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質の高いICTインフラの国際展開に向けて

2018年1月30日 経営・ITコンサルティング部 西脇 雅裕

「インフラ」の重要性

電力・ガス等のエネルギー供給網や、道路・鉄道等の交通網、テレビ・インターネット等の放送・通信網など、いずれのインフラも我々の生活には欠かせない存在である。人々の生活基盤であるインフラは、いかなる時も当たり前のように機能することが求められるとともに、持続的に効果が期待できるような「質の高さ」が必要とされる。

近年、世界的にインターネットやスマートフォンが普及する中、インフラの一領域として情報通信技術(ICT)に注目が集まっている。特に、ICTの利活用を支えるICTインフラは、経済・社会の成長に大きな影響を与える重要なインフラとして認識されつつある。

新興国におけるICTインフラ

近年、世界的にICTインフラの整備が進んでいるものの、新興国では、未だICTインフラが十分に整備されていない国や地域も多い。ICTインフラが十分に整備されていないと、たとえば、大容量の動画など、ICTを活用したサービスを日常的に利用することは難しい。

新興国におけるICTインフラの整備には課題も多い。都市部に集中的にICTインフラを整備するあまり、都市と郊外で情報格差が生じる場合もある。また、ICTインフラを整備したとしても、その品質が十分ではないため、インフラ自体が早期に劣化・故障してしまい、安定的に利用できない場合もある。

質の高いICTインフラを世界に普及させるための我が国の取り組み

ICTインフラの整備にあたって考慮すべき重要な点として、後述する「質の高さ」が挙げられる。特に先進的な産業や社会の基盤となるICTインフラだからこそ、高度な利活用を支えるための質の高さが非常に重要となる。

こうした問題意識等を踏まえ、質の高いICTインフラの整備を国際的に促進するため、総務省は2017年7月、「『質の高いICTインフラ』投資の指針 (*1)」を策定し、公表した。本指針は、2つの章と付録(Appendix)から構成されている。第1章では、ICTインフラの特徴や重要性のほか、ICTインフラの質の高さを図る指標として5つの要素(経済性、社会的包摂性、安全性・強靭性、持続可能性、利便性・快適性)が定義されている。第2章では、質の高いICTインフラの整備を計画し活用するまでの各段階に合わせ、どのように整備を進めていけばよいか示されている。Appendixでは、質の高いICTインフラが調達された事例が掲載されており、各段階において、質の高さを図る5要素がどのように当てはまるか確認できる。

ICTインフラの質の高さに注目している国の例として、フィリピン共和国が挙げられる。2018年1月、野田総務大臣が表敬訪問した同国では、日本方式の地上デジタル放送をすでに採用しており、引き続き我が国と協力して地上デジタル放送分野の整備を進めていくことを確認した(*2)。日本方式の地上デジタル放送では、コンテンツを視聴するだけでなく、データ放送を通じて災害情報等を的確かつ迅速に把握できるという長所がある。我が国と同様に災害が多く発生するフィリピン共和国では、上述の「質の高いICTインフラ」投資の指針で挙げられる「安全性・強靭性」(災害に対する耐久力)や「利便性・快適性」(災害情報の周知)といった、質の高さが評価されているといえる。

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ICTインフラの質の高さを図る5要素
ICTインフラにおける質の要素 説明
A)経済性 ICTインフラに係る長期的な観点からみた経済性の高さ
B)社会的包摂性 地域的・社会的に不利な地域・人々をも含めた(=社会的包摂性の高い)ICTインフラ整備、又はICT利用による社会的包摂性の向上
C)安全性・強靭性 ICTインフラ自体の安全性・強靭性の高さ、又はICT利用による社会インフラの安全性・強靭性の向上
D)持続可能性
  • ICTインフラの整備・運用が地球(・地域)環境に与える負荷軽減、又はICT利用により社会インフラの地球(・地域)環境への負荷軽減による、環境との調和・持続可能性の向上
  • 社会・経済環境の持続可能な発展へのICTインフラの寄与
E)利便性・快適性 ICTインフラ自体の運用や維持管理が容易であること、又はICT利用により社会インフラから提供されるサービスの質が高いこと

出所:総務省「『質の高いICTインフラ』投資の指針」より抜粋

我が国の質の高いICTインフラを国際展開するための課題と方策

質の高いICTインフラに対するニーズが国際的に高まる中、新興国のICTインフラを整備する際に、我が国の民間企業などが開発するICTインフラも活用され得る。しかし、我が国のICTインフラを新興国に展開するにあたっては、いくつかの課題もある。

第1に、我が国の民間企業などによって提供されるICTインフラの質や機能は、世界的に見ても高く評価されている一方、受け入れる側の国において必要とされる品質水準との間に乖離が生じてしまうことがある。

第2に、新興国では、品質水準と価格を総合的に考慮した入札ではなく、価格を重視した方式で入札が行われることが多い。そのため、我が国のICTインフラを調達したいという意向があったとしても価格面で調達が見送られるケースもある。

こうした課題を踏まえると、我が国のICTインフラを国際展開する際は、当該国の実情を勘案することが重要だといえる。たとえば、ICTインフラの機能や地域の範囲を限定して導入する「スモールスタート」を提案し、当該国の要望に沿ったICTインフラを段階的に当該国全体に普及させることも一案である。

また、その他にも、導入時のイニシャルコストだけでなく、維持管理や補修にかかる費用を含めたトータルコストを提示することも効果的である。導入段階で適切なコストを見込み、質の高いICTインフラを導入しておくことが、維持管理や補修の費用も含んだ長期的なトータルコストを抑えるための良策になることも多い。なお、中長期的には、当該国自身がトータルコストを考慮して調達の判断ができるよう、新興国への技術協力も重要となる。

ICTインフラに対するニーズが急速に高まる中、特に質の高いICTインフラの整備・普及は、世界的に重要な課題となっている。我が国のICTインフラが、その「質の高さ」を最大限に発揮し、世界の人々の生活水準の向上、ひいては社会全体の発展にさらに貢献できるよう強く期待したい。

  1. *1質の高いICTインフラ」投資の指針(総務省、2017年7月)
    (PDF/1,084KB)
  2. *2野田総務大臣のフィリピンへの訪問結果(総務省、2018年1月12日)
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