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予防・健康増進を含めた総合パッケージの展開

日本におけるヘルスケア産業の国際展開施策の特徴

2018年8月21日 社会政策コンサルティング部 片岡 千鶴

全世界的に進む高齢化とヘルスケアの重要性

国連の「世界人口予測・2017年改訂版」によれば、2017年には9億6,200万人 (世界人口の約1%)である60歳以上人口が、2030年には14億人、2050年には21億人に達し、アフリカを除く世界のすべての地域で60歳以上人口が全人口のほぼ4分の1以上を占めることが予測されている。世界的に高齢化が加速していくなかで、ヘルスケアの政策的重要性はますます高まっている。

アジア健康構想に向けた基本方針の改定

先月、2018年7月に日本では「アジア健康構想に向けた基本方針」が改定された(*1)。同方針は、アジアにおいて急速に進む高齢化に対応した健康長寿社会の実現を持続的な経済成長とともに可能とすることを目指して、平成28年7月に健康・医療戦略推進本部で決定されたもので、今回、新たなテーマや課題に対応するために、当初見直しを予定していた5年を待たずに改定となった。

改定のポイントは、テーマを「医療・介護」から「予防・健康増進・生活領域」にまで拡大したことだ。当初は、アジアの高齢化社会に必要な介護産業の振興と人材育成等に軸足が置かれていたが、今後は「医療・介護を中心とした疾病の予防、健康な食事等のヘルスケアサービス、健康な生活のための街づくり等」に領域を拡げていくことになる。

諸外国におけるヘルスケア産業の国際展開支援策

前述の基本方針は、国際的な課題解決への寄与とともに、日本のヘルスケア産業の国際展開の一翼も担っている。世界のヘルスケア産業市場は、高齢化や新興国の経済発展も背景に拡大を続けており、2018年の世界市場規模は2兆ドル近くにのぼるという予測もあり(*2)、各国でも自国産業の国際展開を後押しする施策を打ち出している。

例えば、英国では、2013年に「Healthcare UK」を立ち上げ、国外医療機関と英国内の医療提供者等とのマッチング、国際展開プロジェクトの組成支援、各国政府への働きかけ等を行っている。また、ドイツでは、同じく2013年に立ち上げられた「HEALTH MADE IN GERMANY」において、国際的なネットワーキング活動を中心に、医薬品、医療技術、バイオテクノロジー、デジタルヘルスの国際展開を支援している。最近では、2017年3月にフランスが、先端テクノロジー、バイオテクノロジー、医療インフラ、製薬、医療機器、訓練・研究、医療ツーリズムを対象に、新たな輸出ブランド「フレンチ・ヘルスケア」を発表している。

日本の施策のポイント(独自性)とは

これら英・独・仏の取り組みは、いずれも「医療」が主であり、介護や予防、健康維持・向上等の分野は明確には含まれていない。ましてや、健康に関連した食事や街づくりといった日常生活に近い分野は、全くスコープに入ってはいないだろう。

「アジア健康構想に向けた基本方針」で決定当初から軸としてきた介護の国際展開も、日本の超高齢社会を背景とした特徴的な施策であった。今回の改定で打ち出された、予防・健康増進やその延長にある日常生活まで包含した総合的パッケージとする考え方は、日本の独自性をさらに発展させた注目すべき点といえる。

自治体における取り組み例― 神奈川県の取り組み ―

このように、特に医療や介護を必要としない心身状態も含めてヘルスケア産業の対象とする日本の国際展開施策は、自治体レベルでも進められている。

平成29年2月に改定された内閣の「健康・医療戦略」にも事例として取り上げられた神奈川県では、健康と病気の間の連続的な心身状態の変化として独自に定義した「未病」関連産業から、再生医療製品開発を含む最先端医療関連産業まで、ライフサイエンス分野において幅広く施策を展開している。同県では、各国政府機関・大学等との協力に係る覚書締結など、国際連携を推進し、県内研究機関・企業の国際展開支援に取り組んでおり、当社も事務局として施策の運営支援を行っている(*3)。

今後、日本の独自性を強みとして、健康増進等の非医療・介護分野や未病のような考え方を含めたヘルスケア産業の国際展開がより進展することを期待している。

  1. *1「アジア基本構想に向けた基本方針」
    (平成28年7月29日健康・医療戦略推進本部決定、平成30年7月25日改定)
  2. *2Frost & Sullivan 2018年1月18日プレスリリース
    https://ww2.frost.com/news/press-releases/frost-sullivans-2018-predictions-global-healthcare-market-will-skyrocket-nearly-2-trillion-2018/
  3. *3当社は、ヘルスケア・ニューフロンティア推進本部室より国際展開支援に関する事務局業務を受託しており、各種セミナーや企業ミッションの企画・運営、各種情報提供を行っている。
    http://www.pref.kanagawa.jp/cnt/f531396/p1148889.html

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