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量子コンピューターでも解けない暗号

2018年2月6日 サイエンスソリューション部 宇野 隼平

現在、ネットショッピングやインターネットバンクなどが日常生活で広く使用されるようになったことで、インターネットを通じて、個人情報や取引情報などの重要な情報が頻繁にやり取りされるようになってきた。通常、インターネット上でやり取りされる重要な情報は、たとえ他人が通信の途中でデータを盗み見たとしても、中身がわからないように暗号化されている。例えば、現在広く普及しているRSA暗号(*1)等の暗号は、既存のコンピューターで解読を行おうと思うと、非常に長い時間(数万年以上)が必要であることが知られており、このため、現在のインターネット上の情報の安全性が保証されている。

ところが、現在使用されている暗号は、ある日突然、意味を成さないものになる可能性がある。その原因となりうるのが量子コンピューターだ。もし、量子コンピューターが実現されれば、その性能の高さから現在広く使われているRSA暗号等の暗号は容易に解読される可能性がある。例えば、現在のRSA暗号で暗号化されている情報ならば、今後、数十年以内に容易に盗み取られるようになると考えられている。しかし、量子コンピューターがもつ高い処理能力は多くの問題を解決するために必要とされており、その発展は進めるべきものだろう。そこで、現在、量子コンピューターでも解読できないような暗号の開発が精力的に行われている。

量子コンピューターに対抗する暗号化方法の一つとして、量子暗号が挙げられる。量子暗号は、量子力学の原理である不確定性関係を利用したもので、盗聴が行われると信号の内容が変わるため本来の送受信者に“盗聴されたこと”がわかることが特徴だ。量子暗号を用いた通信は以下のような手順で行われる。

  • 本来の送受信者はあらかじめ暗号化のカギを“盗聴されていないこと”を確認して授受
  • 伝達したい情報を“盗聴されていないカギ”で暗号化して授受

もしも、“カギ”を盗聴された場合は気づくことができるので、そのカギは使わず“新たなカギ”を授受する。量子暗号は、“解読に時間がかかるから安全である”という考え方と異なり、どんなにコンピューターの性能が向上しても破られることのない暗号だと言われている。

量子暗号は、すでに欧米では、id Quantique社等を始めとしたいくつかのベンチャー企業が商品として精力的に展開している。また、国内においても、三菱電機、NEC、NTT等により研究が進められており、一部は製品として入手可能なものもある。

量子暗号の現状の課題としては、通信できる距離がある。これは、信号の内容を参照すると盗聴と同様に状態が変わってしまうことから、通信を中継して信号を増幅することが難しいためである。この点については、乱れの少ない高山で通信を行ったり、量子コンピューターを中継器として使用するなどのアプローチで解決に向けた研究が進められている。今後、量子コンピューターの発展とともに、安全性確保の必要性から量子暗号の研究も加速されると考えられる。セキュリティ技術に関しては、これまで、攻防が繰り返されてきたわけだが、課題がクリアできれば、最強の盾が手に入るかもしれない。

  1. *1現在、広く利用されている暗号化方式。ショッピングサイトなどに用いられる、SSL、TLSなどの通信にも用いられている。
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