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エンドオブライフ・ケアを知っていますか?

2018年7月10日 社会政策コンサルティング部 羽田 圭子

少産多死社会に突入した日本

2016年の日本人の平均寿命は男性80.98歳、女性87.14歳である(*1)。2015年と比較して男性は0.23年、女性は0.15年上回り、長寿化が進んでいる。同じ2016年の死亡数は約131万人、出生数は約98万人で、33万人の死亡数の超過となっている。2000年と比較すると、死亡数は約30%増加、出生数は約20%減少しており、わが国はすでに少産多死社会となっている(*2)。

エンドオブライフ・ケアに関するアンケート調査

エンドオブライフ・ケアとは、人生の最終段階にある人(以下、本人)が、最期までその人らしく生きることができるように支援することであり、年齢や健康状態や診断名は問わない。本人のいろいろなつらさに対してかかわり、おだやかに過ごすことができるように生活の質を高めることを目指すケアをいう。

当社はエンドオブライフ・ケアの現状を把握すべく、この10年間に家族・近親者を看取った経験のある50代・60代の男女1,000人を対象として、2018年1月にインターネット調査を実施した(*3)。以下、結果の一部を紹介する。

両親を看取った人が多い

対象者の51.0%が父親を、44.0%が母親を亡くしている。自身が「最もお世話をした方」は父親が38.5%、母親が35.8%であり、計74.3%が親となっている。

生前に行った支援としては、「病院、施設を訪問して話をする」が64.4%と突出しており、次いで「医師やケアマネジャーとの面談、付き添い」40.0%、「買い物」32.6%などとなっている。

調査した21項目の支援を大別すると、「会話、食事、見守り」「介護・看護」「家事・生活支援・家や設備の管理」「金銭に関すること」など、生活の広範囲にわたって支援を行っていた。

特に、亡くなる2~3カ月前の支援の頻度と量については、「増えた」48.2%、「変わらない」25.9%、「減った」2.8%と、半数近い家族・近親者の負担が増加していた。

死期の予測は難しい

死因は、「がん」31.3%、「高齢による衰弱」23.3%、「肺炎」17.5%、「心疾患(心臓病)」10.2%、「脳血管疾患(脳卒中)」6.8%が上位5位である。また、亡くなる2~3カ月前でも、「本人の死が近いと思っていなかった」とする割合が37.3%と4割近く、家族・近親者でも死期を予測することが難しい様子がうかがえる。

本人が亡くなった場所は、「医療機関」が67.1%と最も多く、「自宅」は18.9%、「施設」12.4%の順である。

死を前にした本人に向き合う家族・近親者も苦しみを抱える

自己の死を意識した本人からスピリチュアル・ペイン(死を前にした時に感じる解決することが困難な苦しみ、*4)を「感じたことがある」人は30.2%であり、本人に接する時「つらいと感じた」人は61.1%にのぼった。

また、本人の人生の最終段階において精神的負担を「感じた」人は46.0%と、半数近くを占めた。がんの治療において「家族は第二の患者」ともいわれるが、家族・近親者の苦しみは、本人の死を前にして大きくなることが調査結果から明らかとなった。

本人、家族・近親者を主役としたチームで援助・支援することが有効

エンドオブライフ・ケアにおいては、回復を目指すことは難しくなり、身体の痛みの緩和、快適に過ごせる環境整備、それまでの生き方や意思を尊重した対人援助などが重要になるといわれる。

人は自分自身を看取ることができない。エンドオブライフ・ケアにおいては、家族・近親者の役割や苦しみも大きくなるため、家族・近親者への援助・支援も重要となる。

とりわけ医療・介護従事者の専門職が果たす役割は大きいと考える。本人、家族・近親者に最期まで寄り添い、向き合い、支えることは医療・介護従事者の本来的業務の一つであるものの、看取りは昼夜を問わず、容態の急変等が起きうることから24時間体制を取り、援助者・支援者がチームを形成して緊密に連携して、状況の変化に迅速、的確に対応できるようにすることが重要である。

エンドオブライフ・ケアに関する知識・経験の習得、組織的な対応、多職種連携等が求められ、負担も大きい業務である。医療・介護従事者へのさらなる教育・研修機会の創出、働きに見合った評価や報酬等も必要だと考えられる。

エンドオブライフ・ケアについて考えてみよう

あなたには頼れる家族・近親者、近隣の人、友人はいるだろうか。エンドオブライフをどこで過ごしたいと思っているだろうか。すでに意思決定をしているだろうか。

「死について語ることはタブー」「考えても先のことはわからない」という声も聞かれる。しかし、統計や数字としてではなく、大切な人や自身の将来を思い浮かべ、考えてみてほしいと思う。誰もが「死すべき定め」にあるのだから。

  1. *12016年簡易生命表(厚生労働省)。平均寿命とは0歳の人の平均余命。
  2. *22016年人口動態調査(厚生労働省)
  3. *3エンドオブライフ・ケアの現状に関する調査研究報告書(みずほ情報総研、2018年3月)
    (PDF/7,900KB)
  4. *4スピリチュアル・ペインは、具体的には以下のような言葉で表現される。「まわりに迷惑ばかりかけて情けない」「トイレの世話になるくらいなら、死んだほうがましだ」「死ぬのがこわい」「今までしていた仕事や家事を続けたい」「家族を残していくのが心配」「さびしい」など。
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