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米国で学んだUXの本質

2017年7月25日 事業戦略部 山口 伸弘

はじめに―アプリに囲まれた生活

2016年10月から、新規事業創出やスタートアップ企業との連携を目的に、米国サンフランシスコ・ベイエリアに駐在しているが、日々の生活では日本とベイエリアの違いを感じることが多い。その一つがスマホアプリの利用度合いだ。こちらでは、生活の中でさまざまなアプリを通じたサービスを頻繁に使っている。

日本は一人当たりのアプリのインストール数は世界第一位だが、その中での利用本数は米国に劣っているそうだ(*1)。日本のアプリは、スタンドアロンのものも多いように感じるが、こちらでは、アプリがユーザーとサービスをつなぐ入り口となり、生活に深く入り込んでいる。ここが大きな違いだ。

日々の交通手段としては、ライドシェアリングサービスのUberやLyftが使われる。UberやLyftはタクシーの代替手段で一般の人が空き時間に自分の車を運転しサービス提供する。利用者は、今いる場所と、行き先をアプリで選択するだけで、支払いも自動で処理される。タクシーよりも安く、ドライバーと乗客がお互いを評価しあうので、接客も丁寧だ。

ランチはMealPalというサービスで前日に注文して、翌日指定した時間に取りに行くだけ。私が勤務している地域の多くのレストランがMealPalに加盟しており、その中から毎日好きな店を選べる。支払いは毎月固定料金が引き落とされるだけ。1回あたりの料金も格安だ。通常の列に並ぶ必要もない。

クリーニングはLaundry Lockerというサービスを使っている。好きなときにアパートの1階にあるロッカーに入れて、アプリでロッカー番号を通知。出来上がったと案内が来たら好きなときにロッカーから取り出すだけ。ボタンの解れも無料で直してくれる。支払いは自動的に処理される。料金は近所のクリーニング屋とさほど変わらない。

休日に旅行するときはAirbnbを使うが、アプリで簡単に予約、支払いが完結してしまう。Airbnbはホテルの代替手段で、一般の人が空き部屋を提供してくれるサービスだが、ホテルよりも安い値段で休日を楽しめることになる。場所によっては、宿主の手料理を楽しめる。

良いサービスの条件

今ここに示したサービスの共通点は、ユーザーエクスペリエンス(UX)が優れている点だ。ユーザーは一度良いUXのサービスを体験してしまうと、それ以下のサービスには戻れない。サービスレベルが低いことで有名な米国のタクシーに乗って、チップの計算をしたいとは思わない。また、ランチで長い列に並んで高い料金を払いたいとは思わない。クリーニングも近所のクリーニング屋が開いている時間に合わせて預けに行って、クリーニング屋が閉まる前に取りに行かないといけないというプレッシャーを感じたくない。宿主や宿泊客同士とのコミュニケーションの魅力は、高級ホテルでは得がたいものがある。

もちろんプロセスに楽しみがあるものもある。例えば、スーパーでの買い物は自分で楽しみたいと思う。この分野にも面白いサービスがあるが、私にとってはまだ既存の体験を上回るだけのUXとなり得ていないのが現実だ。

UIとUX

一般的にUXとは、「ユーザーがある製品やシステムを使ったときに得られる経験や満足など全体を指す用語」と定義されている(Wikipediaより引用)。Webデザインなどユーザーインターフェース(UI)が、UXの事例として取り上げられることが多いが、それは一部であり、ユーザーが製品やシステム、サービスを使ったときにどのような体験をするかという全体の中で考える必要がある。先ほど挙げた事例の中ではランチサービスのユーザーインターフェース(UI)はまだ発展途上と思われるが、サービス全体の満足度から利用者を伸ばしている。一方、UberのUIはとても優れているが、会社の不祥事で全体の満足度が下がり、競合のLyftにユーザーが流れている。

最後に

製品、システム、サービスをお客さまに提供するに当たっては、それら全体でどのようなUXをユーザーに与えることができるのか、そしてどれだけの満足感を与えることができているのかを考えることが重要だ。また、市場環境が変われば、同じUXを提供しているつもりでも相手が満足してくれないかもしれない。他でより良いUXのサービスが出れば、ユーザーは簡単に離れていくので、繰り返しサービスを見直すことも必要となる。

このように、UXの評価はユーザー起点であるため、ユーザーを軸に入口、出口、プロセスなど多面的に考えなければならない難しいテーマでもある。よく「お客さまの立場で物事を考える必要性」について説かれていることを耳にする。UXを高めるためにどうすればよいかを考えることこそが、お客さまの立場で物事を考えることであり、今後ますます重要性が増してくると言えるのではないだろうか。

  1. *1日本人のアプリ所持数は世界一、1人あたり平均100本以上をインストール─App Annie調査
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