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事業戦略に向けた戦略立案について

イノベーションの考え方、スキル

2017年11月14日 事業戦略部 宮田 隆司

筆者がこれまで書いてきたコラムで、「各企業が市場競争をしていく上での戦略には、順序立てた筋書きと圧倒的な差別化が必要だ(*1)」「オープン・イノベーションという名のもとに、従来の企業連携、協業、アライアンスなどを超えて、今までにない価値を生み出す企業間の協業が盛んに始まっている(*2)」と紹介し、約1年前、サンフランシスコに駐在を始めた時には、「グローバルに物を考え、アイデア(思いつきではなく、着想とか見解という意味で)を徹底的に揉み、まずは、やってみるということ。この事こそが、イノベーションに繋がって行くのだ(*3)」ということを実感したところだった。

どっぷりイノベーションの空間に浸る一年が経つが、四則演算で説明できる世界がある。

ベイエリアに行くということ

ベイエリア(サンフランシスコにシリコンバレーを加えた総称)への日本企業の進出は、2000年をピークに一時減少したが、ここ数年増加し、進出している企業の数は、2000年当時を超えている。事業進出や事業投資に加えて、FinTechに代表されるような、既存事業に対抗してテクノロジーを活用したイノベーションを目論む企業も多い。我々も、スタートアップとの協業を目論み、ここサンフランシスコでの活動を開始した。

考え方の原則は、「Think Big, Small Start, Scale Fast」。つまり、大きく考え、小さく始めて、素早く展開するという事である。

まずは、「Think Big」(大きく考える)である。初めからグローバルに物を考え、既存事業を破壊しようということまで考える。また、企業のため、利益を上げるためなどではなく、世の中のためになるのかを徹底的に考えるので、必然的に大きくなる。どちらかと言うと、日本の本社側が、既存事業とカニバリ(カニバリゼーション=共食い)してでも、やり切るのだという姿勢を継続できるかのほうが、重要である。できていない日本企業は多いと、ベイエリアに進出している日本企業の担当者の間で、言われている。

きっかけは危機感であったり、やってやるという情熱であったりと異なっても、何らかの志を持って取り組みを始める時点では、日本企業もベイエリアの人々と大差はないと思う。違ってくるのが進めて行く過程で、ものすごく単純化して考えると、どうも四則演算レベルの違いで、両者の差を説明できそうだ。

四則演算レベルでどう違うのか?

どういう事かと言うと、「Think Big」(大きく考える)の次に「Small Start」(小さく始める)となるのだが、この「小さく」がくせ者だ。スタートアップは、「これで、世の中を変える第一歩を踏み出す」と考えた時に、資金やリソースの制約もあるのだが、実現したい世界から逆引きして、できるだけ小さく、かつ、尖がって、際立ったものにする。尖がり際立たせるので、磨くというよりは、どんどん間引いて行くと考えた方が近い。つまり、引き算だ。

一方、日本企業は、ヒアリングや社内議論などして磨くのであるが、丸く小さくしてしまうように感じられる。尖がり際立ったことは、皆が「わからない」「判断できない」となるので、割り切りながら尖がった部分を削いでしまう。つまり、割り切り=割り算となる。割り切れなければ、余りは丸めてしまう。

この小さくという考え方、小さくするスキルが違うと感じる。スタートアップのFounderは、二人が良いと言われている。業務系とテック系でという面もあるが、孤独に耐えられないとか、間違えを指摘できないなどの理由があるのだろう。でも、二人の想いの間をとるのではなく、二人の尖がったものから始める。日本企業は、関係者が多くなるほど、割り切り、丸める部分も多くなるのだろう。

最後に、「Scale Fast」(素早く展開する)だが、ここでも、どうも違うように感じられる。

ベイエリアでは、まず市場に出すことが優先される。すると、当然ながら、顧客の声が集まる。厳しい声もあるだろう、でもそれが血となり肉となるのだ。また、様々な業種の企業の目にも触れることになる。提携、連携、協力、組み合わせなど形態は異なるが、様々な取り組みの声が、かかるかも知れない。そして、一つ一つ順番に対応することでは駄目なので、一気に、素早く。そのためには、自分でやること、外の力を借りることを見極めたうえで、複数のものを掛け合わせて一つにしていくことになる。つまり、掛け合わせ=掛け算となる。そして、大きくなっても尖がった部分は残り、新たな尖がりも生まれる。

日本企業は、どうだろうか。提携、連携はどうすすめるのか。一企業で垂直統合型のビジネスモデルでやってきた経験が、少なからず大きな影響があるのではないか。「自分たちでできる症候群」という言葉もあるくらいだ。また、小さく丸めてしまったので、そこから質、量、種類、程度などを増していくことになる。つまり、増す=足し算になり、スピード感も生まれない。そして、大きくなっても何となく丸みを帯びている。多くの人に理解を得やすいという反面、同様の事は真似される。

掛け算と足し算では、時間とともに、どんどん差が広がることになる。垂直統合と水平分業を論ずることではなく、ゴールに向かって一気に進めるやり方、スキルとして考えてほしいということだ。

整理すると、ベイエリアでは、引き算と掛け算、日本流は、割り算と足し算に見える。

割り切り方として、引き算で考える。足し算は、シリアルでなくパラレルでやることにより、合わせることも、足し合わせから、掛け合わせへ。考え方というより、スキルとして、行動様式として身につけ、取り組みたいものだ。それとともに、自分でもできているのか自問自答する毎日だ。

  1. *1[コラム]「まさか」と仕組みが競争優位を保つ ―事業変革に向けた戦略立案について―(2014年9月2日)
  2. *2[コラム]「企業競争戦略」様変わり ―事業変革に向けた戦略立案について―(2015年8月25日)
  3. *3[コラム]イノベーションの源泉 ―事業変革に向けた戦略立案について―(2016年11月22日)
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