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“社会生態学者”ドラッカーと、休眠預金活用に関する法律

2017年11月28日 環境エネルギー第1部 木村 元

“社会生態学者”ピーター・F・ドラッカー

経営学者、マネジメントの父として著名なドラッカーであるが、彼自身は、好んで“社会生態学者”と自称していた。ドラッカーの著書『すでに起こった未来』によると、彼の造語である“社会生態学”とは、「人間によってつくられた“人間の環境”を、生き物を“見る”かのごとく、全体から把握しようとする体系」を意味する。

ドラッカーと言うと、「企業」を対象とした経営コンサルタントとしてのイメージが強いが、これは社会生態学者としての、人や組織に対する強い関心の1つの現われに過ぎず、彼はあくまで社会の“全体”を見ていた。たとえば、ドラッカーは、政治学者として、「政府(政治)」に関する研究から、キャリアをはじめている。そして、社会が豊かな“社会生態系”であるための1つの条件、すなわち、市民一人ひとりに「コミュニティ」を提供する存在として彼が重視したのが、企業、政府と並ぶ、第3の組織としての「NPO(非営利組織)」である。

日本社会におけるNPO

ドラッカーが『非営利組織の経営』を著したアメリカ社会と比べると、日本社会におけるNPOの存在感は小さく見えるが、後述のように、NPOの社会的意義に関する機運は確実に高まっている。ちなみに、同書では、本家アメリカよりも活発で重要な役割を果たしている日本のNPOとして「学校のPTA活動」が例示されているほかに、最古のNPOは、「寺」など日本社会にあったとも指摘されている。

ドラッカーは、「企業は人に供給し支払いを得る。政府は人に命じ服従を求める。しかし、NPOは人そのものを変える」と言ったが、NPOの意義の1つは、例えば、貧困世帯の子ども支援やボトムアップ型の地方創生など、企業や政府にとって対応が困難なサービスを提供できることにある。高齢化・寿命の延伸が進み、また、国や地方自治体も財政に不安を抱える中、本家アメリカとは社会的背景が異なることに留意しつつも、日本社会におけるNPOの活性化が望まれる。

NPOと休眠預金活用法

2016年12月に「休眠預金活用法」が成立したことで、NPOによる公益活動の促進に向けた機運が高まっている。この休眠預金活用法の特徴は、毎年700億円程度にものぼる、金融機関で10年以上放置されたお金(休眠預金)を民間公益活動に活用することにある。2019年秋頃からのNPOの公益活動に対する「助成・貸付・出資」の開始に向けて、現在、内閣府に設置された「休眠預金等活用審議会」において、資金活用に関するガバナンスや、成果評価のあり方、(休眠預金に依存し過ぎない)自立したNPOを育成する仕組み等が検討されている。

社会生態学者ドラッカーは、NPOの発展の鍵を「ここでは、自分が何をしているのか分かる。私は貢献している。コミュニティの一員になっている」とのボランティアの声に見ている。休眠預金活用を契機に、このような社会的課題の解決に向けた“自発的(voluntary)”な貢献の場(1つの自己実現の場)、また、市民一人ひとりにコミュニティを提供する存在としてのNPOが我が国でも発展していくことを、期待していきたい。

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