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BPOの反攻

2017年6月20日 ソリューション第2部 小林 和男

かつてBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)がもてはやされた時代、汎用的な業務を大量かつ安定的に処理できるITサービスは、「貴重なストックビジネス」として多くのITベンダーを支えていた。しかし、同種のサービスが溢れるようになり、現代は提供側にとって差別化が難しい時代となっている。今後、BPOビジネスにはどのような変化が求められるのだろうか。

これまでのBPO

1990年代、バブル崩壊により企業が売上獲得からコスト削減にシフトし始めたこと、IT技術が目覚しい進歩を遂げたことを追い風に、BPO市場は急速な拡大を見せた。BPOベンダーは「豊富なノウハウ」「信頼ある事業継続性」を掲げて貪欲に顧客を獲得し、さらに大きなノウハウと信頼を手にしていった。

それから20年。ITのコモディティ化により、従来ベンダーに委託していた業務を内部や安価な外部(小事業者、個人、オフショア等)に委ねる企業が増加したことで、BPO市場は過当競争の時代を迎えている。外部委託可能な業務が一通り出尽くし、企業内に残るのがアウトソースできない「属人化業務」だけとなったことも、BPOベンダーを悩ませているところだ。

ところでこの属人化業務、リスクを指摘され、排除を叫ばれながらも、一向になくならない。そこにはどんな理由があるのだろう。

属人化の功罪

業務の属人化は、企業にとって長年の業務改善により人員削減を実現し、コスト圧縮に成功した結果である反面、人材流出やノウハウ断絶の大きなリスクを抱えた状態でもある。また、社員にとっても、インターネットやSNSの普及で情報の取得が容易になり、経験の長さが何ら優位とならなくなった時代に、自らの存在価値を守る恰好の砦となる。当然、こうした「価値のない属人化」は、何も産み出さない。

一方で近年、ITの革新を背景にビジネスモデルやサービスのライフサイクルが格段に短くなったことで、標準化の効果が見られない業務も存在する。優秀な職人集団による属人化が、そのまま会社の個性となり、ブランド力となるケースもある。こうした「価値ある属人化」については、あえて放置するのも企業の見識だ。高度に標準化、組織化されたビジネスが時流に取り残され、個々が自在に進化し活躍するビジネスに一歩も二歩も遅れをとるシーンを見かけることは、決して少なくない。

ただし、価値ある属人化についても、リスクを常に組織のコントロール下に置くことは必要だ。とりわけ「ノウハウ継承」は必ずついてまわる課題であり、各企業とも対応に苦慮しているところだろう。

BPOの活路

人材には当然限りがあり、企業はできることなら「価値のない属人化」業務を外部委託して、価値ある業務に人材をシフトしたい。属人化業務がBPO市場の狙い目となったのは、ある意味必然といえよう。そして、属人化した業務を詳細に分析し、最適化・標準化したうえで引き受ける、いわゆるコンサルティング型BPOは、このケースの王道だ。しかし、コンサルティングとなると敷居が高く、企業もなかなか踏み切れずにいるのが現状である。

であれば、「あえて属人化のままアウトソースを受け入れる」考え方は成立しないだろうか。企業でブラックボックスだった価値のない属人化を、BPOベンダーが自社のノウハウとして蓄積し、価値あるものへと昇華させる。こんなことは、ただの夢物語だろうか。少なくとも、短期的な視点しか持たないプレーヤーには手出しできない。

ビジネスモデルの短寿命化は、これからさらに加速する。しかし、どんなに変化しようと、ビジネスに不変の要諦は必ず存在し、そこには多くの失敗を糧にした者だけがたどり着くことができる。ビジネスの形が激しく移り変わる時代こそ、業務を委託する側にも受託する側にも、信念を持ったブレない「姿勢」が求められるのではないだろうか。将来を見据えた人材の確保と育成に重きを置き、清濁併せ呑む度量を持つベンダーが、BPO市場の最後の勝者となるはずだ。

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