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LNG利用の未来を考える

2020年以降の船舶用燃料

2017年8月1日 環境エネルギー第2部 有泉 利菜

一般的に我が国にとって2020年と言えば東京オリンピックの開催年である。しかし、2020年は船舶業界の企業にとって対応が必要となる環境規制の開始年として知られている。2016年10月にIMO(国際海事機関)が2020年から全海域を対象に船舶のSOx(硫黄酸化物)排出削減規制強化を開始すると発表した(*1)。これをきっかけに燃料として、液化天然ガス(以後LNG)の利用が加速している。ここでは、船舶用燃料としてのLNG利用の今後を考えてみる。

SOxの規制強化は船舶用燃料の硫黄分濃度を現在の3.5%から0.5%に強化する内容である。そのための対応として、2020年以降は主に(1)低硫黄燃料油の利用、(2)スクラバー(排ガス処理装置)の増設、(3)LNG燃料を利用するという3つの選択肢がある。このうち、LNGは他の燃料と比べて、SOx、PM(粒子状物質)、NOx(窒素酸化物)及びCO2の削減効果があり、環境性が優れている燃料である。

現在世界的にはLNG需要の増加は鈍化しており、LNG供給事業者は新たな需要先としてLNG燃料の開拓を促進するため、船舶用LNG燃料の供給(LNGバンカリング)拠点の整備に向けて動いている。欧州では、北西地域を中心にすでに28箇所のLNGバンカリング拠点が稼動しているが、各EU加盟国は2025年までにLNGバンカリング拠点を最低1箇所は整備することがEUの政策で求められており、2025年までには合計139箇所に達すると見込まれている。欧州以外でもすでに米国のメキシコ湾沿いや韓国の仁川、シンガポール等でもLNG燃料の供給が始まっている。また、中国の東部に位置する寧波舟山港(Ningbo-Zhoushan)や我が国の横浜港においてもLNGバンカリング拠点整備の検討が始まっている。一方で、LNG燃料を使用する船舶は2016年12月時点ではまだ新造LNG船の注文は91隻であるが、LNGバンカリング拠点の整備と共に増加傾向をたどることが予想される(*2)。

このように、LNGは船舶燃料として新たな天然ガスの需要の創出に期待されており、これをさらに後押しする温室効果ガス削減戦略が2018年4月に策定する予定がIMOから7月に発表された(*3)。これまで海運業界では港湾やその周辺の都市における大気汚染削減が環境規制の主な目的であったが、今後は前述の発表のように気候変動対策を目的にした規制強化や大気汚染物質排出規制海域の拡大などが進むと予想されるなか、中長期的にはLNGの船舶用燃料の需要はインフラ整備と共に増えていくだろう。

  1. *1IMO「2016年10月28日プレスリリース」
  2. *2SEA/LNG, “Accelerating the adoption of LNG as a marine fuel”
  3. *3IMO「2017年7月11日プレスリリース」
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