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「もったいない」の経済化を世界へ

食品ロス対策を考える

2017年12月12日 環境エネルギー第2部 加地 靖

わが国では、まだ食べられるのに廃棄されている食べ物、いわゆる「食品ロス」が毎年600万トン以上発生している。内訳をみると、家庭系(食べ残し、過剰除去等)と事業系(規格外品、売れ残り等)がそれぞれ約半分ずつである。家庭系は年々減少傾向にある一方で、事業系は逆に増加傾向にあり、全体ではほとんど減少していない。

国や関係業界も事業系「食品ロス」の削減を最重要課題の一つとして認識し、例えば納品期限(*1)の緩和に向けた取り組みを推進しつつあるものの、現時点ではその効果は限定的であると言わざるを得ない。また、発生してしまった食品廃棄物を堆肥化し、それらをもとに野菜を育てて再び食品に戻すという取り組みもあるが、これは発生してしまったものに新たにエネルギーを加えて半ば強引に「循環」させているとも言えなくはない。私たちは、循環型社会の形成のために本来、最優先に考えるべきことが廃棄物の発生抑制であることを忘れてはならない。

事業系「食品ロス」の発生抑制に向けた興味深い取り組みを最近見かけたので紹介したい。先月、まもなく賞味期限を迎える防災備蓄食品を学校給食に活用する取り組みが、東京都のモデル事業の一環で試行された。試行では、防災備蓄食品をそのまま給食として提供するのではなく、管理栄養士の先生方の指導のもと、それらを材料にバランス良く栄養が摂取できる献立が提供された。例えば、アルファ化米やクラッカーを使用したリゾット、缶入りパンを使用したケーキ等、賞味期限が近い防災備蓄食品を活用したとは思えないほどの美味しい給食が子どもたちに供された。また、食後には、災害発生時や、大きな災害が発生せずに賞味期限切れとなった防災備蓄食料品が廃棄されてしまうケースなどを取り上げ、「食品の大切さ」を考える授業も行われた。

食品廃棄物の堆肥化も、上述の学校給食の事例も、食品廃棄物対策には違いない。前者は主として事業者が主体であり、補助金等を使って政策的に牽引しやすい方法かも知れない。一方、後者は草の根的な取り組みであり、短期間に大きなインパクトを出すことは難しいかも知れない。しかしながら、食品として製造したものをまた別の食品として供するという「もったいない」の経済化を目指す後者の取り組みこそ、日本から世界に向けて発信するのに相応しいものではないだろうか。

日本から世界に発信できる循環型社会の形成に向けて、「もったいない」の経済化を意識した廃棄物の発生抑制に関する様々な好事例が今後生まれることを期待したい。

  1. *1製造日から賞味期限までの3分の1の期間を過ぎた商品は納品を拒否するという食品流通業界の商慣習

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