ページの先頭です

テレワーク等による働き方改革推進の際の注意点

2017年5月17日 経営・ITコンサルティング部 吉川 日出行

現在、日本政府では一億総活躍社会実現に向けたチャレンジとして、多様な働き方を可能とする「働き方改革」を呼びかけている。この呼びかけに応じて多くの企業がさまざまな取り組みを始めているが、その中の一つに「在宅勤務」や「テレワーク」の拡大がある。

国土交通省が2002年から実施しているテレワーク人口実態調査によると、自宅で仕事をしたことがある雇用者は直近では全体の約1割に上る。折しも過重労働による過労死への対策の必要性も叫ばれており、そうした面からも在宅勤務をはじめとするテレワークに期待する声は多い。

しかしながら、こうした制度の導入に二の足を踏む企業が多いのも事実で、実際に在宅勤務制度を導入した企業でも、制度を導入する際には多くの部門長が「賛成だ」「良い制度だ」と賛同したにもかかわらず、いざ自部門が在宅勤務を開始する段になると、とたんに「うちの部門の社員にはムリだ」「当部の業務は特殊なので会社にいないとできない」などと言い出して困った状況になることがあるという。どうやら昔ながらのヒエラルキー型の組織で運営をし、窓際の見通しのよい席から部下を直接眺めながら管理をしていた古いタイプの管理職にとっては、在宅勤務やテレワークといった部下が見えなくなる環境は許容できないようだ。

2017年4月にザイマックス不動産総合研究所(ザイマックス総研)から発表された「働き方改革と多様化するオフィス」という調査レポート(*)でもそういった状況が垣間見られる。この調査では、インターネットパネルを用いて15歳から69歳までの男女約3000人から、テレワークに対するイメージやテレワークを実際に行った際の感想についての回答を得ている。当社もアンケート調査の設計や分析作業などの一部をお手伝いさせていただいた。

この調査の中でテレワークという働き方に対する不安を尋ねたところ、テレワークの未経験者を含む全回答者では「仕事のコミュニケーション量が減る」「ホウレンソウ(報連相)がしづらい」という不安が多く挙がったという。ところが、同調査でテレワーク経験者に対してデメリットについて回答を求めたところ、「コミュニケーション量が減る」「ホウレンソウがしづらい」をデメリットとして挙げた人は少なく、不安として挙げた人の半分以下に留まったそうだ。こうした結果から、一般に言われているほどにはテレワークによるコミュニケーションロスは大きくなく、こうした不安は未経験者の単なる杞憂であるといえそうだ。

一方で、テレワーク経験者からは、「仕事のON/OFFの切り替えがしづらい」「長時間労働になる」という指摘が多く寄せられたという。テレワーク導入に際して、オフィス外の社員が本当に仕事をしているか不安と考える管理者も多く、中には在宅勤務者本人がパソコンの前に座っているかをカメラでチェックするシステムを導入する企業もあるというが、調査結果からは、日本人の特性としては在宅勤務やテレワークで「さぼる」のではなく、むしろ「仕事をし過ぎる」状態になりやすいことが推察される。

ちなみにテレワークの実施効果については、経験者からは「(テレワークだと)集中して仕事ができる」という意見が半数を超え、「仕事の成果が向上する」「いいアイデアが出せる」との回答も3分の1を超えている。会社ではなく自宅など別の環境で行ったほうが質の上がる業務も確かに存在するのだ。

こうした調査結果を踏まえると、在宅勤務やテレワークを用いて働き方改革を実現するのであれば、性悪説から社員を管理するのではなく、性善説に立ち、社員の自律性を尊重しつつ過負荷にならない環境整備を心がけるべきではないだろうか。「仕事のON/OFFの切り替えを意識させる」「労働時間をきちんと管理する」ために、サテライトオフィスやサードプレイスオフィスを用いることも一考すべきだろう。

在宅勤務やテレワークには、導入前の期待や不安と、実際に経験して感じたメリット・デメリットに差があるなど、やってみて初めてわかることも多い。働き方改革を実現したいのであれば、まずは経営者自身が、月に1日でも2日でもよいから、会社に出社せずに仕事を行う姿を率先して見せていくことが、意味のある改革への第一歩となるのではないだろうか。

ページの先頭へ