり、産業廃棄物処理業の振興を目的としたものであるが、リスク管理等の経営課題にも密接に関わる内容である。一般社団法人資源循環ネットワーク、公益財団法人産業廃棄物処理事業振興財団とともに、当社がその有識者検討会の事務局を務める中で得た知見を踏まえて、「提言」の主旨、公表の意義と期待を簡潔に述べたい。

提言の主旨

「提言」は、社会経済動向や産業廃棄物処理業の取り組み動向、処理業者による「企業」としての事業戦略、それを支える国、地方公共団体、業界団体等による振興方策から成る。

産業廃棄物処理業は、排出事業者のコンプライアンスやCSRの進化などに伴い、ますます高度なサービスが求められるものの、適正な評価軸の欠如、安直な価格競争などから、「悪貨が良貨を駆逐する業界」に後戻りするリスクを抱えている。これからの処理業者は、こうしたリスクに晒されながら、企業としての「成長」と、人材確保・育成等の「底上げ」に関する事業戦略を実行する必要がある。欧米に比べて主要企業の売上高は桁違いに小さいという日本の産業廃棄物処理業者の現状を踏まえると、成長と底上げとの好循環を実現できる処理業者を育成・拡大することが重要であり、その具体的な方策として、「優良産廃処理業者認定制度の強化と有効活用」や「排出事業者の意識改革」などを進めるべきということが「提言」の主旨である。

公表の意義と期待

振興方策実現の鍵は、廃棄物処理や資源循環、企業の社会的責任の向上という観点も踏まえて、経営リスクを洗い出し、それに応える処理業者やそのサービスの質を、看過せず評価することである。そのためには、月並みではあるが、処理業者と排出事業者の経営部門との間で適正な評価軸を共有するとともに、それに係る情報の透明性向上が求められる。「提言」は、振興方策に係るビジネスチャンスのヒントに加えて、それらの積極的な取り組みを支援するメッセージが含まれた公的資料としてご覧頂きたい。

さらに、より対象の広い循環産業(*2)に視点を移せば、「提言」によりその主要な担い手である産業廃棄物処理業の振興方策の考え方が示されたことになる。我が国の循環産業の発展・成長、並びに「富山物質循環フレームワーク(*3)」の実現に向け、2017年7月に組織改編を予定する環境省のみならず、循環産業のバリューチェーンを担う多様な業種でも具体的な取り組みが進むことを期待する。

  1. *1環境省2017年5月19日報道発表資料
  2. *2 廃棄物処理にとどまらず、廃棄物等を積極的に循環利用する循環型社会づくりに関係する環境産業(「循環型社会形成推進基本計画」(2013年5月)より)。
  3. *3 G7富山環境大臣会合(2016年5月15~16日)のコミュニケ附属書として採択された。持続可能な開発目標(SDGs)及びパリ協定の実施に向けて、国際的に協調して資源効率性や3Rに取り組むという強い意志を示した世界の先進事例ともいうべき国際的枠組み。

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