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車体課税のグリーン化の動向と今後の展望

自動車税制を活用して低炭素社会を推進する

2017年3月27日 環境エネルギー第1部 川村 淳貴

車体課税のグリーン化という言葉をご存じだろうか。エコカー減税という言葉には馴染みがある方は多いかもしれない。車体課税のグリーン化とは、税制を通じて環境負荷の小さい車の普及を促すことであり、温室効果ガスを削減する施策の一つとして、重要な役割を担っている。本稿では、日本の車体課税のグリーン化について整理したうえで、今後の一層のグリーン化に向けて、論点となり得るポイントを紹介したい。

車体課税のグリーン化とは

自動車には多くの税金がかかっている。よく知られているのはガソリンや軽油に対するエネルギー税だが、それだけではない。車の購入(取得)や保有にも税金がかかっており、これらを総称して車体課税と呼ぶ。日本には、車の取得時に1度限り課税される自動車取得税と、車の保有に対して毎年課税される自動車税、軽自動車税、自動車重量税の合計4つの車体課税がある。2015年度の車体課税の税収額は約2.5兆円で、日本の税収全体の4%を占めている。自動車重量税以外は地方税だが、自動車重量税も国税として徴収された後に地方に配分されていることから、車体課税の税収は地方自治体の重要な財源となっている。

ところで「車体課税のグリーン化」とは何だろうか。税制のグリーン化とは、税制を環境面から望ましいものにすることである。車体課税でいうと、燃費の良い車の税負担を軽くし、反対に燃費の悪い車の税負担を重くすることで、人々の自動車選択をより環境負荷の少ない方向に誘導する取り組みといえる。CO2や大気汚染物質削減という観点で見ると、燃費やCO2排出量に応じた課税であるほうが望ましいが、日本では重量や排気量に応じた課税になっている。そもそも1971年に導入された自動車重量税の場合、道路の維持・整備費を利用者に負担させる目的があったため、道路損傷に比例する重量に応じた課税は妥当であった訳だが、環境の観点からは必ずしも最適といえない。そこで、2001年から時限的措置ではあるが、自動車メーカー等が達成すべき将来の燃費の目標値(燃費基準値)に基づき、その達成度合いに応じて、車体課税が軽減されるグリーン化制度が導入されているところである。

車体課税のグリーン化に効果はあったのか?

次に、これまでの日本の車体課税のグリーン化の効果を確認してみたい。国土交通省のガソリン乗用車の販売平均燃費の推移(*1)によると、グリーン化が導入されていない1993~2000年度、自動車税にのみグリーン化が導入された2001~2008年度、自動車税以外にもグリーン化が導入された2009~2014年度の燃費の年平均向上率は、それぞれ1.3%、2.4%、6.0%であり、グリーン化の進展に応じて燃費の良い車がより多く選択されている状況が確認できる。さらに最後の5年間(2009~2014年度)では、燃費について2015年度の目標値だけでなく、2020年度の目標値をも上回る大幅な前倒し達成となった。その結果、2014年度のエコカー減税の対象車は販売台数全体の9割弱と高い割合になっている(*2)。

もちろん、新車市場の多くを減税対象車が占める現状は、燃費性能の向上を追求する自動車メーカーの努力の賜物である。しかし、その一方で懸念すべき点もある。トップクラスの燃費性能を持つ車に比べ、相対的に燃費の悪い車も減税対象となってしまい、燃費の良い車へのインセンティブが働きにくくなっている。また、減税対象車の増加は税収の減少につながる。実際、2015年度の車体課税の税収は2008年度の4分の3に減少し、地方の財源を脅かしている。今後のグリーン化の制度設計においては、燃費性能の向上に合わせて減税対象車を適切に絞り込みつつ、税収の維持を両立させる必要があるだろう。

車体課税のさらなるグリーン化に向けて

政府の直近の「平成29年度税制改正」では、2017~2018年度における減税対象車の大幅な絞り込みが定められ、これはグリーン化の観点では望ましい改正であったといえる。しかしながら、この軽減措置は2年間の時限措置である。今後も車体課税のグリーン化の強化を図るのであれば、車体課税を燃費に応じたものとし、それを課税恒久的な措置にするなどの大胆な見直しが必要である。その意味で、消費税10%引き上げ時の自動車取得税廃止と同時に導入される予定である、車の取得時に課される新税は、燃費に応じて税率が決定される仕組みとなっており、恒久的な措置に向けた第一歩として評価できる。ただし、自動車重量税や自動車税などの保有に係る税の見直しについては何ら言及がなく今後の課題といえる。また、軽減措置の基準となる燃費基準値は、すでに2020年度の目標値を上回っていることから、決して厳しい水準といえず、次の燃費基準値では今後の燃費向上に耐え得る高い水準の設定が望まれる。

最後に、今後の参考として、欧州の動向について見ておきたい。欧州では1998年に自主的なCO2排出削減目標値が欧州委員会により設定され、その後、2009年の「CO2排出規則」により、2015年と2021年の排出目標値が世界で最も厳しい水準で設定され、さらに目標達成に応じた優遇措置やペナルティが定められた。これらを機に、欧州各国では車体課税を燃費やCO2排出量に応じて課税する方式に変更し、グリーン化を恒久的な措置にする動きが相次いでいる(*3)。たとえばドイツでは、2009年より、排気量に応じて課税していた保有に係る自動車税を、CO2排出量と排気量それぞれに応じて課税する仕組みに変更している。

本稿では、日本における車体課税のグリーン化の現状と今後の展望について紹介した。販売平均燃費の推移からグリーン化による一定の効果は確認できたものの、保有に係る税に対する燃費に応じた課税の恒久化や、今後の燃費向上に耐え得る燃費基準値の策定など、さらなるグリーン化に向けた検討の余地は残されている。今後の車体課税の見直しに向けた議論では、欧州等の諸外国における車体課税の動向を踏まえ、大胆な見直しを期待したい。

  1. *1国土交通省「ガソリン乗用車の10・15モード燃費平均値の推移」(PDF/94KB)
  2. *2日本自動車工業会「エコカー減税 対象台数(販売)」
  3. *3環境省「諸外国における車体課税のグリーン化の動向」(2016年12月22日)(PDF/1,757KB)
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