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SDGsを巡る日本の潮流

なぜ今SDGsなのか?日本企業に期待される役割(前編)

2018年8月14日 コンサルティング事業推進部 山本 麻紗子

近年、企業の評価、企業価値の創造という文脈において、CSR、CSV、ESGという視点が注目されてきたが、最近では新たにSDGsというキーワードが話題となっている。SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)とは、2015年9月に国連サミットにおいて採択された国際目標である。2030年までを期限とし、貧困、エネルギー、成長・雇用、気候変動など、持続可能な社会の実現のための17のゴールと169のターゲットから構成される。また、取り組みにあたっては、以下の原則を重視することとしている(*1)。

  • 普遍性:先進国を含め、全ての国が国内と国外の両面で行動する
  • 包摂性:人間の安全保障の理念を反映し「誰一人取り残さない」包摂的な取り組みを行う
  • 参画性:全てのステークホルダー(政府、企業、NGO、有識者等)が役割を持つ
  • 統合性:社会・経済・環境は相互関連性があるため、統合的に取り組む
  • 透明性:モニタリング指標を定め、定期的にフォローアップし、評価・公表する

これまでもさまざまな国際目標が採択されてきたが、なぜ今になってSDGsが企業に注目されているのか。本稿では、日本企業にとってSDGsが経営戦略上、重要な目標となった背景と経緯を前編で紹介し、後編で具体的な日本企業とSDGsの活用例と今後の展望について論じる。

SDGsにおける経済界参入の背景

SDGsは、2015年に期限を迎えた国連の「ミレニアム開発目標(MDGs)」を前身としている。MDGsは開発途上国向けに設定された目標であったため、政府開発援助(ODA)等を通じた対策が多く、ODAの実施主体である外務省以外の政府関係機関や民間企業にとっては国外の政策的課題と認識されており、関心が薄かった。

しかし、SDGsは貧困、飢餓といった開発途上国に寄った課題だけでなく、気候変動、技術革新(イノベーション)、働きがい(成長・雇用)という先進国の課題も内含する広範囲な目標である。また、各国の国内における達成目標を定め、定期的にモニタリングすることが定められ、日本国内の全省庁が実施主体となった。また、2017年の世界経済フォーラム(ダボス会議)において、SDGsの推進により12兆ドルの価値、3億8千万人の雇用が創出されるとの推計が出たことが一つの契機となり、経済界がSDGsにコミットするようになった。各アクターは、SDGsに積極的に取り組むメリット、取り組まないリスクを考慮し、SDGsに協力し、競争する時代へと移りつつある。

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アクター SDGsにコミットする動機
政府 国際社会における主導力の獲得
企業 本業としてSDGsの推進(ビジネスチャンス、企業価値の創造)
投資家 ESG(環境・社会・ガバナンス)投資のリターン
地方自治体 地方の魅力・強みのアピール
市民社会 SDGsを通じて市民の声を発信

民間企業によるSDGsの取り組み

従来、企業の価値を測る尺度として、業績や財務の情報などが主流だったが、企業の持続可能な成長のためには、CSR、CSV、ESGといった非財務情報を企業評価に取り入れようとする動きが急速に拡大している。企業がSDGsに取り組むメリットについては以下のような例が考えられる。

  • 持続可能な開発への新規市場開拓・事業成長の機会創出
    ・SDGsの課題解決につながる製品やサービスの開発
    ・自社の特色を活かしたSDGsソリューションの提供
  • 企業の持続可能性に関わる価値の増強
    ・企業の事業活動に関わるSDGs目標(人権、環境、労働等)への配慮
    ・顧客、従業員、取引先、地域等、さまざまなステークホルダーからの評価

SDGsが採択されて以降、この動きはCSRを超えた企業の本業(価値創造・新事業創出)として、国内外で取り組みが強化されている。SDGs=ビジネス開発目標との見方も広まっている。SDGsの企業活動への取り込みを促す例としては以下のものが挙げられる。

  • 2015年12月、金融安定理事会(FSB)主導の気候関連財務情報開示タスク
    フォース(TCFD)が提言の中で、企業に対して、どのような気候変動リスクがあり、それに対してどんな戦略を持っているかといった情報を開示するよう要求(*2)
  • 2017年11月、経団連が「企業行動憲章」と「実行の手引き」をSDGsの達成を柱として改定(*3)
  • 2017年12月、外務省主催の第1回「ジャパンSDGsアワード」表彰の実施において、SDGs達成に貢献する取り組みを行っている282の企業・団体が応募(*4)

今後の動き

SDGsは企業が果たすべき役割を明確に示しており、欧米の多くの企業は企業目標にSDGsを取り入れている。その動きは、日本においてもメーカーをはじめとする大企業を中心に広がっている。アジア・アフリカなど途上国だけでなく、海外における事業を検討している日本企業にとって、国際的なコンプライアンスに沿った適切な採用、適正なサプライチェーンを通じたオペレーション、持続可能なビジネス環境づくりにどのように取り組むかが大きな課題となっている。特に環境、労働、人権にかかる法制度が形成途上にある国では、開発や投資の段階で現地の法令順守にとどまらず、リスクの把握や対応が益々必要となっていくと思われる。

今後の政府の動きとしては、2018年内に「SDGsアクションプラン2018」に基づき、主要な取り組みを実施しつつ、さらに具体化・拡充し、日本の「SDGsモデル」を構築することが想定されている。2019年には「SDGs実施方針」の第1回目のフォローアップが実施され、日本におけるSDGsの進捗報告がなされる。ここで企業が自社のSDGsへの取り組みをアピールするためには、一刻も早くSDGsに貢献し得る製品やサービスに紐付けた説明や効果を対外的に開示する必要がある。

次稿では、具体的な企業の取り組みや、今後、日本企業がSDGsをどのように企業理念、目標と整合させられるのか、またどのような展開が望ましいかについて論じたい。

  1. *1持続可能な開発目標(SDGs)実施指針
    (PDF/173KB)
  2. *2Recommendations of the Task Force on Climate-related Financial Disclosures(TCFD, December 14, 2016)
    (PDF/2,142KB)
  3. *3企業行動憲章の改定にあたって ―Society 5.0の実現を通じたSDGs(持続可能な開発目標)の達成―(一般社団法人日本経済団体連合会、2017年11月8日)
    http://www.keidanren.or.jp/policy/cgcb/charter2017.html
  4. *4ジャパンSDGsアワード
    https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/award/
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