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次世代電池に見るEV時代幕開けの予感

英仏が2040年にガソリン車販売を禁止

2017年9月5日 環境エネルギー第2部 佐藤 貴文

2017年7月、フランスとイギリスの両政府は、2040年以降、ガソリン車とディーゼル車の販売を禁止すると発表した。英仏の2015年の乗用車の新車登録数は、合計で約455万台(*1)と日本市場を上回るだけに、今回の決定は欧州の自動車市場に大きな影響を与えるだろう。本稿では、今回の決定の背景と今後主流になることが見込まれるEV(*2)のコア技術である蓄電池の開発動向について紹介したい。

英仏の決定は唐突な印象を与えたが、欧州は地球温暖化防止と都市部の大気汚染緩和の観点から、徐々に厳しい排気ガス基準を採用し、EVへの転換を促してきた背景がある。欧州議会は、すでに2021年以降に販売する乗用車の走行時CO2排出基準(*3)を95gCO2/kmとすることを決定した。この達成のためには現行基準の130gCO2/kmから約3割もの削減が必要で、EVの存在感が一層増してきている。

しかしながら、現在、主要な欧州のメーカーが開発に注力するBEV(*4)がガソリン車・ディーゼル車を代替して普及していくにはいくつかの課題がある。それは、(1)航続距離が短い、(2)充電時間が長い、(3)長期利用により電池が劣化し航続距離が減少するといった点だ。これらEVの短所を解決するため、各メーカーが研究開発にしのぎを削っているのが全固体電池やリチウム-硫黄電池のような次世代蓄電池だ。

全固体電池は、従来型リチウム電池で使用される液体電解質を固体物質で代替した電池である。充放電を繰り返しても劣化がほとんどなく、構造上軽量化が可能であることから次期EV用バッテリーの本命とされている。従来は、固体物質中のリチウムイオン拡散が遅く充放電速度に課題があったが、2011年に発見されたアルジロダイト型硫化物(Li10GeP2S12)を皮切りに、室温で現状の液体電解質を凌駕する性能を示す物質も発見され、EVの充電時間を短縮できる可能性が示唆され注目を集め、サンプル製品を公開する企業が現れるほど実用化に近づいている。

リチウム-硫黄電池は、硫黄を電極に使うことで電極重量あたりの蓄電量を従来の2倍以上に向上させることが可能で、EVの航続距離を飛躍的に向上させうる有望な次世代蓄電池だ。この技術の最大の課題は、正電極に使う硫黄物質が電池内部の電解液に溶出し、1,000回の充放電後には容量が初期の50%程度に劣化する点であったが、全固体化することにより電極の溶出劣化を防ぐ技術が研究されている。全固体電池のブレークスルーを活用することにより前倒しでの実用化に期待したい。

このほかに、リチウム-空気電池やマグネシウム電池など、「次々世代」の電池技術も研究が進められている。ところでEVは、駆動系すべてが電子制御であるため、近年隆盛する自動運転との親和性が高いという長所がある。これらの次世代蓄電池が実用化され、同時に自動運転の開発が進めば、2040年より前にEVが爆発的に普及する可能性もあるのではないか。

英仏がガソリン車の販売を禁止する2040年には、どのような自動車が走っているのだろうか。今週末は、未来の自動車に思いをめぐらせながら初秋のドライブを楽しんでみてはいかがだろうか。

  1. *1THE FRENCH AUTOMOTIVE INDUSTRY ANALYSIS & STATISTICS 2016
    (Comite des Constructeurs Francais d'Automobiles)
    (PDF/7,250KB)
  2. *2広義の電気自動車を意味し、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)や燃料電池自動車(FCEV)も含む
  3. *3欧州で販売される全ての乗用車の平均値が基準を満たすことが求められており、すべての車種が基準値を満たす必要はない。
  4. *4広義のEVのうちバッテリー(Battery)に充電した電力のみで走行する自動車を指す
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