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スマートフォンのもたらす経済効果は国内主要産業に匹敵

2017年12月1日 経営・ITコンサルティング部 黒川 祥悟

平成29年版 情報通信白書(*1)によると、我が国におけるスマートフォンの個人保有率は、2016年には56.8%にまで達し、2人に1人がスマートフォンを保有する時代となった。スマートフォンが普及するきっかけとなった2008年のiPhoneの日本上陸から10年も経たないうちに、スマートフォンは広く国民生活に浸透し、生活に欠かせないものになりつつある。

このような背景を踏まえて、当社では2016年度に、総務省の受託調査として、スマートフォンが個人消費に及ぼす影響の大きさについて、我が国初となる定量的な推計を実施した(*2)。本稿ではそのポイントを紹介する。

スマートフォンによる個人消費行動の変化

スマートフォンの普及により、個人の消費行動は大きく変化した。スマートフォンは常時手元にあるため、欲しい商品・サービスを思い立ったら、すぐにECサイトから購入することができる。また、スマートフォンは、鉄道の乗車券や電子マネーのような決済手段としても使えるため、支払いも容易になった。さらに、商品・サービスの購入前の情報収集も簡単に行える。SNSを通して、友人や有名人(インフルエンサー)が紹介する魅力的な商品・サービスを探したり、口コミサイトに投稿された第三者の意見を参考にしたりするシーンは、今や日常的なものになりつつある。

このように、スマートフォンが個人消費のスタイルを変える原動力となってきたという点は、多くの人が実感するところとなっている。しかし、この影響の“大きさ”が実際にどのくらいなのかという点について、既存の統計では十分に把握されていなかった。当社が今回実施した調査は、この影響の大きさを“市場規模”として把握するという新しい試みである。

スマートフォンを介した国内個人消費額は6兆円超

今回の調査結果によると、2016年度に、スマートフォンを通したネットショッピングやスマートフォン上での決済により個人が消費した金額は、日本全体で約6.4兆円に達すると推計された。これは、国内の家電量販店(約7兆円)や百貨店(約6兆円)市場と同程度の規模である(*3)。スマートフォンによって生み出される市場は、すでに国内の主要な産業に匹敵する規模になっているのである。年代別に個人消費の金額を見ると、金額の大きい順に、40代(約1.91兆円)、30代(約1.87兆円)、20代(約1.43兆円)となり、幅広い年齢層でスマートフォンが活用されていることがわかる。

スマートフォンを介した国内個人消費額
図1

スマートフォンによる消費促進効果は約15兆円規模

今回の調査では、スマートフォンによる情報収集がきっかけとなって消費に結びついた金額の規模についても推計を行った。この結果、スマートフォンは、約15兆円もの規模の消費に貢献していることがわかった。

さらに、20代女性に限定すると、「SNS・ブログ・個人サイト」を通じた消費が「企業サイト」や「口コミサイト」の消費を上回るという結果も得られた。この結果から、特定の層では、SNS等を介した個人による情報が購買行動に対する影響力を高めつつあり、SNSを通したインフルエンサーマーケティングのような新たなマーケティング手法が効果的であることも把握することができた。

スマートフォンによる情報収集の消費促進効果(経路別)
図2

スマートフォン消費を取り込む新たなビジネスモデル

スマートフォンによる消費市場の規模は、スマートフォン保有率の上昇に伴い、今後もますます拡大していくと予想される。企業には、このような消費者行動の変化を踏まえた新たなビジネス戦略が求められる。以下には、新たなビジネス戦略を考えるうえで今注目されているキーワードを2つ紹介したい。

1つ目は、個人間取引市場の拡大である。個人間の売買を仲介するプラットフォームである「フリマアプリ」のようなサービスでは、スマートフォンに搭載されたカメラから売りたい物品の写真を撮影し、数分のうちに売買を始めることができる。スマートフォンを利用した手軽さが消費者に受け入れられた結果、経済産業省調査(*4)では、2016年のフリマアプリの市場規模は3052億円と推定されており、すでに従来のオークションサイトの市場に匹敵する規模にまで成長を遂げている。個人消費市場を考えるうえで、今後、個人間取引の普及はきわめて重要になると予想される。

2つ目は、「チャットボット」である。チャットボットとは、人工知能等を活用した自動会話サービスのことであり、企業と消費者間の新たなコミュニケーション手段として注目を集めている。たとえば、ライフネット生命保険は、LINEと連携することで、スマートフォンを通して自動応答により保険の見積もり依頼等ができるサービスを提供している。「チャットボット」は、今後さらに広く普及する可能性を秘めている。

ここで紹介した2つのキーワード以外にも、スマートフォンに対応した多様な製品やサービス、技術は次々と生み出されている。スマートフォンの登場によって急速に変化している個人消費のスタイルにあわせて、企業のビジネス戦略も、迅速かつ柔軟に変化させていくことが求められている。

  1. *1平成29年版 情報通信白書
  2. *2「スマートフォン経済の現在と将来に関する調査研究の請負」報告書(総務省、2017年3月)
    (PDF/4,390KB)
  3. *3GfKジャパン プレスリリース「2016年 家電・IT市場動向」(2017.2.21)
    日本百貨店協会「平成28年12月・年間 全国百貨店売上高概況」(2017.1.20)
  4. *4「平成28年度 我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)」報告書(経済産業省、2017年4月)

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