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海外スタートアップも注目し始めた「高齢者のためのテクノロジー」

2018年2月13日 事業戦略部 菊地 徳芳

「平成29年版高齢社会白書」によると、2016年10月時点で、日本における高齢化率(65歳以上の高齢者が総人口に占める割合)はすでに27.3%であり、2036年には33.3%に達すると推計されている。日本で「3人に1人が高齢者」となるその頃には、ヨーロッパ、北部アメリカ、日本、オーストラリアおよびニュージーランドからなる先進地域全体でも、高齢化率は平均で24%を超えてくる見込みだ。

こうしたなか、世界のスタートアップ企業も「高齢者のためのテクノロジー」に注目し始めている。最近、当社が行った海外調査からは、実際に多くの海外スタートアップ企業がこの領域に参入し、新たなテクノロジーの開発やそれを活用したサービスの実現に動き出している実態が見えてきた。今回のコラムでは、そのうち3つのトピックに着目して、先進的で特徴的なスタートアップ企業の取り組みを紹介したい。

身体や行動の変調をそっと検知してくれるテクノロジー

年を重ねれば、身体のいたるところに衰えや変化が生じてくる。本人がそれに気づかない、もしくは気づいても家族に知らせようとはしないまま、症状が悪化したり、事故が起ったりすることもある。カナダのWinterLight Labs社は、AI(人工知能)技術を活用して、その人が発する声と言葉のパターンを素早く数値化し、認知機能障害や精神疾患を検知できるテクノロジーを開発している。また、スウェーデンのAifloo社では、さまざまなセンサーが搭載されたリストバンドからデータを収集して、AI技術でリアルタイムに分析することで、徘徊や転落・転倒、食事や睡眠の習慣の変化等を検知できるという。

どちらのテクノロジーも、あからさまに検査やテストを受けるといったスタイルではなく、高齢者本人に特別、意識させることなく、異常を検知するところにポイントがある。離れて暮らす家族や日々の生活を支援してくれる事業者等がそうした情報を受け取り対応できるようになれば、本人も家族もより安心して暮らすことができるのではないだろうか。

自分の要望や都合にあわせてサポートしてくれるテクノロジー

比較的元気な高齢者であっても、自宅で生活し続けていこうとすれば、他の人の手助けが必要となる場面も増えていく。アメリカでは、2015年に設立されたHonor社が、高齢者とヘルパーをつなぐプラットフォームサービスを展開している。Uber社やLyft社が行っている配車サービスの「高齢者ケアサービス版」のようなイメージだ。本人や家族は、その時に対応してくれるヘルパーをアプリですぐに呼ぶことができたり、ヘルパーを評価したりできるほか、ヘルパー側も高齢者のプロフィールやケア内容を予め把握できるようになっている。アメリカでは、日本のような公的介護保険がないこともあり、比較的元気な高齢者から、日本で言えば要支援程度の高齢者まで、誰もが同じように使えるオンデマンド型の生活支援サービスとなっている。

今後日本でも、介護保険外のサービスや混合介護の利用が進んでいくだろう。さまざまなサービスをさまざまな状況の高齢者に柔軟に提供できるプラットフォーム型のサービスは、そうした日本における高齢者支援サービスの様相を大きく変えるかもしれない。

高齢期の生活も豊かにしてくれるテクノロジー

高齢者が、社会とのつながりを保ちながら、より豊かな生活をおくれるようにするサービスにも、テクノロジーが活用され始めている。

例えば、アメリカでは、Silvernest社が、高齢者と若者の間でのハウスシェアサービスを提供し、世代を超えた交流を促している。高齢者が、自らの好みや関心、住宅環境等を登録すると、自動的に適切なルームメイトが紹介される。ルームメイトの素性チェックも予め行われているほか、同居する際の家賃支払に関するサポートツールも提供される。True Link Financial社のデビットカードサービスでは、高齢者本人や家族が、アプリを用いて、支払費目に応じた支払制限や上限金額の設定等ができる。これがあれば、認知機能等に多少不安を抱える高齢者であっても、他の人に頼りきりにならずに、安心して自分で買い物を楽しめる。さらに、外出が難しくなってしまったのなら、Rendever社のサービスはどうだろうか。バーチャルリアリティ(仮想現実)のテクノロジーを使って、旅行気分が味わえたり、昔住んでいた思い出の場所を訪れてみたり、スポーツ観戦したり、結婚式等に出席したりできる。しかも、複数のヘッドセットの同期をとれるので、複数人で同時に同じ空間を体験できる。

もちろん、それぞれの国や地域における社会保障制度や経済状況、文化や慣習等によって、「高齢者のためのテクノロジー」のあり方には違いも出てくるだろう。しかし、日本における既存のしがらみや高齢者に対する固定概念の延長線上で考えていては登場し得ないテクノロジーやサービスが、今まさに、世界のスタートアップ企業から、生まれ始めている。日本では、「3人に1人が高齢者」となる時代が目前に迫っている。日本の高齢者には、どのようなサービスが必要とされ、どのようなスタイルなら受け入れられるだろうか。私たちも、海外のスタートアップ企業や国内のさまざまな企業と一緒になって、高齢期の生活を一変するようなサービスを創り出し、社会に届けていきたい。

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