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政策の概要とIT業界に与えるインパクト

都議選後の東京

2017年10月3日 エンタープライズ第5部 森本 茂雄

2016年8月に小池百合子氏が都知事に就任し、1年が経過した。また、先の東京都議会議員選挙(都議選)において「都民ファーストの会」が第1党に躍進したことから、小池都知事が掲げる「都民ファースト」への施策が加速していくことが予測される。

本稿では、新体制となった東京都における政策の概要と、IT業界に与えるインパクトについて考えたい。

東京都の成長戦略(政策の概要)

さて、小池都知事就任後に東京都が策定した「都民ファーストでつくる 『新しい東京』」という実行プランをご覧になったことがあるだろうか。これは、2014年12月に策定された「東京都長期ビジョン」を継承しつつ、日々変化する社会経済情勢を反映させ、2017年度から2020年度までの新たな4カ年の実施計画であり、全体で388頁にも及ぶ東京の未来像が描かれている。

この中で、東京の成長戦略の方向性として、(1)都内GDP120兆円、(2)訪都外国人旅行者数2500万人、(3)都民の生活満足度70%、(4)世界の都市ランキング1位、という4つの挑戦(「Challenge4 東京の挑戦」)を掲げている。さらに、具体的な戦略として、「FIRST」の頭文字から、 (1)金融(Finance)、(2)イノベーション(Innovation)、(3)強みを伸ばす(Rise)、(4)誰もが活躍(Success)、(5)最先端技術 (Technology)の5つの戦略を策定している。「最先端技術」を挙げていることからも、IoTやAIなど先端ITを活用した取り組みや産業創出などの動きが期待できるのではないかと推測される。

成長戦略によってつくられる「3つのシティ」

そして、それらの戦略によってつくられる「新しい東京」の都市イメージの概念として打ち出したのが「3つのシティ」の実現である。都のさまざまな政策は、「3つのシティ」つまり、「セーフ シティ」「ダイバーシティ」「スマート シティ」の実現を目指す道筋として展開され、2017年度予算は、新しい東京の実現に向けた改革を強力に推し進めるための予算と位置づけて編成されている。これら3つの政策をもう少し詳しく見ていこう。

「セーフ シティ」

安全・安心なまちづくりに向け、地震や水害など、災害対応力の強化も注力分野のひとつだ。無電柱化も条例を制定して計画的に推進していく方針であるし、建築物の耐震化や木造住宅密集地域の不燃化・耐震化にも助成や支援が用意されている。橋梁およびトンネルでは最先端技術を活用した点検調査を実施するとともに、予防保全型の管理を行なう。また、多摩地域ではドローンを活用し、土砂災害の発生を想定した実証実験を行なっており、実用化の検討を行なっている。

東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会を迎えることから、テロ・サイバー攻撃などに対するセキュリティ対策が必須であり、ここにもITの先端技術が欠かせない。

「ダイバーシティ」

誰もがいきいきと活躍できる社会の実現に向けて、181億円の予算が計上されている。

東京都庁内でも「働き方改革」が始まった。テレワークの導入やフレックスタイム制の試行も進めており、この7月にテレワーク推進センターも設置された。テレワークの推進にはITの活用が不可欠だ。在宅勤務やモバイルワークの環境で業務を遂行するためには、誰もが容易に利用できるコミュニケーションの手段の確立と、高度なセキュリティ対策を併せ持つ仕組が必要とされる。

「スマート シティ」

スマートシティの実現は、日本の成長を牽引し世界の中で輝き続ける都市を目指すためのものである。

中でも、国際金融・経済都市の実現については、3684億円の予算を計上した。取り組みの一つとして、国家戦略特区制度等を活用し、IoTやAI(人工知能)に関連する外国企業の誘致を加速させる考えだ。2020年度までにIoT分野等の外国企業を40社程度、FinTech等金融系外国企業を40社程度誘致する目標も掲げており、国内IT業界にインパクトを与える可能性がある。

また、成長産業の育成・強化に向けて、中小企業の成長産業分野への参入やイノベーション促進のために、IoTなど先端技術の活用による新製品の開発等への支援を行う。

そのほか、世界に開かれた国際・観光都市の実現や、スマートエネルギー都市の実現に向けた事業など、スマートシティ実現のための事業は多岐にわたる。

以上、ごく一部ではあるが、今後の都政を見ていくうえで参考となるキーワードを紹介した。ドローン、働き方改革、IoT、AI、FinTechなど、随所に旬なキーワードが盛り込まれているが、これらは、本格的な利活用が始まると、現状のビジネスや日常生活を大きく変えるインパクトがある。優秀な海外企業が誘致され、都内の中小企業と連携することにより、IT業界もこれまでの業界地図とは異なった推移を見せるかもしれない。

これからも、ITが生活をより便利に、より豊かになるツールとなるよう、我々もその一端を担っていきたい。

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