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FinTechの潮流と銀行システム

2017年6月6日 共通インフラ事業部 川島 修

はじめに

FinTechへの金融機関の関心の高まりを受け、銀行システムを開発する立場で、この潮流をどう捉えていくか、概観的に整理してみたい。

筆者は、1980年代から銀行システムにおける勘定系、情報系、決済系のシステム開発に携わってきたが、昨今のICTの進化を踏まえ、銀行システムに求められるものも大きく変化してきた様に感じている。その背景にはいったい何があるのだろうか。多くの書籍や、インターネット上で公開されている文献もあるが、著者なりに解りやすく解説してみる。

デジタルサービスの胎動とFinTechの潮流

日本の銀行は、60年代に事務処理の効率化を狙いとしシステム化への取り組みを始めた。その後80年代には、第3次オンラインを経て、サービス時間の拡大、多様なサービスチャネルの競争時代に入り、90年代にインターネットバンキングが登場してきた。

しかしながら、銀行のサービスを差別化し、お客さまのニーズに沿ったサービス提供が求められるサービス競争時代に入った現在、従来のシステムに求められるものとは別の価値観が必要になってきたことが、日本の金融機関におけるFinTechへの関心の高まりにつながっているのだと思われる。デジタルなデータを武器とした新しいお客さまサービスの提供が求められる時代、デジタルビジネスの時代が開かれようとしている。では、これを実現していくITと、従来のITとは何が異なるのだろうか。

従来のITは、主として銀行内ユーザーの視点から事務の省力化・合理化、事務の堅確性向上を目的に開発されてきた。これに対し、新しいデジタルビジネスの時代では、お客さまの付加価値向上を目的としたシステム開発へとパラダイムシフトが起きてきたということである。

それでは、「新しいIT」に求められる姿とは何であろうか。

サービス重視のITを考えると、システムの構造を再度見直すことが求められる。従来の銀行業務、事務のシステム化を主眼にしたITから、いわゆる「SOR(Systems of Record)」「SOE(Systems of Engagement)」への構造の変化が求められることになる。銀行業務処理を担う勘定システム(SOR)とそれを活用した新たなサービス(SOE)を分離構築し、新たなサービス展開のスピードアップを図ることが、お客さまニーズに沿ったサービス展開を永続的に提供する大きなカギになる。

さらに、ビッグデータ活用、AI活用が「SOI(Systems of Insight)」として加わり、SOR、SOEの双方から新たな知見や洞察を得るためのシステムに進化していくということであり、これがデジタルサービスへの胎動につながるものである。代表例で言えば、仮想通貨での決済、テレマティクス保険(走行距離や運転行動等の情報を活用した保険サービス)、クラウドレンディング、クラウドファンディング等になる。昨今、IoTの進化によって、デジタルなデータの従来にない活用が進み、ビッグデータ資本主義とも言われる所以でもある。

このような中で、FinTechの潮流をどう捉えるか、一言で言えば、前述のデジタルサービス時代に求められるのは、企業が持つファンクション(銀行では、預金や送金、貸出等の機能)のアンバンドリング(分解)と、リバンドリング(融合)による新たなサービス提供が、常に起こるということであり、この潮流がFinTechそのものということになる。

銀行システムとAPI

銀行システムとデジタルサービス、FinTechとの関係について考えてみよう。銀行システムは銀行の本来業務(預金や送金、貸出等の機能)を担うという役割を普遍的に続ける訳だが、これを活用し新しいサービスを生み出すことが求められる。従来の銀行システム機能を維持し、新しいサービスを展開するためにどのような変化が必要になるのだろうか。

前述のアンバンドリング(分解)とリバンドリング(融合)を柔軟に実現するためのプラットフォームを持つことが重要になる。

アンバンドリング(分解)とリバンドリング(融合)を柔軟に実現するための技術要素にAPIがある。APIはどこに位置するかというと、アンバンドリング(分解)された銀行システムにおけるファンクションを外部に使いやすいインターフェースとして提供し、多くのビジネス参加者が、より多くのアイデアによりこのインターフェースを活用し、リバンドリング(融合)することで新たなサービスを生み出すことを可能とすることが求められることになる。APIはこのためのかけ橋的なものである。銀行システム開発を担う筆者達の役割の多くは、将来的にこのAPIをいかに使いやすいものとし、かつお客さまの個人情報を十分保護可能なセキュアな環境で提供するかに費やされる時代になるかも知れない。

最後に

当社、みずほ情報総研の事業形態は、みずほ銀行のシステム開発に関する事業、一般のお客さまへのITサービスの提供、コンサルティングやシステム開発の事業と並立しており、アンバンドリング(分解)をAPIで担うという側面と、リバンドリング(融合)としてサービスを提供する側面の両面にトライできる大きな可能性を持っているということになる。このようなことに着目しながら、お客さまに必要とされるサービスとは何かを考え、「お客さま第一主義」の実践に取り組んでいきたい。

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